皆さんは観光名所を訪れた時、当然写真を撮りますよね。
『シャッターチャンス@長崎』では、「長崎の観光名所はこの角度で撮るのがベスト!」という「ベストポジション」をご紹介しています。
また、長崎の街は数々の映画の舞台にもなっています。「あの映画のあのシーンはここで撮影された」という場所を見つけ、時にはその現場の「ベストポジション」もご紹介。
長崎の旅の記念になる最高の一枚を撮るためにぜひぜひお役立てください。


第10回目は、映画『八月の狂詩曲(ラプソディー)』のロケ地、浦上天主堂です。


この作品の原作は芥川賞を受賞した村田喜代子の『鍋の中』。被爆体験のある長崎の老婆と4人の孫達のひと夏のドラマを巨匠・黒澤明監督が映画化し、平成3年(1991)に公開されました。

夏休みに長崎近郊のおばあさんの家に滞在した4人の孫達が、おじいさんは原爆で死亡し、おばあさんも被爆者であることを知り、被爆遺跡などを見学したり、おばあさんの被爆体験を聞いたりして原爆について考えるようになるというストーリーで、広がる青空の中に大きな目玉を登場させるという大胆な映像表現が印象的でした。

出演は村瀬幸子、吉岡秀隆、伊崎充則、井川比佐志、そしてなんとリチャード・ギア。
リチャード・ギアは、ハワイから来るおばさんの甥役として出演しました。
ロケは、浦上天主堂以外にも平和公園、爆心地(原爆落下中心地)、南大浦小学校などで行われました。


浦上天主堂は、キリシタン弾圧の禁制をとかれた信者達によって建設が計画され、明治28年(1895)、フレノ神父の設計による教会建設が開始されましたが、出来上がったのはなんと30年後の大正14年(1925)。東洋一のレンガ造りのロマネスク様式大聖堂で、正面双塔にフランス製のアンジェラスの鐘が備えられた素晴らしいものでした。
しかし、昭和20年(1945)、原爆で建物はすべて破壊されてしまいました。現在の建物は昭和34年(1959)に鉄筋コンクリートで再建されたもので、昭和55年(1980)、レンガタイルで改装、往時の姿に復元されました。原爆の爆風に耐えた右側の鐘楼につるされたアンジェラスの鐘の音が、今も一日3回鳴り響いています。
境内には被災した旧天主堂の遺構が数多く点在しています。
天主堂に向かって左の下に流れている川横には、爆風で吹き飛ばされた双塔(左側の鐘楼)の残骸が現在もそのままの姿で置かれています。被災の際左側につるされていたアンジェラスの鐘は、境内にある典礼センター・ピエタ内に保管展示されています。また、境内には熱線で黒く焼け焦げ、鼻や頭部を欠いた聖人の石像、また外壁や石垣にも天使の像や破壊を免れた像が置かれています。

被爆都市という側面を持つ長崎。市民はもちろん、「長崎を最後の被爆地に」という多くの人々の願いが、この映画には凝縮されています。



爆風で吹き飛ばされた鐘楼の残骸

 

被爆したアンジェラスの鐘

 

破壊を免れた像群





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