べっ甲
は、珊瑚(さんご)、真珠、螺鈿(らでん)細工とともに
四大海産美術工芸品
といわれていますが、なかでもべっ甲加工については、長崎は世界に誇る最優秀の技術を持っています。しかし、原料となる
タイマイ(亀)
が国際法により手に入りにくくなったこともあり、以前はたくさんあった老舗のべっ甲店が少なくなって、べっ甲そのものが身近になくなったことが長崎っ子にとっては寂しいことです。
べっ甲
製品は奈良時代に、中国(隋、唐)から輸入され、当時べっ甲は玳瑁(たいまい)と称していましたが、いつの時代からかべっ甲と呼ばれるようになり現在に至っているそうです。日本で独自に加工され始めたのは、江戸時代からで、女性の髪飾りとして、櫛、笄(こうがい)、簪(かんざし)などに加工されるようになったといわれています。
長崎では、寛永から延宝にかけて丸山、寄合両町の遊女たちが
べっ甲
の髪飾りなどを用いており、元禄時代には丸山付近に多くの細工職人がいたという記録があります。当時、長崎は中国人が出入りを許されていた唯一の場所であるため、まず長崎の人が技術を習得して細工したからでしょうが、長崎の細工技術にはこうした直伝の歴史があるのですね。
タイマイの背甲と腹甲から作られる純べっ甲は、黄色や飴色のなかに黒や赤の斑点模様が入り、とても美しいものです。宝石のような派手さはありませんが、色に深みがあり自然のやわらかさが何ともいえない風合いを醸し出しています。いわゆる
べっ甲工芸品
は高価でなかなか手に入りにくいものですが、女性用のイヤリングやブローチ、指輪などはもとめやすい価格になっています。今も昔も女性の装飾品として根強い人気があるようです。お土産としてお勧めなのが、べっ甲の「耳かき」。なんとも贅沢な気分になれることうけあいです。
べっ甲工芸のことを詳しく知りたいときは、
「長崎市べっ甲工芸館」
へ
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