● 食べ手サイドのこだわり
 
まずはどこが好き?
いつ頃からかは定かではないが、学校給食法が制定された昭和29年以降、長崎では、給食メニューにちゃんぽん皿うどんが取り込まれてきた。大量に作るため、ちゃんぽんは多少麺がのびているし、皿うどん(細麺)はアンと麺が絡んでいてとってもしんなりしている。しかし、長崎の人は実はそんなところが“好き”なのだ。それが給食のちゃんぽん&皿うどんだから……という愛情を誰しもが持っている。その子どもの頃の愛着からか、長崎ちゃんぽん&皿うどんは、他県のラーメン&うどん&カレー同様に親しまれている。
   
ではいつ、どんな時食べる?
まずはここで暮らしにしっかり根付いた食べ物だということを解説しておかなければ話にならない。
ちゃんぽん&皿うどんは決して中華料理店でのみ食べられるものではないということだ。給食、学生食堂、社員食堂、町の大衆食堂、ホテルに百貨店、ファミレスまでにも登場。なんなら病院食にも登場するのである。特にちゃんぽんの進出は広範囲。うどん、カレーと並んで長崎で一番メジャーな食べ物と言っても過言ではないハズ。で、いったいどんな時に食べるかというと、一番多いのが昼食。何せ、栄養&ボリューム満点の完全食な訳だから昼食にはピッタリなのだ。他のメニューと組み合わせる場合、ちゃんぽんは炒飯(焼飯)、皿うどんは白ご飯という人が多い。
ここからちゃんぽんと皿うどん、分けて分析してみよう。

<ちゃんぽん>

前述のように専門店以外なら多くの店で味わえるちゃんぽん。なんとラーメン屋のメニューにもしっかりちゃっかり名を連ねている。ゆえに長崎では飲んだ後はちゃんぽん!というヘヴィーな人も多い。
さらに、酒つながりでもうひとつ。長崎では二日酔いの時に欲する食べ物がカレー派とちゃんぽん派に分かれるのだ。しかし、唐灰汁入りのちゃんぽん麺は消化を助けてくれるというから、飲んだ後も、飲んだ翌日もちゃんぽんを食べるというのは利に適っていると言えるのかも?

<皿うどん>
ちゃんぽんに比べ、食卓に並ぶ機会が多いのが皿うどん。製麺所などで生麺を購入し、細麺を揚げる。揚げた麺を用意しておいた新聞紙にのせそれを利用しながら形を整えて皿に盛り、各家庭で異なる、あるいはその日ある材料でアンを作る母お手製の皿うどん。そしてもう一つが出前の皿うどんだ。
他県では大事なお客さんや急な訪問者をもてなすのに、寿司の出前を用いる事が多いようだが、長崎にはもう一つ、出前の皿うどんが奥の手として存在する。これはかなり重宝。
さらに長崎人の楽しみは翌日にも持ち越される。長崎人の大好物!二日目の皿うどんだ。残った皿うどんを油をひいたフライパンで炒める。そう、丁度給食で味わった懐かしい味がするのだ。あえて残してまでも二日目の皿うどんを食す人も多い。


<二日目の皿うどん>

 こだわりの食べ方!

ちゃんぽんには白コショウ
店で出されるちゃんぽんは、出された時点で完成形なので何かをプラスする必要がないのが通常。しかし、あえて好みによって加えるとすれば、辛さを加える白コショウ、つまり洋コショウだろう。各店のテーブルにははじめから備えてあるところもあれば、オーダーによって出すところもある。しかし、まずは出てきたちゃんぽんをお味見あれ! あくまでも好みでプラスするようにしたい。

皿うどんには金蝶ソース
金蝶ソースは長崎生まれのウスターソースで、地元の醤油製造会社が生み出したもの。“醤油っぽいソース”というのが特徴で、醤油で味を整えている皿うどんにピッタリマッチする。店によっては“酢”も置いているところがあるが、これはどうも長年観光客からの要望に応えているうちに定着したものだと言われている。『五目炒麺』…つまり『五目焼そば』に関東や関西では酢をかけて食べる習慣があるからだ。しかし、長崎の皿うどんには金蝶ソース。しかも飽きてきた頃にかけて二つの味を楽しむというのが本来長崎流の食べ方だ。




そぼろちゃんぽん&皿うどんって何?
中華料理店のメニューにそぼろちゃんぽん&皿うどんなるものを発見して「そぼろが入ってる?」と誤解した人も多いことだろう。実は店によって名称は様々で、そぼろとは特製、特上と同じ意味合いで使われている。一般に具材が増え、また大振りになるのが特徴。店によっては麺が増量するところもあるので確認してオーダーしよう。



食べ方は“もやい”がオススメ!

ちゃんぽん、皿うどんは栄養の面でもボリュームの面でも完全食。長崎の人が昼食に選ぶのは大方の人がちゃんぽん、皿うどんで事足りるからだ。だけど、中華料理店で味わおうとする観光客には他の長崎中華を味わってほしいという願望から、二人以上で食事をするなら“もやい(いくつかの料理を頼んで箸を突きあって食べる)”をオススメしたい。そぼろ(特製・特上)ちゃんぽんや皿うどんになると量が増す場合もあるので、店員さんによく訊ねて上手なオーダーの仕方をしよう。



隣国を直撃!ちゃんぽんは韓国にも存在していた?

なんと驚きの事実が発覚。隣国である韓国に、発音も意味も日本と同様の“ちゃんぽん”が実在していたのだ。今回この韓国のちゃんぽんについて、長崎県の国際課国際交流員の姜因修(かんいんず)さんに話をうかがった。
姜さん「発音も意味も同様なら“安くて美味しくてボリューム満点!”というのも同じ、いたって庶民的なちゃんぽんは、韓国の中国料理店で約300〜500円で食べられるのでもっぱら学生の食事です。自宅用はインスタント(乾麺)やカップ麺。日本のカップラーメンと同じようなモノなんですよ」。確かに共通点は多い!



<韓国のちゃんぽん>

 



<姜さん>

姜さん「麺の太さは長崎のちゃんぽん麺と同じくらいですが縮れていてモチモチしています」。唐灰汁が入っているかは不明だとか。
姜さん「具はイカ、エビ、ムール貝、アサリなど魚介がメイン。他にはタマネギ、ニンジンなどの野菜です。キャベツは店によって入る所もありますが、豚肉もかまぼこ(はんぺん)もモヤシも絶対に入りません」。つまり、韓国ちゃんぽん=海鮮ちゃんぽんだという。
姜さん「最大の違いはスープですね。まず、見た目でわかるように唐辛子が大量に入っていて辛いんです。スープのベースは魚介類から出たものだけですごくあっさりしているんですよ」。では、長崎ちゃんぽんを食べてどんな印象を受けたのだろう?
姜さん「最初は豚の臭みを強く感じましたし、スープの濃厚さに戸惑いました。でもとんこつラーメンを好きになってからは違和感がなくなりました。今では中華街のちゃんぽんはほとんど食べましたよ」。では、皿うどんは?
姜さん「皿うどん(細麺)は最初、お菓子のように感じました。今では香ばしくて好きです」。
長崎に滞在して約2年半の姜さん。長崎ちゃんぽんと皿うどん、どっちが好きですか?の問いに……。
姜さん「それは日によって違いますね(笑)」としっかり長崎人の感覚になっておられた。



check!長崎ちゃんぽんのルーツ、ここにあり

グラバー園や大浦天主堂がある南山手を観光する際にぜひ立ち寄って欲しいのが大浦天主堂下電停近くにある長崎ちゃんぽんの元祖・四海楼の2階に併設された四海楼ちゃんぽんミュージアム。長崎ちゃんぽんのルーツを数々の資料や写真によって紹介すると共に、かつて使われていたちゃんぽんの器など興味深い展示物を鑑賞することができる。
入場無料。9:00〜20:00。月1回不定休。
問合せは 四海楼TEL095-822-1296

 

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【食べ手サイドのこだわり】