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遠藤周作は、日本とキリスト教をテーマとした重厚な純文学作家として知られています。その一方、軽妙なユーモア小説やエッセイを執筆する作家、あるいは同業の文化人らにいたずらを仕掛け、さまざまな「趣味」にチャレンジしていました。そんな真面目な面とおどける面を使い分ける愉快な人物としても知られています。
例えば、遠藤は思い立って合唱団「コールパパス」を結成しました。若さを保つ歌手を見て、自分も歌うことで若さを保とうとしたためです。音痴だった遠藤は、なんとそれが周りにばれないように「音痴であること」や「音譜を読めないこと」を団員の条件としたのです。団員のオーディションでは、何の曲を歌ったのか審査員が首をかしげるほどの猛者もいたんだとか。そのほか、遠藤は演劇や囲碁、絵画、社交ダンスなどにも挑戦しました。北杜夫、佐藤愛子、阿川弘之らの文化人も、遠藤には振り回されっぱなしだったといいます。

長崎を愛していた遠藤ですが、長崎市出身の漫画家である清水崑と手紙のやりとりがあったことも分かっています。清水は遠藤の作品を以前から高く評価していて、遠藤へあてた手紙には「小生は以前からあなたの小説が大好きです」とあります。また、一方で遠藤は長崎で開催された清水の個展へ東京から足を運んでいます。遠藤の新聞連載では清水が挿絵を担当しました。
遠藤周作文学館では、企画展「遠藤周作と狐狸庵」を開催していて、関連企画として「遠藤周作と清水崑~『狐狸庵閑話 人情編』がつなぐ交流~」を開催しています。遠藤と深い関わりがあった清水との交流について知ることができます。この機会にぜひお越しください。
遠藤周作文学館 学芸員 田中