5.旧グラバー住宅〜長崎伝統芸能館
●クライマックスを飾る美しい邸宅●

俯瞰で見ると屋根が四葉のクローバーの形をする旧グラバー住宅は、日本最古の木造洋風建築で国指定の重要文化財。
グラバーの住居は各所を転々としたが、長崎港を一望できるこの地に文久3年(1863)、接客用サロンを主とした主屋を建設。
のちに住まいの本拠をここに移し、日本人妻ツルを迎え…子をなし…その間模様替えや増築を重ね、現在の姿になったのは明治の中頃らしい。
複雑な凸字形の平面計画となっている極めて特異なスタイル。
施工は天草の職人、小山秀之進であったといわれる。

旧グラバー住宅前の円形の花壇は四季を通じて色とりどりの花々が楽しめ、旧グラバー住宅の象徴的景観を作り出している。
やはり見どころは春のチューリップだろう。

邸内にはグラバー愛用の中折れ帽、ステッキ、倉場富三郎の表札、グラバーファミリーの写真などが数多く展示されている。


グラバー園の収蔵内容をタッチパネル式で検索できる便利システムもあり。



グラバーによって日本に初めてもたらされた東南アジア原産の洋ラン「シンビジューム・トラシアナム」など、主にカラフルなランが咲き誇る欧風の温室。
この温室はグラバーの趣味で、建築当初からこの場所にあったようだ。
数少ないグラバーの肖像写真の傍らにはいつも植物が見られる。







この温室の側にはグラバーの胸像が彼の功績をたたえ建てられているが、残された肖像写真よりはやや若い風貌。



そしてこの胸像の前にはグラバー邸を建てた時にグラバーと親交があった薩摩藩主、島津公から贈られたという300年の樹齢を誇るソテツがそびえ立っている。

ソテツが出たところで松の話もしておこう。
この辺りには海の近くということもあってか、昔松の木が多く植えられていた。

現在の松が枝は昔下り松と呼ばれ、海に垂れ下がるような松があったのでは?と言われているし、町名ではないが南山手のもっと高台には現在も人々に親しまれている地名・二本松がある。
そしてグラバー邸にも1本の松があり、一本松邸と呼ばれていたという。
海に面した場所にいくつかの松があり、人々はその松をランドマーク的に意識していたんじゃないだろうか?と推測される。
現在は残念ながらその一本松はない。

キリンビールの前身会社の「ジャパン・ブルワリ・カンパニー」創始者であるグラバー。
キリンビールの麒麟(想像上の動物)ラベルのモチーフになっているのが温室の側に座っている狛犬(一見したところ崇福寺などにある中国の狛犬のようだ)なんだとか。
ヒゲはもちろん、グラバーのヒゲがモデル。



旧グラバー住宅の中で最も興味深いのは、幕末の志士らをかくまったと思われる天井裏の隠し部屋
ツル夫人の部屋横の廊下天井上につくられていて「夫人部屋近くにまさか」と予想しえない作戦のようだ。
中は二間続きでふすまと畳があり窓は取り付けられていない。
下から眺めるだけなのがちょっと残念!

客用寝室では等身大の坂本龍馬と記念撮影をどうぞ。

新たに公開するようになった場所がある。
厨房奥にある馬小屋お茶煎り場天然貯蔵庫だ。
ここはグラバー一家の生活風景がより一層イメージできるポイント。


園内でもやはり旧グラバー住宅からの眺めはことさら美しい。
あらゆる角度から写真を撮る人で賑わうのも旧グラバー住宅前が一番多いようだ。





そんな旧グラバー住宅を後に坂段を下りて行くと、長崎港を間近に見渡せる展望所がある。
ここからの眺めはこんな感じ。
記念撮影スポットとしてどうぞ。





順路に戻って日本庭園前を通り長崎伝統芸能館へ。

グラバー園の出口にあるこちらでは、長崎の氏神様である諏訪神社の秋の大祭、長崎くんちのビデオ上映(約10分)、奉納する神輿など豪華絢爛な出物を展示している。
長崎くんちは民俗の遺産として国の重要無形民俗文化財に指定されている盛大で華麗な祭り。
特に常時上映されているビデオは異国情緒とダイナミズムを盛り込んだ魅力満点のものだ。





長崎伝統芸能館出口には、グラバー園関連の土産物を販売するショップがある。
そこでグラバーグッズを発見!
スコットランド出身のグラバーにちなみタータンチェックのハンカチなどお土産にどうぞ。


平成14年から車椅子専用通路も開設され、一層多くの人に開放された空間となったグラバー園。
車椅子専用入口は出口側、モノレールから。


Check!●どこに何ケ所ある? 幸せになれるハートストーン


グラバー園内には石だたみの中に埋め込まれたハート型の石、噂のハートストーンがある。
「カップルでこの石に手を重ねると幸せになれる」「この石に触れて願いごとをすれば恋がかなう!」などいずれも恋愛に関する伝説を持ち、訪れる多くの人々にも浸透してきた。
探し出すのも御利益へとつながる一歩、と?案内版などを出していないが、ひとつは旧グラバー住宅前にある。
園内にはこの場所を含め2ケ所ハートストーンがあるので、がんばって探してみよう。


旧グラバー住宅前

ヒント!もうひとつはもっと大きいよ

最後に園長さんの一言アドバイス!●2時間あれば最高の散策に!

三菱第2ドックハウスからの景観はやはりオススメですね。
途中動く歩道を降りた所のベンチで東山手など、周辺の景色を眺めるのもいい。
それから園内に入場して最初にグラバーの人物像、足跡を解説している場所なので、旧地方裁判所長官舎へは絶対足を運んで頂きたいです。
居留地時代の歴史を学びながらグラバー園を散策する、できれば2時間ぐらいかけて歩いて欲しいと思っています。
夏から秋にかけては夜間開園し、各洋館をライトアップしています。
また、現在三菱重工業長崎造船所で建造中の世界最大級の豪華客船「ダイヤモンドプリンセス」のライトアップが見えますよ。
夜のグラバー園もいいものですよ。



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【1.入口〜旧三菱第2ドックハウス
【2.歴史の泉〜祈りの泉

【3.旧リンガー住宅〜旧スチイル記念学校】
【4.三浦環像〜旧自由亭】
【5.旧グラバー住宅〜長崎伝統芸能館】


||[周辺地区地図]||