本文
17世紀はじめにサツマイモの栽培が普及した外海地区では、生活のために山頂まで土地を切り開いて畑にしていました。そのときに出てきた結晶片岩や玄武岩を使って、畑や住居の石垣、住居の境界を示す石塀、住居や納屋の石壁などを築き上げました。このようにして、独自の「石積集落景観」が形成されました。
外海の石積みには、結晶片岩に赤土とわらを混ぜた接着剤を使う外海地区の伝統的な石壁「ネリベイ」のほか、赤土と石灰を混ぜた接着剤を使うド・ロ神父考案の「ド・ロ壁」があります。また、積み方にも特徴があり、結晶片岩の平らな形状を生かして、それらを水平に積む「布積み」という技法があります。ほかにも、石垣の一番下の部分に大きな石を縦向きに置く立石積みなど、いろんな技法を使い分けながら石積みが各地で作られました。このように、たくさんの工夫が詰まった石積みがこの地の歴史と知恵を今に伝えています。こうした石積みが形成する景観の歴史的価値が認められ、平成24年には出津・牧野地区が、平成30年には赤首・大野地区が国の重要文化的景観に選定されました。
しかし、人口減少と高齢化により、石積みの維持・管理をする技術者不足が深刻な課題となっています。そこで、この技術を次の世代へ受け継ぐために「石積みワークショップ」を開催しました。地元の技術者の指導のもと、今回は「布積み」による修復を体験。参加者は石積みの工夫に驚きながら、美しく石積みを再生しました。今後は地元の皆さんを中心に、この独特な文化的景観を次世代へつなぐ取り組みを継続していきます。
世界遺産室 学芸員 森杉