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長崎市
企画政策部 広報広聴課
ご担当者様
拝啓 貴職におかれましては、日頃より地域行政の発展と市民福祉の向上にご尽力いただき、深く感謝申し上げます。
本提案は、長崎市における通信基盤および生活インフラに関する整備方針について、将来的な都市機能の強化と人口減少への対応という観点からお伝えするものです。
現代社会において通信インフラと商業基盤は、教育・医療・産業・防災・生活利便性といった多様な分野の根幹を担う社会基盤であり、その高度化と多様化は地域の持続的な成長に直結します。長崎市においても、将来にわたって持続可能な都市の基盤を築くために、ICTと生活環境の整備を戦略的に進めていただきたく、以下に提案内容を記載いたします。
【1. 通信インフラの中核拠点としての整備】
長崎市は地震リスクが相対的に低く、また海底ケーブル陸揚げ地点を有するという通信インフラ上の優位性を備えています。この地理的条件は、データセンター(DC)および地域インターネットエクスチェンジ(IX)の設置において極めて有利な立地特性を示しており、災害対応力や情報通信基盤の強靱化を推進する上で有意義です。
特に、政府の地震調査研究推進本部によって「今後30年以内に70〜80%の確率で発生する」と予測されている南海トラフ巨大地震のリスクが現実化しつつある中、首都圏・関西圏などに集中する陸揚げ拠点への依存は、我が国全体の通信網にとって深刻な脆弱性を抱える結果となりかねません。このような災害リスクに備える観点からも、長崎市のように地震リスクが比較的低く、物理的安全性を備えた地域において、通信インフラのバックアップ拠点を整備する意義は極めて大きいと考えられます。
一部では「すでに長崎市内にもDCは存在している」とのご意見もありますが、重要なのは“どのような規模で・誰が運用し・どのような地域波及効果を持つか”という視点です。限定的な機能にとどまる施設では、地域全体の通信インフラ高度化や雇用創出、都市間競争力の向上といった効果は限定的です。国の方針とも整合し、今後の都市機能の中核を担う拠点として、広域的に意義を持つ施設の誘致・整備をご検討いただければと存じます。
【2. 生活利便性向上による都市魅力の再構築】
長崎市においては、サイゼリヤ・ミニストップといった全国的に展開されている店舗が未進出であり、市民の日常生活における選択肢が限定されている状況が続いています。生活利便性の向上は、若年層の定住促進や人口流出抑制に直接関係する要素であり、都市の魅力度を高めるためにも、商業インフラの拡充が求められます。
【3. 人口減少への対応としての整備の必要性】
最新の推計によれば、令和7年4月1日時点の長崎市の人口は385,105人(前月比▲1,170人)、世帯数は185,695世帯(前月比+105世帯)とされています。出生数136人、転入者数2,827人の計2,963人に対し、死亡数566人、転出者数3,567人で合計4,133人の減少が記録されており、月単位での人口減少が現実に起こっています。
このような現状を踏まえれば、単なる個別の施策に留まらず、都市としての“選ばれる価値”を再構築する必要があります。DX・デジタルインフラと日常の生活基盤の両面を強化することにより、若年層や子育て世代を中心とした定住促進が期待されます。
【4. 国策との整合と財源確保】
国はデジタル田園都市国家構想や、データセンターの地方分散化、再生可能エネルギーとの統合型地域整備を強力に推進しています。総務省は100億円規模の支援メニューを有しており、これらを活用することで市の財政負担を最小限に抑えながら、戦略的なインフラ整備が実現可能です。
【5. おわりに】
地域社会の持続可能性と将来世代への責任ある都市運営の観点から、ぜひ本提案をご検討いただき、必要に応じて検討委員会や勉強会などの開催をご考慮いただけましたら幸いです。
【1.通信インフラの中核拠点としての整備】及び【4.国策との整合と財源確保】について、人口減少に歯止めをかける上で、雇用創出・働く場の確保に向けた企業誘致の取組みは重要であると考えており、豊富な人材を輩出する多様な教育機関の存在などの長崎市の強みを活かし、雇用機会の拡大、地域経済の振興に資する企業の誘致に取り組んできております。その結果、成長分野である情報通信関連企業の研究開発拠点を中心に立地が続いております。
ご提案のIXの設置やデータセンターの誘致につきましては、平地の少ない本市においては現状適地がないことに加え、電力消費が大きな施設であること、雇用の創出という点に関して効果が明らかでないことなどの理由から、誘致は難しいものと考えております。
しかしながら、情報通信関連企業の誘致は重要な取組みであると認識していますので、今後も情報の収集に努めながら、限られた用地を有効に活用するため、雇用創出や高い経済効果が見込まれる企業の誘致を進めて参りたいと考えております。
【2.生活利便性向上による都市魅力の再構築】について、都市の魅力を向上させるという観点では、様々な施策を組み合わせ、長崎という都市が有する個性を磨き上げていくことが重要であると考えています。
現在、長崎市では、喫緊の課題である人口減少への対策として、重点的に「経済再生」、「少子化対策」に向けた取組みに注力しているところであり、引続き、子育て、教育、住まい、仕事などといった市民の日常の住みやすさにつながる施策に取り組み、住みやすさに対する満足度を更に向上させることで、若年層や子育て世帯の定住促進に努めてまいりたいと考えております。
【3.人口減少への対応としての整備の必要性】について、長崎市の人口減少については、ご指摘のとおり自然動態・社会動態の両面において、減少に歯止めがかかっていない非常に厳しい状況にあります。そのような中、長崎市においては、人口減少の克服と地域活力の向上に向けて「第2期長崎市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、「若い世代に選ばれる魅力的なまち」をめざすべき姿として掲げて、様々な施策に取り組んでいます。
また、これまで以上に人口減少対策等に係る施策の重点化を図るため、人口減少対策の中でも特に「経済再生」と「少子化対策」の分野に注力するとともに、これらの基盤づくりとして「新市役所創造」を推進していくことを令和5年度から令和8年度までの「重点プロジェクト」として設定し、第2期長崎市まち・ひと・しごと創生総合戦略等の関連計画に位置付けられている施策の中から、これら3つの重点プロジェクトに関連する、特に短期的に着手すべき重点的な取組みを抽出した「重点プロジェクトアクションプラン」を実行計画として策定し、取り組みを実行しております。
人口減少が続く現状に歯止めをかけるためには、ご指摘とおり「単なる個別の施策に留まらず、都市としての“選ばれる価値”を再構築する」ことは重要であると考えます。長崎市は現在「100年に一度の進化の時期」と言われる重要な時期を迎えておりますので、この時期を逃すことなく、デジタルインフラと生活基盤の強化・充実を着実に進め、若い世代や子育て世代のニーズも的確にとらえながら、必要な施策を推進していくことが重要と考えております。
(注)掲載されている回答は回答時点のものであり、その後の社会情勢や制度の改変などにより、最新の回答と異なる場合があります。