開館時間 9時〜17時
休館 / 12月29日〜1月3日
入館料 大人・高校生 100円 / 小・中学生 50円
松が枝町4-33 TEL095(827)4331


●JR長崎駅からのアクセス
市電 / 長崎駅前電停から正覚寺下行きに乗車し、築町電停で石橋行きに乗り換え、大浦天主堂下で下車、徒歩2分。乗り換えの際、料金と引き替えに乗り換え券をもらうことを忘れずに!
バス / 長崎駅前東口バス停から田上、大平橋行きに乗車し、大浦天主堂下バス停で下車、徒歩2分。
車 / 長崎駅前から約6分。

●文化財
国指定重要文化財 /
旧長崎税関下り松派出所



高価なべっ甲に一歩近づきたい
べっ甲の魅力に迫るべく潜入!


大浦海岸通り、旧香港上海銀行長崎支店記念館と並ぶ洋館造りが印象的。
平成14年4月にリニューアルオープンした長崎市日本べっ甲工芸館は、歴史と伝統につちかわれたべっ甲細工の技術と技能を保存するため、全国各地から集められた貴重な作品を展示。
建物は国指定重要文化財「旧長崎税関下り松派出所」を利用し、まったく異なる性質の「建物と展示物」を一体化させた、1つで2度楽しめるといういかにも長崎らしいちゃんぽんスタイル!のミュージアムだ。
さてさて、この洋館の中でいったいどんなべっ甲工芸に出会えるのか……探検隊いざ潜入!



濃淡ある色調、質感、精緻な細工
表情豊かなべっ甲細工に感動!


日本におけるべっ甲細工製作の歴史は300年以上と言われている。
べっ甲の原材料が亀の甲羅だということは広く知られているが、正確には「タイマイ」という海亀の一種である。
現在、長崎県内にはべっ甲店が数多く点在し、名産品となっていることはご存知?
何を隠そう長崎でべっ甲細工が発達したのは、徳川幕府の鎖国によって、長崎港のみがオランダと中国との貿易港となったことから原料を容易に入手できたためなのだとか。
長崎での技法がその後江戸などへ伝えられた。
言わば長崎はべっ甲細工伝来の地でもあったという訳。
その技術の結集がこの度リニューアルしたこのミュージアム。
館内には「これもべっ甲?」「あれも全部べっ甲細工?」と唸ってしまう程の想像を超える巧みな技術による工芸品が展示されている。
もちろん値段は想像を絶するものばかり。
う〜ん、魅惑のべっ甲細工!



おすすめチェックポイントベスト5

1. べっ甲で作れないものはない?


甲や爪などから構成される甲羅は、それぞれに色や材質など様々な特長を持っていて、細工の際に生地選びの重要なポイントになるのだとか。
熱を与え冷ますなどの行程を加えるとどんな曲線だって自由自在。
この伊勢海老、色も形も本物そっくりでびっくりなのだが、何と!それだけではないのだよ。
胴や足の関節を曲げることができて好みのポーズに変えられる! さすが職人技だぁ。



2. 長崎べっ甲、技術の高さの秘密


それは……明治期に多くのロシア船が入港し、その際船長さんなどの「自分の船の模型を作ってくれ」との申し出により精巧さが求められたためだとか。
江戸で製作されたものも展示されているので比較できるが、一目で長崎べっ甲の精緻さ、大胆さ、優美さが見て取れる。
写真の硯屏(けんびょう/硯で墨をする時に埃が硯の中に入らないように立てる屏のこと)はことさら素晴らしく見入ってしまった!
もちろん中に埋め込まれた富士山もべっ甲細工。
気の遠くなるような手間と時間を要したと言われる見事な大作だ。



3. べっ甲の表情に魅せられて

一般に写真左の尾長鶏の尾の部分や、右の宝船のような飴色のべっ甲が一番高価だと言われているが、写真中央の天馬のような漆黒もとても高価なのだとか。
原材料タイマイの使用部分の特長を最大限に生かしたこれらの作品は、それぞれに表情豊かで惚れ惚れする美しさ。

4. 原材料のタイマイに触れる!


館内には、原材料であるタイマイから完成品までの、行程ごとの細工品を手に取って見ることができる。
この色つやもほとんどないタイマイが、輝くべっ甲細工になるなんて不思議。

5. 洋館造りの建物にも注目!

往時、海の玄関口であった松が枝に建つこの建物は、明治31年(1898)に建設された旧長崎税関下り松派出所跡。
長崎港は鎖国時代にあって、唯一海外との窓口として開かれていたが、開国後も貿易港として重要な位置をしめ、九州全域を直轄下とする税関が置かれていたのだ。
老朽化のため半解体修理を行ない復元されたが、館内には倉庫として使用していたことが一目でわかる鉄の扉、建物正面両端に三角破風を見せた意匠などが残っている。
税関時代の資料や写真も展示している。


現代、べっ甲細工と言うとブローチやピアス、ペンダントなどの小物で親しまれているのが主流。
確かに大きなモノになると、とっても高価なので目にする機会もあまりないかもしれない。
しか〜し、高度な技術を持つ職人が育ち、日本べっ甲協会が本部を構える長崎は、長い歴史を持つべっ甲細工ゆかりの地。
ここでは部分部分で様々な表情を見せるタイマイの甲羅の美しさ、色、質感を駆使し、見事な曲線、細工を施した日本各地から集められた一点ものの秀逸品を目にすることができる。
職人さんの技が光る「これでもか〜」という迫力の大きな作品は感動ものだ。
ぜひ一度、目の保養に足を運んでみよう。


『長崎市べっ甲工芸館』常設展示概要●

歴史と伝統につちかわれた、べっ甲細工の技術と技能を保存するため、全国各地から集められた貴重な作品を展示。
主な展示品には硯屏、オランダ船、帆船、宝船、龍、夢殿、香入れ、御所車、天馬、鯉、小槌、伊勢海老、五重塔、宝石箱などがある。
約30分のビデオ上映において、べっ甲細工製作の過程を鑑賞することもできる。
館内には旧長崎税関下り松派出所に関する資料展示コーナーも併設。


 
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