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あがらないハタはつくらない
小川凧店 小川 暁博
長崎くんちや精霊流しとともに長崎の三大行事として楽しまれている「ハタあげ」。
春になり心地よい風が吹き始めると、稲佐山や唐八景などのさまざまな場所で長崎凧が空に舞います。
小川凧店は明治40年から続く手造り一筋の店。小川暁博さんは二代目である父親から家業を継ぎ、ハタづくりを50年以上続けています。最初は全然父親のように作れなかったと話す小川さん。ハタに使う竹を父が30本削る一方で小川さんは3本しか削れず、自分は不器用でハタ職人に向いていないのではと思う日もあったと言います。思い悩む日々が続く中、父からこんな言葉をかけられました。「だまって数を削れば、自然と指が動くようになる。」口数が少ない父からかけられたこの言葉が小川さんの座右の銘となり、ハタづくりの原動力となりました。
父が引退した後も、その想いを受け継ぎハタ職人として精力的に取り組む小川さん。長崎凧の特徴でもある白、赤、青の3つの色にもこだわり、新たな挑戦として自分の代から和紙の染め上げを始めました。毎年9月になると500~600枚もの和紙を赤と青に染め上げるそうです。
子どもや大人、そして海外の人など世代や国を超えて楽しまれる小川さんの長崎凧。小川さんは、受験を控えた高校生が第一志望に合格(あがる)ために県内の高校へ出向き、ハタあげの指導を10年以上も続けています。他にも日本の文化を学ぶ海外のワークショップの材料として、たくさんの一銭ハタをつくって送りました。
「子どもたちと一緒にハタあげをして、空高くあがったときが一番うれしいですね」とにこやかに話す小川さん。「あがらないハタはつくらない」をモットーに今日も小川さんは長崎の伝統のハタをつくり続けます。
私の好きな風景
毎朝、自宅の近くから眺める港の様子。小川さんの1日はこの景色からスタートします。
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