第23回　おもちゃコンサルタントマスター　�睫邱�恵さん
今回は、ＮＰＯ法人 日本グッド・トイ委員会認定“おもちゃコンサルタントマスター”の�睫遒気鵑墨辰鮖任辰拭��睫遒気鵑�代表を務めるボランティア団体「トムテのおもちゃ箱」では、おもちゃの貸し出しやアドバイスを行っているほか、親子で一緒に遊ぶ「おもちゃのひろば」を県内各地域で実施するなど、様々な活動をしている。現在、小学５年生と１年生の二児の母。

おもちゃコンサルタントの資格を取得しようと思ったきっかけを教えてください。

�睫遒気鵝峪勸蕕討垢訝罎如∋笋�これなら気に入るだろうと思って与えたものに子どもが興味を示さなかったり、逆にどうしてこんなものがというものに夢中になったり…ということがありました。私はおもちゃの魅力に気付いていないんじゃないかと思ったんです。それに、子どもと一緒にいて楽しめる方法を身につけた方が楽だなとも考えました。そんなとき、たまたまおもちゃコンサルタントのチラシに出会いました。子どもが１歳くらいになると、生活にリズムができるので、自分にも時間が生まれます。その時間を使って自分も何かしようと思いました。最初から仕事にしようという気持ちではなく、子どもと向き合う中で、興味を持ったのがはじまりでしたね。」

仕事として活動するようになったのは、どうしてですか？

�睫�さん「資格を取得しても、しばらくは全く活かしていなかったのですが、駿ちゃん事件が起こったとき、息子が同じ年だったこともあり、深く考えさせられるものがありました。そのとき思ったんです。自分の子どものことだけを考えて、自分の子どもだけを幸せにすることはできないなって。子どもに一生懸命関わったとしても、巻き込まれることはあります。そうならないためにも、よりよい地域を作っていくことが最終的に自分に返ってくる。子どもが出ていくときに、安心して送り出せるような土壌、地域を作ることが大切だと思いました。そのために自分ができることは、持っている知識を伝えていくことだと気付いたんです。 」


今どんな活動をされていますか？

�睫�さん「『トムテのおもちゃ箱』には、それぞれの地域の子育てサークルの責任者の方が登録していて、おままごとキットやお人形セットをはじめ、だいたい4種類のおもちゃキットの貸し出しをしています。最近は２ヶ月に１度くらい、責任者の方に集まってもらって、１つのおもちゃについて考える時間を設けたり、おもちゃを一緒に手作りして、各サークルに持ち帰ってもらい、地域で広げてもらうという活動をしています。おもちゃの貸し出しの条件は、この隔月のミーティングへの参加、簡単な報告書の提出、おもちゃレンタル料の負担の3つです。 おもちゃはどれだけ借りても１回2000円。ただ1500円は活動助成金としてお返ししますので、実質は500円です。お貸しする条件は公民館やふれあいセンターなど、公共の場所を借りてもらうこと。ご自宅は貸出の対象になりません。そのため場所を借りて人を集めて…ということを面倒に思う方もたくさんいらっしゃいます。でも自分たちで動いて、自分たちがいま欲しいものを自分たちの手で作ろうとする中に喜びってあると思うんです。少しずつでも積極的に関わってくれるお母さんたちが増えてくれると嬉しいですね。 」

�睫遒気鵑痢屬�もちゃ」についての考えを聞かせてください。

�睫�さん「残念ながら、日本でのおもちゃの評価はとても低いです。私は子どもの心に栄養を与えるものは、絵本とおもちゃだと考えています。日本は絵本文化が発達していることもあって、絵本の評価は高いんです。与えすぎても問題ない、読んであげれば、読んであげるほどいいと思われている。でも、おもちゃは与えすぎるとわがままな子になる、辛抱がなくなるというイメージなんです。しかし海外では、おもちゃは文化や芸術の一部という認識なんですよ。
有名な童具作家の和久洋三さんが著書の中でおもちゃを「主食」と「おやつ」という表現でわかりやすく説明されています。私はそれを「ごはんタイプ」と「おやつタイプ」と言い換えてお伝えしています。おやつタイプというのは、ゲームやキャラクターもの、DVDなどです。これはインパクトが強い分、子どもの反応がいいんですが、遊び方が限定されているので、子ども自身が工夫しながら、遊びを膨らませることができません。それに、おもちゃの方がおもてなしをしてくれるから、本人が努力しなくてもラクラク楽しめるんです。
一方、積み木やボールなどのごはんタイプのおもちゃは、子どもが積極的に関わることで楽しみを引き出すことができます。ごはんタイプのものでしっかり遊ぶことは、心に栄養を与えることなんですね。
おもちゃと食事は同じです。食事は栄養についての知識があるから、子どもがいくらおやつが好きでも、そればかりを与えませんよね。でも、子どもの心に栄養を与えているかというと、実はおやつばかりを与えていたという状況になりがちです。栄養を与えないと体が育たないように、心も栄養を与えて育てることが必要です。その栄養を与えてくれるものが、ごはんタイプのおもちゃなんです。ゲームは絶対にダメだというわけではなく、それはおやつなんだと認識して、ごはんの邪魔にならないようにすることが大切ですね。 」

�睫遒気鵑里桓�宅には、ごはんタイプのおもちゃがたくさん。
「子どもの子どもにも使ってほしい」という言葉に、おもちゃは受け継いでいくものだという温かな価値観を感じた。

県内各地域で開催している「おもちゃひろば」では、ごはんタイプのおもちゃを使って、親子で楽しんでいるんですね。

�睫�さん「おもちゃは親子や友だち…人と人をつなぐツールだと思います。よく「このおもちゃは何に役立つんですか」と聞かれることがあります。お母さんとしては、遊びながら数字や文字を覚えさせたい、遊びながら知識を伸ばしたいという思いがあるようなんです。しかし「おもちゃひろば」の目的は、小さい子であれば親子間の信頼関係を築くことにあります。それが年齢とともに、友だち同士の信頼関係へと発展していきます。信頼関係を築くためには、コミュニケーションをしっかりとらなければならない。そのコミュニケーションを促してくれるものが、いいおもちゃの条件の一つだと思います。「おもちゃひろば」は、子どもだけではなく、親子での参加が基本です。私たちは「楽しかったね」「おもしろかったね」と言ってもらえるような空間を作るのが仕事だと思っています。」

今のお母さんたちに伝えたことは何ですか？

�睫�さん「私は、子育てを消極的に捉えている方が多いように感じています。子どもが生まれると、例えば自由な時間や気ままな生活、お金…そういう失ったものに目がいきがちです。でも、やっぱり子どもがいるからこそ楽しめることって多いと思うんです。近所の公園が子どもがいることによって素敵な場所になったり、独身の頃は素通りしていた七夕やお月見を楽しんだり…。自分自身が子育てをポジティブに楽しもうと思わない限り、ストレスからは逃れられません。例えば、いいおもちゃで子どもが楽しそうに遊びますよね。子どもが生き生きと目を輝かせていたら「あぁよかった、今日は楽しかった」と思えます。そういうふうに私たちの活動が子育て自体を楽しめるきっかけになればいいと思いますし、「大丈夫よ」と言ってくれる仲間がつながっていけばお母さんたちの負担も軽くなります。子育てを楽しむことで、自分自身が楽になれることを伝えたいですね。」

最後に、長崎の好きなところを教えてください。

�睫�さん「私は岡山県出身で、結婚を機に長崎へ住みはじめましたが、この街が大好きです。長崎は文化が濃いところが素敵ですね。九州の人が必ず地元に戻りたがるというのは、そこだろうなと思います。地域に育まれて大きくなっているという意識があるんでしょうね。
昨年、子どもがくんちに参加させてもらったのですが、こんなに子どもに媚びてない世界がまだあるんだと思って感動しました（笑）。大人の真剣さを見せるって素晴らしいことですよね。地域の中で生まれた文化があって、それにふれて大きくなるというのは、とってもいいと思います。子どもたちにこういう原風景を残してあげたいですね。」

おもちゃへの認識をガラリと変えてくれた�睫遒気鵝�自らも子育てを楽しみ、それを伝えたいという想いにあふれていた。おもちゃで遊ぶことが子どもたちの心を育て、親子の絆を深めるということを１人１人が認識することで、未来は大きく変わるように思う。
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