浦上信者の悲願の聖地
住宅地にある小峰のルルド

もうひとつ、信徒や近所の人のほかにはあまり知られていないルルドがある。静かな住宅地の中に、突如現れるオアシスのような場所。そこは苦難と悲哀に満ちた浦上信者の心の支えであり続ける聖地だ。

小峰のルルド

浦上信者の聖地

フランシスコ会修道士ヨゼフ岩永氏が、原爆によって精神的、肉体的に打撃を受けた人達の心の支えにと、浦上にルルドを建造する計画を立て、三原町野中の北西急傾斜地の下方に、昔から清水の流れ出る最後水と呼ばれる地に実現したのが、この小峰のルルドだ。

着工は昭和14年10月、浦上の復興と共に布教活動に燃えるその熱意に、地主も快く土地購入に協力してくれ、戦後間もなく発足したフランシスコ会第三会の有志が進んで奉仕に参加して、ヤブを切開き、鍬を振っての地開き工事がスタート。

洞窟の正面には大きくうねった川が流れ、当時、対岸には牧場が広がっていて、本場のルルドを縮小した環境の最後水は、建造にふさわしい適地だとヨゼフ岩永氏は考えたのだという。

元々最後水にも昔から数々の逸話やいわれがあったのも、この地を選んだ理由のひとつ。

すべて手作業にて岩盤を削り、洞穴を掘り、石組を築くのは大変な作業。それを数十名の有志が家事や農作業はさて置き、喜んで奉仕に参加したという。工事スタートから約6ヶ月。昭和25年(1950)5月、小峰のルルドは完成。祝別式が行われた当日は、聖職者および一般信徒で、約300坪の境内地は埋まり、盛大な式典となったという。

その後も、在世フランシスコ会員によって守られ、毎年2月11日のルルドの記念式典は現在も続けられている。この地は現在でも多くの信徒が心の拠り所とする聖地。湧き出る清水は一度も絶えることなく潤し続ける……。

手を合わせ祈る信者さん


●長崎駅前からのアクセス
バス/長崎駅前バス停から県営バス循環行きに乗車し、聖フランシスコ病院前バス停下車。徒歩3分。
車/長崎駅前から約15分。

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