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第16回文学講座(H23.8.28)
題目 遠藤周作と同時代の「宗教」~『沈黙』『深い河』を中心に~
講師 小嶋洋輔氏(放送大学他非常勤講師)
遺言によって棺に納められたという2作品を中心とした本講座は、事前の反響も高く、満員御礼の講義となりました。
講座前半では、『沈黙』が発表された前後に第二バチカン公会議で示された「それぞれの文化や風土に合ったキリスト教」という指針と作品構造の合致部分を提示され、講座後半では『深い河』で示された遠藤流宗教多元主義と執筆にあたり参照したジョンヒックの宗教多元主義との相違点などが、ユング心理学や河合隼雄との交流を絡めて詳細な資料とともに示されました。
また締めくくりには、遠藤文学の示した「現代的な救いのモデル」の有効性が試されるのはこれからである旨、没後15年を経てなお、「現代」の宗教・思想状況に挑戦する力を有する遠藤文学の一面が語られました。