卓袱料理

長崎の伝統料理の代表格といえば、卓袱(しっぽく)料理です。
「卓袱」の「卓」は食卓、「袱」は卓の上から周囲にたれた布を意味し、卓そのものをしっぽく、またはしっぽく台、卓の上に並べる料理もしっぽく、またはしっぽく料理と呼ぶのです。ちょっとややこしいですね。

もともとは唐人屋敷に住んでいた中国人が、日本人や西洋人をもてなすために作った料理だったといわれています。この唐風料理が一般家庭に伝わって卓袱料理となり、それが現在のように料亭で振る舞われるご馳走へと変化していったのです。一方寺院に伝わったものは、普茶料理(精進料理)になったといわれています。

料亭でいただく卓袱料理は、女将さんの「お鰭(ひれ)をどうぞ」の挨拶で始まります。ビールで乾杯はその後になるのが現代の食事の順番とは異なるところです。「お鰭」に始まった料理は、刺身、酢の物などの小菜が数皿、中鉢、大鉢、煮物、御飯、水菓子(果物)、梅椀(おしるこ)という順序で出てきます。鰭椀には、鯛のひれがひとつずつ入っていて、お客様一人のために鯛1尾を供したという意味が込められています。

大黒様と恵比寿様の細工

そのほかにも衣に味がついている「長崎天ぷら」や中国から伝わった「東坡煮(トウロンポウ・豚の角煮)」、蝦(えび)のすり身をパンで挟んで油で揚げた「ハトシ」などがあります。これらは、お正月やお祝いのときには今でも一般の家庭でも作られている料理です。主客やお客様の上下のへだたりなく、一つの皿や鉢から直箸(じかばし)で料理を取り回すという長崎独特のおもてなし「卓袱料理」、おすすめです。



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