伊東館長が思い描き、実現する
長崎県にふさわしい美術館の形

〜自分なりの関わり方ができる美術館〜


Q.長崎の人は、よく新しいもの好きで飽きっぽいといわれますが、その反面自分達が誇れるものに関しては、とても肩入れする傾向があると思うのですが、ズバリ!長崎県美術館の他都市に誇れる部分ってどんなところでしょう?

逆に、最初は誇れないと思いますけどね。きれいな建物ができた、というぐらいのものでしょうね。でもそれが、文化的にみても芸術的にみても、よく考えられたプログラムとして、さっき言ったいろいろな人達に対応していて、そういう美術館が長く活動を続けられていくというのが、誇れることになっていくから、逆に飽きっぽいというよりは、最初は関れるものが少ないと思うんですよ。たぶん長崎の人達は関わりたいと思っていると思うんです。ペーロンにしたって、おくんちにしたってこれだけ長く続いているわけじゃないですか。ランタンにしたって育っている。
長崎の人達は関れるものがあるかないかで、随分姿勢が違ってくると思うんですよ。それでプログラム作ってボランティアを募集したら300人位の応募があって、85%、長崎の人ですから。そのネットワークを県中に広めたいんですよね。美術館がない所でも美術館を感じてもらえるようにしたいんですよ。だから、関わって誇れるものを造って欲しいんだけど、何を誇れるかっていうと、関わってその後は自分達が育てていく。何があるから長崎として誇りというんじゃなくて、自分が誇れるような、それに関わった人達1人1人が自分を誇れるような、美術館にしたいと思いますね。
財政的にはとても厳しく、運営予算を考えるとゼロからの出発なんですよね。 過激な言い方だけれども、僕は全部がゼロでもいいと思っているんですよね。全部がゼロなら、1日24時間全てがアイデアの宝庫になってくるわけですよ。考えて動かなきゃいけないから。そういう美術館を本当の意味で県民や市民が支えていくためには、どれだけでも人がいるわけですよ、人のアイデアがね。
内のアイデアと外のアイデアとが重なって、美術館が支えられているという関係が外に表現できたら「長崎はすごい」ってことになるわけですよね。それは、「きれいな建物を造った」「すごく有名な絵を持ってきた」というのとは僕はまた違う偉さがあると思いますね。現在、そういう形態のものは他都市にはないですね。皆さんに、様々な意見をバンバン入れてもらえるような館長箱を設けようかなとも思っています。(笑)

まずは、関わり方としてはボランティアや友の会ですよね。海外の美術館ではボランティアを養成して解説することも多いんですけどね。今回年間通じて13もの教養講座を準備してきたんです。やはり、お金を払えないけど、何らかの形で還元していくという形をとっていかないと、長く続いていかないんですよね。そして、次のステップ。プロフェッショナル・ボランティアといいう、プロ意識を持ったボランティアの育成をするんです。これが長いスパンで、美術館の力になっていくだけではなくて、次々と新しい人材を育成していくことによって、街の力、地域の力になっていく。美術館はそういう起爆剤にしたいですね。そして、観せるものはやっぱりいいものを出したい。今年度の展覧会で6つのうち4つはうちが皮切りでうちが考えたものなんですよ。ここを皮切りにここから発達して行く。そのプログラムの一つ一つがここで生まれたものだという感動があったら可愛がってもらえるんじゃないかというのはありますね。



新生“県美”にはいっぱいの刺激、感動、寛ぎ、出逢いが待ち受けているようだ。長崎県人の方は、まずはいち早く足を運び、自分達がどのように関れる場所であるのか接点を見つけてみよう。きっと楽しみがあふれているに違いない。だって新生“県美”は長崎県をまるごと吸収し、発信する皆が共有できる “コミュニケーションーセンター”のようなものだから。そして、県美の今後の成長はワタシとアナタのアイデアにかかってもいる! また、注目の企画展、今年度のテーマは『長崎と西洋』。この長崎港を見渡せる新スポットに、長崎県の歴史と文化の薫りが、どこからともなく漂ってくる1年間になりそうだ。


新生『長崎県美術館』の
“特徴”と“楽しみ方”に注目!

〜ボランティアスタッフとしての関わり方〜




展示解説やワークショップ・講座ほか、様々なセクションで運営をサポートする“長崎県民アートボランティア”。募集当初は、予定していた100名を大きく上回る286名の応募があったそうだ。平均年齢は48歳。女性が8割、最年少は15歳、最年長は79歳だという。現在、年間13回に及ぶ講座に出席している人数は約200名〜220名程度。他都市にも同じ形態のボランティアスタッフが育成されているが、これはとても素晴らしい“数字”らしい。それどころか普通は講座を重ねるにつけ人数が大幅に減っていくものだが、それが少なかったこと。逆にしだいにやる気が増し、オープンに向け盛り上がりを見せる様子には伊東館長もしきりに感心しておられた。
今回養成中のボランティアスタッフの中には、美術関係者もいたが、未経験者でも何か携わりたいという方も多かったそうだ。ギャラリートークなど、作品について解説をするようなガイドのほか、業務内容は様々。自分の特技を生かしたセクションにつくこともできるし、資料整理や清掃というスタイルで運営を支えることもできる。現在募集は閉め切っているが、毎年募集するよう検討されているらしい。ボランティアスタッフとして支える立場になることが、実は美術館の究極の楽しみ方かもしれない。


最後に、長崎県美術館は県の直営ではなく、指定管理者制度が採用され、財団法人 長崎ミュージアム振興財団がその指定を受け運営することになったことを知っておこう。長崎ミュージアム振興財団は、民間の能力を活用しつつサービスの向上、経費の節減などを図ることを目的とし運営していくのだそうだ。
 
■DATA

オープニング企画『よみがえる須磨コレクション-スペイン美術の500年』展(4月23〜6月5日)を皮切りに、自主企画や世界的に有名な美術館のコレクション展など多彩な企画展が目白押しの長崎県美術館。企画展のお知らせなど詳しくは公式HPにアクセス! http://www.nagasaki-museum.jp/

2005年4月23日(土)OPEN
開館時間/10:00〜20:00
休館日/毎月第2・4月曜(祝日の場合は翌火曜日)、12月29日〜1月3日
常設展観覧料/一般400円/大学生300円/小中高生200円(ただし、
         県内の小中学生は無料)/70歳以上の高齢者300円
         ※障害者手帳保持者、及び介護者1名は5割減額
駐車場/なし(周辺駐車場を利用)

長崎空港からのアクセス(ながさき出島道路経由)
長崎バス/長崎新地バスターミナルまで約35分、それより徒歩5分。
(大人800円、小学生400円/往復大人1200円、小学生600円)
県営バス/大波止バス停まで約40 分、それより徒歩5分。
(大人800円、小学生400円/往復大人1200円、小学生600円)
JR長崎駅前からのアクセス
徒歩15分。
路面電車/長崎駅前電停から正覚寺下行きに乗車し出島電停下車、徒歩3分。
長崎バス/長崎駅前南口バス停から長崎新地バスターミナル行きに乗車し終点下車、徒歩5分。
長崎港大波止ターミナルからのアクセス
徒歩10分。



〈3/3頁〉
【最初の頁へ】
【前の頁へ】