● 作り手サイドのこだわり
 
まずはスープ!
長崎ちゃんぽんスープはトンコツ鶏ガラのブレンドが主流だが、なかにはトンコツのみ、または鶏ガラのみにこだわりを持った店も多い。トンコツはこってり感を、鶏ガラはコクを出すのがそれぞれの特徴らしい。ブレンドの場合、口に含んだ際にパッとトンコツの風味が広がり、しだいに鶏ガラの味、コクに変わる。
今回取材に協力頂いた京華園では最低5〜6時間煮込むのが通常。トンコツや鶏ガラは、しだいに臭みが出てくるのでつぎたすことはなく、必ずゼロにしてから新しいスープ作りに入るそうだ。スープ作りは仕込み時間から閉店までエンドレス。常に作り立てのスープが使用されているのだ。

ちょっと余談●醤油ちゃんぽんの存在
他県では醤油ちゃんぽんなるものが存在するそうだが、長崎っ子には考えられない、もしくは受け入れたくないというのが実状。醤油ちゃんぽんは長崎ちゃんぽんではないのである。しかしながら近頃長崎でもみそちゃんぽんやカレーちゃんぽん、昆布だしをブレンドしたスープ使用の店などが出現!長崎ちゃんぽんも変化が求められているのか?


そして具材!

一般的にちゃんぽん&皿うどんには同じ具材が入る。必ず欠かせないのがキャベツネギモヤシといった野菜類にイカエビ、そして豚肉と長崎特有のはんぺん(紅白かまぼこ)、そして季節ごとに変わるアサリ(夏場)、カキ(冬場)といった貝類だ。アサリ、カキで味わいが大きく変わる。季節ごとに違う味わいができるというのもちゃんぽん&皿うどんの魅力なのだ。





ちょっと余談●トッピングの存在

具材とは別にちゃんぽんの上にトッピングされているものもある。その代表格は生たまご。好き嫌いもあるだろうが、好きな人は麺と野菜を食べた後にスープに溶かして食べるとまた違う味が楽しめるという。その他に錦糸卵、フカヒレなど様々。中にはとんかつがのった変わりちゃんぽんまで出現。定番あり、アイデアあり、まだまだ想像もしないようなものがトッピングされる日がくるかもしれない。



決め手の麺!

長崎のちゃんぽん麺は独特の麺で、小麦粉に唐灰汁(とうあく:炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)を配合した、唐灰汁麺なのだ。昭和初期に上海から伝わった麺作りに欠かせないこの唐灰汁は薬品のため、これを作るには許可が必要。現在この営業許可を持って唐灰汁を製作している人は長崎市内の製麺所にわずか4人しかいない。
さて、この唐灰汁麺の魅力はというと、一番に独特の風味を持った味わいがあるということ。そして消化を助けてくれ、さらには食欲を増進してくれる。また防腐、殺菌の作用もあるらしい。餃子やワンタンの皮や饅頭の原料にもなっているということも知られざる事実。端午の節句に戴く長崎特有のちまきにもこの唐灰汁がたっぷり入っている。

ちょっと余談●麺あれこれ
製麺所によって麺の味わいが異なってくるのは当然。特に皿うどんの細麺はハッキリとその違いが見てとれる。長崎市内ではおよそ3段階の太さの麺が流通しているようだ。普通の細麺を基準に、極細麺、そして細麺の中の太麺。作り手が自分の店のアンと相性がいい麺を選別しているので、そのままそれがその店の特徴となっていると言えるだろう。


 こだわりの作り方!

ここでは、ちゃんぽんの作り方を紹介しよう。


具材はすべて事前に用意。

同時にスピーディーに仕上げるため、また野菜をシャッキリ仕上げるために隣にスープを沸かしておく。

 中華鍋にラードを入れ野菜・豚肉を炒める(ラードを使用することで一層コクが出る)。

ここでスープを入れ醤油で味を整える。

鍋の中心に野菜を集め、奥に魚介、手前に麺を入れ、麺をときほぐしながら同時にスープを含ませる。


丼ぶりに麺、野菜をとり、もう一度スープの味をみてから、他の具材を入れる。

出来上がり。所要時間2分弱


<出来上がり>

スープ、具、麺を短時間ではあるが一つの鍋で炊き込むので具から出る旨味がスープに溶け込み、そしてその旨味スープを麺が吸収するというわけだ。
皿うどんの場合は一部違ってくるが、一つの鍋で炊く調理法は同様だ。

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ちょっと余談●かた焼そばの存在

観光客の方は皿うどんよりもかた焼そばの方に馴染みがある人が多いことだろう。かた焼きそばは中国で『什錦炸麺(スーチンツミェン)』と呼ばれるもので、形状は皿うどんと似ているが、麺、具材、味付けなどは全く違うものだということを認識しておこう。



取材協力/中国名菜 京華園(ちゅうごくめいさい きょうかえん)TEL095-821-1507




製麺所を直撃!唐灰汁入りのちゃんぽん麺の旨さの秘密

「小麦、唐灰汁それぞれの善し悪しと配合、これが三拍子揃っていい麺ができる」と語る4代目の劉さん。特に小麦粉の出来不出来が如実に現われるという。ちゃんぽん麺が黄色なのは、唐灰汁が入っているからと誤解されがちだが、実はこの黄色は小麦本来の色。小麦粉が白いのは漂泊されているからで本来は黄色なのだ。こちらの製麺所では北海道産、こちら専用に作っているものを使用。劉さんは入荷した小麦の特徴を即座に判断、入荷の都度出来上がった麺の試食をして、いい小麦が入った日には専用ボードに書かれた日付けの上に丸をつけている。最上の時には二重丸がつくことも。
では、この小麦と同様に大切な唐灰汁はというと、劉さんは唐灰汁を作る免許を持っている貴重な1人で、唐灰汁の卸業者でもある。
「五島などにも船便で送ります。自転車で配達するなど学生の頃から手伝っていましたね。」
唐灰汁を作り、製麺所や饅頭屋、中華料理店などに販売しているのだ。


中国で北京より南方の料理でよく使用される唐灰汁。製麺所に程近い一角が唐灰汁専門の工場になっていた。
「麺作りの合間を縫って唐灰汁を作る……休む間もないですね(笑)。季節や天候、その時の湿度によって唐灰汁作りは作業時間や工程が、麺作りは配合が変わってきます。きちんと計ることはないですね。それはもう長年の勘というか…体に染付いているものなんです。」
ちゃんぽん麺と皿うどん麺の工程は多少違ってくる。各中華料理店へ配達するのは生麺。板の上で裏返しにして余分な水分を飛ばし程よく乾燥させてから配達。
あとは、各店がどんなスープ、具材と出会わせてくれるのか……いずれにしても唐灰汁の利いたちゃんぽん麺は存在感ある個性が強いもの。甘味、旨味、独特の風味が、各店のスープやアンの個性と相まって口の中で大きく花開くのだ。ぜひとも一口ごとにその麺の味わいを噛みしめながらご堪能ください。



<劉さん>


<唐灰汁専門の工場>


取材協力/瑞泰号(ずいたいごう)製麺所 TEL095-822-3649







check!今どきの長崎ちゃんぽん&皿うどん

自宅で気軽に冷凍ちゃんぽん
中国料理店がプロデュースする名店の味や、製麺所が作る独自の味、そしてこれを専門に研究販売する業者と、続々登場する冷凍ちゃんぽん&皿うどん。生麺、スープ、具材が全て揃った優れものだからとにかく手軽に本格的なちゃんぽん&皿うどんが楽しめると人気なのだ。インスタントラーメンを作る要領で、健康的でおいしいちゃんぽん&皿うどんが楽しめる。今、お土産品としても人気が高まる逸品だ



野菜に豚肉、魚介たっぷり具だくさん。具材はもちろん、唐灰汁入りの麺にも栄養があり、ちゃんぽん&皿うどんが体に優しい食べ物だということがわかった。
それでは長崎の人はちゃんぽん&皿うどんをどんな時に食べることが多いのだろうか?


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【長崎ちゃんぽん・皿うどん】
【作り手サイドのこだわり】
【食べ手サイドのこだわり】