2006年1月、本堂保存修理工事着工開始。5年に及ぶ全解体修理が行なわれ、それにともなう発掘調査、検証によって清水寺本堂は日本仏堂で非常に特徴ある建物であることが判明! 長崎県指定有形文化財だった本堂は文久2年の姿に復元され、国指定重要文化財となった。


ズバリ!今回のテーマは
「日本建築のルーツを見る!」なのだ



 
ナガジン!は今年2011年の11月で11年目に突入した。記念すべき第一回の特集は『寺町界隈ぶらり散歩道』。風頭山麓にずらり建ち並んだ2社14寺のひとつひとつを訪ね歩き、寺社の奥深い歴史に触れつつ御住職のお話を伺いながら知られざる興味深い話題や遺構を発掘。現在の長崎さるくの先駆け的企画だった。

※2001.11月 ナガジン!特集「寺町界隈ぶらり散歩道」参照

今回は10年前もいちばんに取材した風頭山の西山麓、長崎山(ちょうきさん)清水寺を再び訪問。第20代住職 一月正人師にお話を伺いながら、昨年12月に国指定重要文化財に指定された本堂の修復工事を通し、新たに興味深い発見がなされた長崎山清水寺の魅力に迫る。



 

京都の名残り?

長崎 清水寺の
由緒正しき縁起

崇福寺通りから明治、大正と、馬車道として活躍してきた旧道へ。この道から清水寺を仰ぎ見ると、かつては見事な蔦のベールをまとい、夏から冬にかけてはブーゲンビレアのピンクが賑やかに彩るアーチ型の中門が見えていたのだが、今回は、修復工事において漆喰で補修され装いも新たに生まれ変わった中門が出迎えてくれた。どこまでも続くかのような天高い空と、秋の柔らかな日差しを感じながら、本堂へと足を踏み入れる。



開け放たれた(※1)本堂の中を爽やかな風が通り抜ける。堂内に腰をおろし、中央厨子に納められた秘仏の御本尊に礼拝。差し込む光の具合、お賽銭箱の位置、中央厨子の周囲にずらりと並んだ(※2)二十八部衆の鮮やかな色彩……明らかに10年前に訪れたときから、本堂は大きく変化していているようだ。
 
一月住職「今回の修復で、文久2年(1862)の姿に復元されました。その前後も幾度となく改築がなされていますが、やはり、使いやすいように変化させていったということなんでしょうね。」

長崎の清水寺、通称「きよみずさん」は、明治42年まで全国で唯一、京都清水寺の末寺だった(明治42年3月以降は東京本郷 霊雲寺の末寺)。創建したのは総本山である京都清水寺の(※A)僧 慶順。彼が京都清水寺内院に安置されていた観音像を携え、全国各地を巡り、教えを広めている中で西海を臨む長崎に辿り着いたといわれている。そのとき慶順が携えていた観音像は、京都清水寺の御本尊・千手観音像を造る際の試作品だったといわれていて、京都清水寺の御本尊の大きさが約2.4mであるのに対し、10分の1のサイズ。慶順は、その御像、千手観音像を長崎山清水寺の御本尊とし、また、京都清水寺と同様に檀家を持たない(※B)祈願寺として創建した。

清水寺が創建された頃の長崎の町は、町建てから約50年、いまだキリシタン信仰が根強く仏教の復興が遅々として進んでいない時代だった。しかし、それから33年後、長崎の仏教寺院は41ヶ寺になり、興福寺、崇福寺、福済寺といった唐寺を含めると44ヶ寺を数えるまでに仏教は復興を果たす。

それにしても、町建てから50年という清水寺創建の頃、この辺りはまだ山に埋もれた僻地で人家すらなかった。ではなぜ、慶順はこの地を選んだのだろうか?

小島郷の民家に止宿し順調に布教を進めていた慶順は、時の長崎奉行 長谷川権六に寺院建立の敷地を与えるという申し出を受けた。つまり長崎奉行としては、根強い信者を持つキリシタンを根絶、仏教を広めたかったというわけだ。慶順は、しかるべき土地を得ることを千手観音に祈願した。すると、ある夜東方に妖しくも白光が続けさまに上るのが見られた。翌朝、光の発する所へ行ってみると、大石から光を発している。慶順はかねてから信心する観音様のお告げと喜び、奉行にこの地での寺院建立を請い、元和9年(1623)、念願の(※2)堂宇を建てたという。その際の大石は慶順によって「(※C)瑞光石(ずいこうせき)」と名付けられた。


本堂全面に配された、きよみずさん最大の特徴である“長崎版 (※3)清水の舞台”は、創建当初は木造で、正保3年(1642)に堅牢な石造に改築されたのだという。

一月住職「木造ではおそらく長い年月の中で白蟻などの虫食いや台風による腐敗など、傷みが激しかったのだと思います。」

背後の風頭山石を切り出し、石垣を築き、欄干を巡らせ、板石を敷いて長崎版、清水の石舞台が誕生。それから約370年もの間、その堅牢さを誇ってきた。



(※1〜3の解説は2ページに!)
(※A〜Cの解説は3ページに!)

※詳しい情報は公式HPで http://homepage3.nifty.com/kiyomizudera/
長崎山清水寺(ちょうきさん きよみずでら)
長崎市鍛冶屋町8-43 電話095-823-3319
 

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