本文
学芸員コラムVol.4で、長崎市出身の漫画家清水崑について漫画原画のアーカイブ化事業を行っていることを紹介しました。清水は、1950年代にかっぱを主人公にした漫画が大ヒットし、かっぱブームを巻き起こした漫画家です。そんな清水と『沈黙』など長崎を題材にした小説で知られる、小説家遠藤周作に交友があったことを皆さんは知っていますか?
管見の限り、2人のもっとも古い接触は、1958年に『朝日新聞』で連載された「話題の顔」の記事で、清水が遠藤を取材したことが確認できます。その後は、手紙のやり取りなども行っています。2人を繋ぐ大きな出来事として1972年に『夕刊フジ』で連載された、遠藤のエッセー「狐狸庵閑話 人情編」に清水が挿絵を担当したことが挙げられます。この最終話は「清水崑画伯の個展」というタイトルで、清水が同年に長崎で開催した「長崎の春夏を遊ぶかっぱ展」を遠藤が訪れた印象について書かれています。この文章の中で、清水のかっぱの絵を見ていると「サンタ・マリアのお像はどこという声が聞こえるような気がする。」と述べ、長崎の歴史と清水の絵を重ねて語っています。
一方、2人と交友があった長崎人がいます。清水は長崎商業高校(現在の長崎市立長崎商業高等学校)の卒業生で、同級生に長崎の老舗衣料品店タナカヤの主人田中直一がいました。田中は長崎で遠藤を案内した人物でもあり、それぞれに知り合いだった不思議な縁から、1972年5月2日にタナカヤ主催で行われた座談会に清水と遠藤が参加しています。まさに、長崎で繋がった縁でした。
ここからは宣伝です。長崎市遠藤周作文学館にて、2025年3月8日(土曜日)から2026年9月23日(水曜日)まで、小展示「遠藤周作と清水崑~「狐狸庵閑話 人情編」がつなぐ交流~」が開催されます。今まであまり知られていなかった、2人の交友を3回に分けて紹介します。足を運んでいただけますと幸いです。
遠藤周作文学館企画展HP:https://www.city.nagasaki.lg.jp/site/endou/47509.html
(長崎市長崎学研究所 学芸員 入江 清佳)
※掲載画像の1~3枚は、中の茶屋・清水崑展示館所蔵。
清水崑(1912~1974)
清水の代表作であるかっぱ漫画の一コマ。本作はNHKにて連続テレビ漫画として放映されました。
長崎で実施された個展にあわせて描かれた作品。清水は長崎の年中行事が大好きでした。
「遠藤周作と清水崑~「狐狸庵閑話 人情編」がつなぐ交流~」(遠藤周作文学館)展示風景。
展示風景
清水の描いた遠藤周作の似顔絵
清水が挿絵を担当した『狐狸庵閑話・人情編』の挿絵原稿、文章原稿、掲載記事。