長崎地方では、そのほぼ全域においてキリスト教が布教され、繁栄。しかし、禁教、殉教、潜伏……という時代が約250年間も続き、キリスト教解禁の時まで、数々の苦難に翻弄され続けました。なかでもかくれキリシタンの里として知られる外海エリアは、禁教時代、たくさんの潜伏キリシタンたちが身を潜め、信仰を貫き継承してきたまち。密かに布教を続けた金鍔次兵衛神父の潜伏の地 ・次兵衛岩や全国に3つしかないキリシタン神社・枯松神社など、数多くの史跡やキリシタン墓地などが残されています。戦国時代の末期、長崎開港と同じ1571年、イエズス会の神父は舟で入江ごとの集落を訪れ布教していました。その集落、黒崎や出津の地には、それぞれに教会が建てられています。
長崎を“心の故郷”と呼ぶ作家 遠藤周作氏は、一枚の「踏絵」に残る“黒い足指の痕”と出会い、その足痕を残した多くの人の心情に心を寄せて、やがて不朽の名作となる『沈黙』を記しました。同作は、神の存在、人間の善意、西洋と日本の信仰の違い、キリスト信仰の本質など、人間の心の深い部分に訴えかける作品。キリスト教と無縁の人の心も動かされるでしょう。執筆の際、遠藤氏は、度々長崎を訪れ、県内各地、キリシタンの面影を訪ね歩いたといい、外海のまちへも足を運びました。
『沈黙』という表題に深く関わっているのが、前半の舞台となる架空の村“トモギ村”と外海の海。その浜辺で多くのキリシタンが殉教していったのです。
??なにを言いたいのでしょう。自分でもよくわかりませぬ。ただ私にはモキチやイチゾウが主の栄光のために呻(うめ)き、苦しみ、死んだ今日も、海が暗く、単調な音をたてて浜辺を噛んでいることが耐えられぬのです。この海の不気味な静かさのうしろに私は神の沈黙を??神が人々の歎(なげ)きの声に腕をこまぬいたまま、黙っていられるような気がして……。
これまで紹介してきた外海の中には、世界遺産候補があります。禁教・潜伏期に焦点をあて、名称も「長崎の教会群」から「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に変え、2018年の世界遺産登録を目指しています。今後、国内外で大きくクローズアップされることになりそうな気配です。
そして、その皮切りとなりそうなのが、2017年に日本でも公開される遠藤周作原作、話題のハリウッド映画、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙?サイレンス?』。実際に舞台となった外海を訪れてから鑑賞すると、その感動も倍増するに違いありません。ぜひ、「潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産候補となる由縁を肌で感じながら、かくれキリシタンの里・外海のベストショットを撮影してください。
【 外 海 】