文・宮川密義


“別れ歌”や“思い出の歌”に続いて、今回はタイトルや歌詞に「出会い」や「再会」を取り入れた歌を選んでみました。
 
 
1.「出会いの歌」
(平成13年=2001、海人・作詞、作曲、歌 )


海人(うみんちゅ)は長崎出身のデュオ。幼なじみの井ノ上竜也と山中真一(当時18歳)が出会い、平成11年から長崎でストリートライブを開始。その様子がテレビで紹介されて人気が集まり、平成13年にインディーズCD「中央橋」を出しました。この歌はその1曲です。
2人は幼稚園の時の幼なじみで、中学校で再会、意気投合してバンドを組みました。高校は別になりましたが、新たな活動として長崎市内でストリートライブを始めたわけです。この歌は、出会った2人が二人三脚で新しい世界へ向かって疾走する、まばゆいばかりの青春の物語です。
CD「中央橋」には、出会った瞬間の奇跡を忘れることは決してない…と歌う「バス待ち」や、もしもあなたが雨にぬれて立ち止まっても守ってあげたい 傘になりたい…と歌う「あなたの傘」など5曲が収録されています。
海人はこの後、活動の拠点を東京に移し、グループ名も「freewayhigh2(フリーウェイ・ハイハイ)」に変えて、平成16年「雨オトコ晴オンナ〜オランダ坂で君を待って」でメジャーデビューを果たしました。
この歌も、長崎の町で出会った若いカップルが市内の名所を巡るうちに愛が芽生えるという、ほほえましい風景を歌っており、みずみずしい歌声で話題になっています。


海人の2人(CD表紙から)



2.「再会の街長崎」
(平成20年=2008、礼 恭司・作詞、森川 龍・作曲、五島 開・歌)



「再会の街 長崎」も入ったCD表紙

天主堂と港の見える風景

再会といっても、この歌は“二度と元に戻れない状態の、悲しげな束の間の再会”を、オランダ坂、眼鏡橋…と長崎情緒を織り込みながら、悲しげに歌います。
歌う五島開(ごとう・かい)は五島市富江町生まれ。小学2年で長崎市に転居。海星高校を出て上京。歌を勉強して平成4年に「現川(うつつがわ)」を発表。60歳の平成20年、この「再会の街 長崎」と「東京の酒はひとりぼっち」で遅咲きの再デビューとなりました。
「東京の酒はひとりぼっち」も、昔付き合っていた女性に何もしてやれなかった後悔を抱き続けた男の歌で、しみじみとした男の哀愁を聴かせる1曲です。

 

3.「何年ぶりかでやって来た」 
(昭和31年=1956、池田 功・作詞、三界 稔・作曲、中島 孝・歌)



中島孝のCDアルバムの表紙


東山手のオランダ坂風景

ふるさと長崎に久しぶりに帰ってきた男の感慨です。恋人や肉親との再会ではなく、昔のままの石畳、丸山や思案橋、小雨に濡れるオランダ坂など、“心のふるさと”との再会の歌です。
歌った中島孝(なかじま・たかし)は大正15年(1926)長崎市生まれで、本名・中島義孝。戦後まもなく、新宿座ムーラン・ルージュのショーシンガーとして活躍。歌のほか芝居や踊りにも挑戦、北海道や九州などの地方にも巡業していました。
その後、ポリドール・レコードを拠点に歌手活動した後、作曲家・三界稔(みかい・みのる)の仲介で、昭和29年にコロムビア専属となり、デビュー第3弾として出した「若者よ!恋をしろ」が同名の東映映画の主題歌となり、共にヒットしました。
さらに「霧の川中島」「流す涙はうそじゃない」「野武士の合唱」「おきあがり人生」「母恋い三度笠」、ふるさとを歌ったこの「何年ぶりかでやって来た」などのヒットを飛ばしました。

 

4.「長崎ふたたび」
(昭和49年=1974、山上路夫・作詞、鈴木邦彦・作曲、黒田光子・歌)



「長崎ふたたび」のレコード表紙


橋口町の通りから見える浦上天主堂

長崎の街が好きだと言っていた“あの人”との再会を夢見てやってきた長崎。でも風のうわさが頼りの心もとない旅。肩に白いザボンの花びらが散る〜という寂しい歌です。
歌った黒田光子(くろだ・みつこ)は大分県日田市出身。青山学院女子短大の英文科に学び、通訳を目指したものの中退。東京、大阪でクラブ・シンガーとして働いた後、カンツォーネ・コンクールに出て優勝。そのコンクールの審査員を務めた山上・鈴木コンビの演歌でデビューを果たしました。
同年11月に長崎でキャンペーンをしていましたが、この年の4月に出たグレープの「精霊流し」が大ヒット、8月15日の精霊流しには見物の観光客が押し寄せるなど“グレープ人気”に押され、他の歌手の歌と共に影が薄れ、この歌も不発に終わりました。

 

5.「おまえの長崎」
(平成18年=2006、坂口照幸・作詞、弦 哲也・作曲、三田りょう・歌)



「おまえの長崎」もカップリングしたCD


浜平町の高台から見下ろした昼下がりの長崎港

眼下に広がる長崎港の青い海、そして夜のとばりの向こうに潤む港の灯り。花の代わりに酒を手向けて静かに語りかける一人の男…浦上の丘に眠る元恋人との再会のシーンです。
ところで、この歌にあるような “眼下に長崎港を見下ろす浦上の丘”は「長崎浦上街道ここに始まる」の石碑が建つ西坂の丘、さらにその上の浜平町の高台あたりでしょうか。
歌う三田りょうは本名・岡睦夫。東京都出身で、作曲家・弦哲也に師事して、昭和62年(1987)に瀬川きよしの芸名でデビューした後、平成12年に三田りょうの名で出した「哀愁フェリー」がヒットして日本有線大賞有線音楽賞を受賞、コブシの効いたぬくもりのある声と爽やかなルックスで人気急上昇中です。
「おまえの長崎」は2回目の日本有線大賞有線音楽賞受賞曲「佐渡航路」のカップリング曲です。

 

6.「君が帰ってくる」
(平成4年=1992、さだまさし・作詞、作曲、歌)

シングルCDの表紙




ふるさと長崎をこよなく愛し、出会いや別れを通じて喜びや悲しみ、そして愛を歌うさだまさし。この歌は、長崎に帰ってくる恋人への変わらぬ愛を確かめながら、再会に胸を躍らせる若者を歌っています。
旅に出た弟を案じる「案山子」(昭和52年)や「君の手荷物は小さな包みがふたつ/少し猫背に列車のタラップを降りて来る…」に始まる「驛舎(えき)」(同56年)、テレビドラマ「おゆう」の主題歌「望郷」(同62年)を思い起こさせる叙情豊かな作品です。
「君が帰ってくる」を出した平成4年には雲仙・普賢岳被災地チャリティーソング「SMILE AGAIN」のほか、「早春賦(そうしゅんふ)」「花」「赤とんぼ」「里の秋」など童謡・唱歌14曲を歌ったアルバム「にっぽん」も出しています。




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