いよいよ水辺の森公園横に姿を現し、開館が4月23日(土)に迫った長崎県美術館。その好立地から美術館のみの機能ではなく、憩いのスペース的役割が期待されている。刺激、感動、寛ぎ、出逢い。いろんな楽しみが待ち受けている予感!


ズバリ!今回のテーマは

「期待度200%!アナタとワタシの新生“県美”に急接近!」なのだ



新生『長崎県美術館』の顔!
“伊東館長”に注目!

長崎県民の皆さんは、オープンを間近に控え、TV、新聞、雑誌等各メディアが取り上げる特集において、離島をはじめとした県内各地へ訪れる新生・長崎県美術館館長、伊東順二氏の姿を目にした方も多いのではないだろうか? そして、その多くの方々は、各地の方々と笑顔で言葉を交わすそんな伊東氏の姿にきっと好感をもたれたことだろう。

できる限り県内各地へ足を運び、人々との出会い、その土地の文化に触れることは、伊東氏が長崎県美術館館長に就任した際に打ち出したテーマ、“街や地域と呼吸する美術館”づくりに通じていた。
それにしても、伊東順二館長っていったい何者なのか?
そう! まずは、この新生・長崎県美術館館長・伊東順二氏に接近してみよう。



館長は長崎県出身!
日本を代表するアート・プロデューサー


長崎県美術館館長
伊東順二氏

伊東館長は、昭和28年(1953)長崎県諫早市生まれ。なんと長崎県出身なのだ。そして、早稲田大学仏文科大学院修士課程修了、仏政府給費留学生としてパリ大学、及びエコールド・ルーブルにて学ぶ、という輝かしい学歴をお持ちでいらっしゃる。
その後、フランス政府給費研究員としてフィレンツェ市庁美術展部門嘱託委員、「フランス現代芸術祭」副コミッショナーなどを歴任。帰国後、美術評論家、アート・プロデューサー、プロジェクトプランナーとして展覧会の企画監修、アートフェスティバルのプロデュース、アート・コンペティションの企画実施、都市計画、また企業、協議会、政府機関などでの文化事業コンサルタントとして幅広く活躍しておられる。
2002年には、フランス政府より文化芸術勲章(シュバリエ)を受章。この勲章はナポレオンが創設したフランス国家勲章の中でも勲5等にあたり、軍人、民間人を問わずフランス国家への功労者に与えられるフランス最高の勲章。この受勲は、伊東氏の長年に渡るフランス文化・芸術への功績がフランス政府に認められたものなのだ。
そして、2004年、長崎県美術館館長に就任! 新しい長崎県の顔となられた。


ということで、今回はそんな伊東館長にロング・インタビューを敢行。長崎県美術館の特徴や楽しみ方、また伊東館長が考える美術館が担うべく役割につい語っていただいた。


伊東館長が思い描き、実現する
長崎県にふさわしい美術館の形

〜県文化を集約し発信する場〜

Q.最近は、活発に県内各地を飛び回っていらっしゃいますね?

県内各地へは、私が行きたいと言って行っているんです。ここが市の美術館だったら、その辺りをさるいていたらいいんですけどね(笑)、県の美術館だから長崎中をさるかないといけない。というのも、ここでやるコンテンツで、展覧会は1年間決めているからいいけど、日々やるイベントものはいろんな人に対応したものでないといけないと思っているんです。来られる方は時期を選べないでしょ? 時期を選べなかったら、「いつでもいいや」って話になるんですよね(笑)。自分が少しは入れる部分がないと、美術館を身近に感じることができないじゃないですか。 例えば、館内のショップに島原の工芸品があったり、カフェで対馬のお菓子を出したり。それが今後の長崎のパワーになれば、そんな接点をこの美術館で果たしていきたいですね。美味しいものがあるでしょ、長崎って。それぞれの場所場所で、食べ物と文化が染みついていい所あるじゃないですか。
この美術館は、長崎の人達に展覧会を観せるというだけではなくて、観光客やいろんな方が来るから、そういう県内各地にいい場所があるってことを知らせる部分が、美術館の中にあれば、いいなと思うんですよね。そのためには、やっぱり知らないといけないと。本当に見たものっていうのは、説得力が違うから、各地に出かけるんです。

それにしても、長崎って街の中が相当面白いんじゃないですか? 普通、地方の人って逆に東京の方に憧れるじゃないですか。 でも長崎の人は長崎のことしか話さないですよね。やっぱり面白いんですよ、長崎の中が。だけど街やその文化っていうのは景気によって左右されるし、街のエネルギーが落ちてくると、皆のエネルギーも落ちてくるんですよ。すると、皆のモチベーションも落ちてくる。広告その他、長崎から発信するという機会が少なくなっているのも、祭り続きのひとつひとつのカレンダーの中で、他を見ないようになっている部分もあるんじゃないかな?
長崎市は山の向こうが見えないところで、それは悪い所といい所両方あると思うんですけど、美術館がここにある意味というのは、見えない外を見せる意味もあると思うんですよね。美術館がここにできることによって、いろんなものを紹介して、あの山の向こうにはこういうものがある、みたいなね(笑)。そういうことも訴えないといけないし、逆にあの山の向うは長崎県全体かも知れない。対馬とか壱岐とかっていっても、長崎市の人、知らないでしょ? 県という意識も低い。長崎県にはそれぞれに文化度の高い人達がいるんです。これが凄いんですよ。突出文化とそれに従っていく文化的構造の金沢や京都は、金沢らしさ京都らしさという突出した文化があるんですけど、長崎には長崎っぽいっていう所はない訳ですよね。それって、すごく大事なんですよね。そして、それをつなげるのが県という組織じゃなきゃいけないんです。僕自身も、発想をもらいに行っているんですよね。アイデアは何モノよりも勝る!アイデアっていうのは、自分自身で発想する時もありますが、人と会ったり何かに触れたりすることが一番ですよね。
例えば対馬に行って子ども達と話していたら何か感じることがあったり、対馬山猫のエイズのことだったり、いい話ばっかりじゃなくて、いろいろな環境の現実とか生活の現実とか社会の現実とかっていうものも吸収するわけですよ。やっぱり人生、幸せばっかりじゃないから、悲劇があったり喜劇があったりする訳ですけど、その悲劇、喜劇が文化だから。そこを感じながら、同じ展覧会をやるにしても切り口を考えていきたいですね。ちょっと出ていろんな人と話すだけで、すごく活性化するところなんですよ。長崎って。



新生『長崎県美術館』の
“特徴”と“楽しみ方”に注目!

〜世界的にも稀な自然と一体化した建造物〜

まずは訪れた時に真っ先に目に飛び込んでくるのが、近代的かつ、周囲と調和した建物だろう。設計は、環境と調和した新たな建築のあり方で、今、世界的に注目を集める隈研吾氏と日本設計のチームによるもの。隈氏は、建設前視察に訪れた際、日本はもちろん、世界にもあまり無い敷地の中に運河が流れているという立地にいたく感動。後に「運河の自然と建築という人工物を一体化することを新美術館のコンセプトにし、このコンセプトが実現したら、きっとそれだけで世界に類がないすばらしい美術館ができると直感した」と語っている。

建物全体のテーマの素材として、石を用いているのも特徴的。これは、長崎の石畳のイメージに合わせ、かつ耐久性に優れているのだそうだ。


外光に満ちたエントランスから進み入ると心地よい風が通り抜ける回廊が待ち受けている。やはり建物上の大きな特徴は、運河を挟み、西側と東側、ふたつの棟によって構成されていることだろう。
入口側、エントランス、県民ギャラリー、他目的ホールやアトリエなどがあるのが、西側のギャラリー棟。



エントランス


県民ギャラリー


アトリエ

また、美術館棟と呼ばれる東側の棟には、事務室や研究室、収蔵庫や企画・常設展示室、運河ギャラリーなどが配されている。


常設展示室


運河ギャラリー

この2つの棟を結ぶのが、運河上の橋、2階、橋の回廊。歩き出すと、まるで自分達がスポットライトを浴びせられるかのように、ガラス張りの窓から全身に光がふり注ぐ。体に光を感じると、次は眼下に、運河流れる水、または目前に長崎港を感じられるのだ。これこそが、隈氏が狙った体感できる景観とでもいうべきものだろうか。

また、屋上も散策や展示空間として活用できるようになっている。水辺の森公園方向を望むと長崎港。これもまた、圧巻と呼べる景観が待ち受けている。水辺の森公園と一体化することによりさらに魅力を増す建造物照明デザインにもぬかりないということなので、大いに期待し、ぜひ夜の散策にも出掛けてみたいものだ。

 
 ●楽しみ方Check! Check!

橋の回廊のカフェ&屋上庭園は新デートスポットに決まり!

ギャラリー棟と美術館棟とを結ぶ運河上の橋が「橋の回廊」。空中に浮かんだガラス張りのこの回廊は、外から見ても一番印象的なポイント。両側のガラス越しに長崎港や運河を望むことができるのだが、ここにはカフェが設置される。県内で噂の美味しいデザートがここに集結する!という噂もチラホラリ。そして、屋上庭園はご覧の眺め! 東山手・南山手、長崎港、稲佐山。長崎の街の持つ美しさを手中にできる絶景が広がる。屋上庭園へは無料で入場可能。この美しい景色も一つの美術品として観覧あれ!



屋上庭園


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