3.旧リンガー住宅〜旧スチイル記念学校
●居留地時代の生活をちょっと覗き見●

祈りの泉から坂段を下ると左手に旧リンガー住宅が見えてくるが、邸宅へ回り込む前に傍らに立つ石柱が目に入ってくる。
これは現在の松が枝町にあった、フリーメイソン・ロッジ(支部)出入口の石柱。
フリーメイソンとは中世期に一定の組合に属さず自由に仕事の契約を結んで歩いたメイソン(石工)を指したもので、のちにそれら熟練石工の組合を母体に相互扶助、博愛、平等などを主義とする政治的で宗教的な一面を持つものへ変化した英国を発祥とした組織のこと。
柱頭の彫刻はフリーメイソンのシンボルで、コンパスと定規を組み合わせたもの。





では旧リンガー住宅へ。
旧リンガー住宅、旧オルト住宅、旧グラバー住宅の3ケ所では、それぞれの邸宅や人物に関してのクイズを出題!
クイズラリーを行なっているのでぜひチャレンジしてみよう。
(用紙の提出は出口・長崎伝統芸能館で)

英商フレデリック・リンガーの遺邸である旧リンガ−住宅は外壁石造りの木造住宅としては日本でも例の少ない建物。
前面に角石の列柱吹き放ちベランダを置き、その天井も例の少ない格子天井。
重厚、優雅な南欧風バンガロー形式の建物として明治初期洋風建築の貴重な遺構だ。

眺めも最高!

森林や花など清々しい「香りの演出」がされた邸宅内へ入ると、約100年前に作られたオルゴールがあり、現存する7枚のオルゴールディスクの内5枚をデジタルデータ化して再生できるようになっている。
ぜひリクエストして往時の雰囲気を味わってみよう。





また、リンガー氏が洗面器として使用していた有田焼大鉢など興味深い遺品も数多く展示されている。



さて、旧リンガー住宅からさらに奥へ進むと広大な敷地にさらなる大豪邸が建っている。
幕末明治期洋館遺構の中でも堂々とした偉容を放つこの旧オルト住宅は、大浦天主堂やこれから向かう旧グラバー住宅を手掛けた天草出身の職人・小山秀之進が施工したものと言われている。

高い天井を支えているタスカン様式の石造円柱(天草の石を使用)が特に印象的だ。
玄関口にある噴水は何となく現代のリゾートホテルをイメージさせる。

前面ベランダ中央の切妻屋根のポーチ横には、日本最古で最大級の木香バラのツルがよく茂っている。
4月下旬から5月にかけてが開花シーズンだとか。

邸内の展示品は約100点。
往時の外国人の生活を知る上で貴重な資料が見られる。
特に奥にある別棟の厨房、貯蔵庫などは生活感が感じられる代物。



旧オルト住宅前に咲く幾種類ものバラを楽しみながら民家と隣接する奥まった場所へ。

この薄ピンク色の洋館は旧スチイル記念学校
明治20年(1887)、亡き愛児を記念し、アメリカ人であるスチイル博士が寄贈した資金により東山手9番地に開設された東山学院の本館。

後に海星学園高校寄宿舎に使用された。
現在はグラバー家関係の貴重な写真や、まだ洋館が建ち並んでいた時代の居留地地区の写真などを展示した資料館。
ここで約15分間のグラバー園早分かりビデオを見ることができる。





グラバーの子息・倉場富三郎が個人的に製作した『グラバー魚類図譜』
旧グラバー住宅の一室をアトリエに、長崎港で獲れた活きのいい魚を画家に描かせ完成したその魚類図譜805枚の内一部が展示されている。
魚は原色、原寸大、まるで生きているかのように鮮やかな表情を持つ。
ラテン語の学名、平仮名またはカタカナの和名と方言名……トミー・グラバーこと倉場富三郎渾身の力作だ。

また2階には、明治時代から長崎を描いてきた版画家・田川憲氏の版画を展示した版画展示室も設けられている。
洋館が立ち並ぶ居留地時代の南山手・東山手の町並みや港の風景が、現存する建物と一緒に描かれているものもあり、ここはタイムスリップして往時の長崎を空想できる空間になっている。
こちらも注目!

 

ヒューマンCheck!●リンガーさんってどんな人?


フレデリック・リンガー氏は英国ノーフォークの出身。来崎後グラバー商会に勤めていたが、明治元年(1868 )に、英人ホーム氏と共にホーム・リンガー商会を設立。
外国貿易・商社代理店・製茶・製粉・発電などの企業に至る幅広い活動をした人物。
彼が明治31年(1898)、大浦海岸通り(旧香港上海銀行長崎支店横)に建設した「ナガサキ・ホテル」は、当時アジアの一流ホテルとして名を馳せた。

ヒューマンCheck!●オルトさんってどんな人?


英国アイルランド出身のウィリアム・ジョン・オルトは、開国するといち早く長崎に来てオルト商会を設立。
長崎の有力商人の娘・大浦慶と提携して九州一円から生茶を買い求め輸出。
製茶業で巨額の利益を得た貿易商。


〈3/5頁〉
【1.入口〜旧三菱第2ドックハウス
【2.歴史の泉〜祈りの泉

【3.旧リンガー住宅〜旧スチイル記念学校】
【4.三浦環像〜旧自由亭】
【5.旧グラバー住宅〜長崎伝統芸能館】


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