日本には仏教が6世紀に伝わる以前から、土着して発生した「神道(しんとう)」が定着していた。これは、自然現象に対する恐れや驚き、気候の温順や農作への祈りとそれに感謝する儀式である祭りから自然に発生、発展してきた信仰。その神道の神々の物語を記した最古の歴史書が、8世紀、奈良時代に編纂された『古事記』や『日本書記』だ。なかでも『古事記』には321の神々が登場。その神々にも稲、土、水、太陽、山、海、雷といった自然や自然現象が多くを占めることから、古代の人々がそれら自然や自然現象を神様として崇め、祭りを行い、祈りを捧げてきた様子がうかがえる。現在、全国に分布する神社には、この『古事記』に登場する神々が御祭神として祀られている。
日本列島の誕生から第33代推古天皇までを「神々の物語」「神と人田の物語」「人の物語」と3巻に分け表現されたこの壮大な神話『古事記』には、文字や仏教など中国から伝わった外来文化とは別のところにあった古代の人々元来の世界観が映し出されている。
天上界の神々に命じられ、男神・伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と女神・伊邪那美命(いざなみのみこと)の二柱の神が結婚し、淡路島から本州まで日本列島を誕生させた「国生み」。その女神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)、男神・月読命(つきよみのみこと)、男神・素盞鳴尊(須佐之男命/すさのおのみこと)という三柱の最も尊貴な神々を生んだ「神生み」。なかでも『因幡の白兎』「海幸山幸」『八岐大蛇』などの神話は馴染み深い物語だろう。
伊邪那岐命と伊邪那美命は、三柱の最も尊貴な神々を生む前に、石の神、家の神、風の神、木の神、山の神、野の神など三十五柱の神々を生み、最後に火の神を生んで、地上のものすべてのものの要素となる神々が揃う。
新しい年を迎えるにあたり、この古代の人々の世界観が映し出された『古事記』に触れてみよう! きっとパワフルな日本の神様に会いたくなるはずだ。
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