本文
第13回文学講座(H22.11.28)
題目 表象の「浦上」――『女の一生』の場合
講師 横手一彦氏(長崎総合科学大学)
平成22年11月28日、「表象の「浦上」――『女の一生』の場合」の題目で、横手一彦先生のこれまで培われた長崎文学研究の蓄積を土台として、遠藤文学を評されました。
今回の講座では、「長崎」という土地には「天領長崎」・「公領浦上山里村」・「長崎新地中華街」という多様性があり、言うまでもなく『女の一生』における遠藤の主眼は「公領浦上山里村」の人々を中心とした出来事にあるのですが、作品内部におけるその語りは、「公領浦上山里村」内部からではなく、迫害する側の「天領長崎」や「長崎新地中華街」を迂回して成立しているため、作者が本当に語りたかった部分まで語れていたのかどうか疑問が残るというご提言でした。
今までの講座ではあまり強調されてこなかった地政学的な視点からのご指摘で、『女の一生』を再読する愉しみがまた一つ増える講座でした。