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おいしさのその先を感じてほしい
ムッジーナ 鈴木 貴之
日本一の生産量を誇る「びわ」やオランダ人によって長崎に持ち込まれたことが始まりだと言われている「いちご」、全国でも長崎市にしか自生していない伝統柑橘の「ゆうこう」など、長崎市にはさまざまな特徴を持つ果物があります。
崇福寺通りにイタリアン料理店を構える鈴木さんは、料理を通じて食材の持つおいしさや長崎ならではの魅力を伝えます。小さい頃からスイーツが好きな鈴木さん。カステラやシースケーキなどをよく食べ、長崎の食べ物にふれるうちに食に対して興味を持つようになりました。高校卒業後は県外で調理師として就職。さまざまな店で腕を磨くうちにある疑問が自分の中で芽生えたと言います。それは、「東京で料理を提供してお客さんにおいしいと言ってもらっているけど、食材は長崎産のものばかり。」「長崎産の食材は質もいいし、多くの人に評価してもらっている。でも、その食材の良さを長崎で表現できていないのでは」というものでした。そのジレンマを解消すべく、地元長崎で長崎の食材を発信するお店を立ち上げました。今では、長崎スイーツ王子の愛称で親しまれる鈴木さんは、毎年、「フレッシュ・スイーツフェスタ」を開催し、市内のカフェやレストランなど約50店舗を巻き込み、たくさんの人に果物のおいしさを感じてもらうイベントを開催しています。
鈴木さんが大切にするのは食材が持つ味や個性。中でも伝統柑橘「ゆうこう」には、特別なこだわりがあります。外海地区に縁がある鈴木さんは、食を通じてその地区に古くから伝わるゆうこうを未来へ残していきたいと話します。食材を仕入れる時には山を登ってゆうこうの畑に行き、生産者のかたから話を聞きます。話をしたり、現地に行ったりすることで新しいレシピのアイデアが生まれることもあるとのこと。自分がその場所で見た長崎の風景を感じてもらえるようなデザートをつくりたいと言います。
「画像や文章、映えだけでなく、食べ物の一歩先を感じてもらえたら」と話す鈴木さん。おいしい料理の味には、食材を未来へ残したいといった自身の想いや生産者の想い、そして長崎の食材が持つ歴史や文化が詰まっています。
私の好きな風景
鈴木さんのルーツでもある外海の集落が一望できるスポット。石積みや教会などまち全体から当時の様子や歴史などをうかがうことができます。
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