2003年11月、卓越した技能を持つ技能者を表彰する厚生労働省“現代の名工”を受賞。これまで食文化の分野では数少ない受賞に輝いたのは、なんと市民に馴染みの深い長崎市役所地下1階レストランの坂本シェフ。
今回の「愛すべき、長崎人」は、長崎の食文化を意欲的に研究、発信し続けている料理人、坂本さんに“長崎の魅力”についてうかがった。
その道40年のキャリアを持つ坂本さんは長崎生まれの長崎育ち。修業中もほとんど長崎を離れなかったのだという。長崎を拠点とした食文化の取得、研究、発信。その背景には長崎の食文化の歴史との出会いがあった。
坂本さん「料理人となって15年ぐらいたった時に長崎の食文化の歴史の深さを知る出会いがあったんです。私の実家は矢の平で近くに伊良林町があります。伊良林というと草野丈吉という人が日本で初めて西洋料理店“良林亭(りょうりんてい)”、のちの自由亭を開業した場所です。当時私の店に、おそらく草野丈吉さんのお孫さんにあたる方でしょうか、よく食べに来られていたんです。度々その方の自宅にもお邪魔することがあったのですが、西洋の骨董品が所せましと置かれていたのを覚えています。そこで“そうか、長崎には西洋料理発祥の地という深い歴史があるんだ”と再確認させられ、文献や郷土史家の方の話をもとに当時の自由亭で出されていた料理や出島のオランダ人達が食べていた正月料理などを研究し、再現するようになりました。草野丈吉の存在は、私の料理人としての方向性に強く影響を与えてくれました。」
影響を受け、坂本さんの料理はどのように変化していったんですか?
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坂本さん「それからは近海ものの魚や長崎で収穫された野菜、長崎らしいものを作るために県産品を活用していくことを意識してきましたね。県の農林水産課と私が所属している全日本司厨士協会の長崎支部、長崎県調理師協会とで、“対馬地鶏”など毎年テーマを定め、県産品の活用を県、市民に強く訴えるコンクールや講演会などを長年続けています。この市役所のレストランでもそうです。毎日来られている方々に“食をテーマに訴えかける”。料理は形には残りませんが、食べた人の記憶に残る芸術です。長崎の郷土料理という芸術を多くの人に知ってもらい、食文化で長崎の活性化に役立てれば……と思い、実践しています。」
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長崎市役所庁内レストランの
厨房にて |
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