vol.6 現代、長崎港を航行するフェリー&観光船

毎朝8時過ぎ、穏やかに澄んだ長崎港を取り囲む町々に、汽笛が鳴り響く――。
元亀2年(1571)、ポルトガルの貿易船とともにやって来たキリスト教宣教師によって開かれた深い入り江の長崎港は、外国船が往来した歴史ある国際貿易港です。平成22年(2010)、国際クルーズ客船の寄港の際、円滑に入出国手続きができるターミナルビル長崎港松が枝国際ターミナルが設置され、年間を通して豪華客船の往来でますます賑わう日が増えてきました。

長崎港

緑化された屋上広場へは利用者以外の方も自由に出入りでき、心地よい潮風に吹かれながら長崎港の風景を独占できるとびきりのビュースポットとなっています(9:00〜18:00/年中無休※ただしクルーズ客船寄港時は、着岸予定時刻の2時間前〜離岸してから1時間後まで開館)。ここで、すでに名物となっているのが、クルーズ客船の入港時のお出迎えと出港時のお見送りイベント。地元で活動する音楽家達による演奏やコーラスほか、様々な催しでもって、心からの歓迎を表現。乗船客のたくさんの笑顔に出会える素敵なイベントです。
さて、そんな長崎港は、外国船の往来はもちろんながら、町が発展すると、入り江の各地に波止場が設けられ、住民の水上の交通路として栄え、vol.3長崎港を結ぶ「港内交通船」今も確かな存在感を放つ町の中心地でもあります。

では、現在、長崎港を往来する船にはどんなものがあるか見てみましょう。

まず、早朝8時過ぎに町中に鳴り響く汽笛の主は、長崎汽船(明治44年(1911)創業)の長崎と五島(福江・奈留島・奈良尾)間を結ぶ定期便フェリー「万葉」(平成23年就航)と「椿」(平成24年就航)です。命名はいずれも一般公募によるもので、かつて五島列島に寄港した遣唐使船や、万葉集にも登場する地域の歴史にちなんだ「万葉」と、長崎県の花木で、五島市のシンボルである「椿」が選ばれました。「椿」は、前方デッキに描かれた椿の絵が目印です。


五島行きフェリー「万葉」

この3〜4時間を要する長旅であるフェリーに比べ、わずか1時間25分〜50分で長崎・福江間を結ぶ高速船ジェットフォイルは、五島への旅を気軽なものにしてくれます。盆正月の帰省シーズンでは、なんと船内が同窓会となることもあるとか。穏やかな長崎港から五島灘へ――ときには、荒波に揉まれ大揺れすることもありますが、それも船旅ならではの醍醐味。透明度抜群の海、教会堂巡り、新鮮な海の幸などなど、五島列島満喫の旅におすすめの船です。

また、長崎汽船が運航する高速艇コバルトクィーンによる近場の島、伊王島→高島航路への定期船(一日9便)も人気です。平成23年(2011)、伊王島大橋(香焼・伊王島間)ができ、陸路での交通も可能になりましたが、長崎港の美しい景色を眺めながらの25分の船旅では、ちょっとした旅行気分を味わえます。伊王島から12分の高島には、伊王島同様、美しいビーチがあり、夏場は海水浴客や釣り人達に人気の島です。

そして今、観光船として全国から最も熱い視線を浴びているのが、高島から約10分の沖合に浮かぶ軍艦島ツアーを行う観光船です。

平成21年(2009)、「九州・山口の近代化産業遺産群」の一つとして世界遺産暫定リストに記載されたことを機に注目を集め、端島は、明治23年(1890)より、三菱経営となった高島炭鉱の支鉱だった島です。「軍艦島」の異名は、大正期に三菱重工業長崎造船所建造中だった日本海軍の「戦艦土佐」になぞられたもの。南北に約480m、東西に160m、周囲約1,200m、面積約63,000uという小さな島に、木造平屋や2階建ての建物が林立する姿が遠目に軍艦に見えたことに由縁します。昭和49年(1974)に炭鉱が閉山すると、人々も島を離れ無人島となりましたが、平成21年に一般の方の上陸が可能となり、長崎港から出港する定期観光船が就航するようになりました。長崎港から出港する定期船は、現在、次の4社があります。シーマン商会の「軍艦島ツアー」、ユニバーサルワーカーズ(軍艦島コンシェルジュ)の「軍艦島上陸・周遊ツアー」、高島海上交通の「軍艦島クルーズ」、やまさ海運の「軍艦島上陸周遊コース」「軍艦島周遊コース」。

いずれのツアーも実際に上陸し、ガイドの方の説明を聞きながら島の実態を体感できるのが特徴です。それぞれに島を一周する周遊、あるいは炭鉱の歴史を学ぶべく事前に高島に上陸し「高島炭鉱資料館」を見学するなどの特徴、また時間帯、価格帯も違ってくるので、適したものを検討して、ぜひ一度、軍艦島を体感してみてください。

また、安政2年(1855)、幕府が創設した長崎海軍伝習所の訓練船としてオランダから贈られた日本初の木造蒸気船の復元船「観光丸vol.1長崎草創期、鶴の港を往来した帆船を利用した「長崎港めぐり」や、夏季限定! 沈む夕日に合わせて出港する「サンセットクルーズ」も人気の港内クルーズです。

長崎の歴史は港から――穏やかな港を後にして、しばし楽しむクルージングは、美しい海、その海を囲むように成り立つ町々、点在する小さな造船所や小菅のソロバンドッグ、三菱重工業長崎造船所のマークが燦然(さんぜん)と輝くドッグ、クレーン、大型タンカーの勇壮な姿などを目にすることができるおすすめの長崎観光コースです。
 
参考ホームページ
★長崎松が枝国際ターミナル http://www.kouenryokuchi.or.jp/matsugae/index.html
★九州商船 http://www.kyusho.co.jp/
★長崎汽船・野母商船 http://www.nomo.co.jp/index.html
★シーマン商会 http://www.gunkanjima-tour.jp/index.html
★ユニバーサルワーカーズ(軍艦島コンシェルジュ) http://www.gunkanjima-concierge.com/index.html
★高島海上交通 http://www.takashima-kaijou.jp/
★やまさ海運 http://www.gunkan-jima.net/
 



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