皆さんは観光名所を訪れた時、当然写真を撮りますよね。
『シャッターチャンス@長崎』では、「長崎の観光名所はこの角度で撮るのがベスト!」という「ベストポジション」をご紹介しています。
また、長崎の街は数々の映画の舞台にもなっています。「あの映画のあのシーンはここで撮影された」という場所を見つけ、時にはその現場の「ベストポジション」もご紹介。
長崎の旅の記念になる最高の一枚を撮るためにぜひぜひお役立てください。


第9回目は、現在公開中の映画『解夏(げげ)』のロケ地、万寿山 聖福寺です。


この作品は『精霊流し』につぎ、長崎出身の歌手・さだまさしさんが地元長崎を舞台に描いた小説『解夏』の映画化です。
突然、徐々に視力を失っていく原因不明の難病・ベーチェット病で倒れた主人公・隆之。彼は失明するその日まで、生まれ育った長崎の景色を目に焼きつけようと恋人・陽子と二人で坂の町・長崎を歩きはじめます。   
主人公の目に映る最後の夏を背景に、視力を失う恐怖と悲しみ、そしてそれを見守る家族と恋人の痛みが描かれています。

出演は大沢たかお、石田ゆり子、田辺誠一、石野真子、渡辺えり子、林隆三、富司純子、松村達男という豪華顔ぶれ。この映画の多くのシーンが長崎市内の各所で行われました。

それにしても、皆さんは“解夏”という言葉をご存知でしたか?
この聞き慣れない言葉は、劇中で解説されるように、禅宗の教えからくる季節の変わり目、“結夏(けつげ)”にはじまるお坊さんの行の終わりを示す仏教の言葉だそうです。
隆之の心を解きほぐすこの大切な“解夏”という言葉が登場するのが、2人が訪れたこの“聖福寺”です。

万寿山 聖福寺は延宝5年(1677)、隠元禅師の高弟木庵(もくあん)の弟子鉄心(てっしん)によって創建された黄檗宗(おうばくしゅう)のお寺です。境内には黄檗建築の特徴が多くみられ、また文化財も豊富です。大きな木々に覆われ、威厳と静寂に満ちた風情が漂っています。
所在地:長崎市玉園町3-77 TEL.095-823-0282 ●アクセス:JR長崎駅より徒歩15分

この映画『解夏』のロケ地でとっておきの一枚をおさえるべく、いくつかのポイントをご紹介しましょう。



松村達男さん演じる老人が二人に“解夏”について話す座敷は、大雄宝殿(本堂)向かって右横の方丈です。住職さんのお住まいである方丈は残念ながら、自由に入ることはできませんが、映画を見ると、ここからの風景の素晴らしさに感動します。


大雄宝殿

そして、現在は大晦日の除夜の鐘でしかその音色を聞くことができない市指定有形文化財の梵鐘(ぼんしょう)。映画の中で「鉄心の鐘」と呼ばれるように、長崎最大の梵鐘として古くから親しまれてきたものです。


鉄心の鐘

隆之が幼い頃鬼ごっこをして隠れていたのは大雄宝殿左横の鬼塀の裏です。


鬼塀

また、この鬼塀横の石段を上がった場所からの風景は特におすすめです。ぜひ石段をのぼってみてください。これより上には映画に出てくる墓域が広がっています。


大雄宝殿横、石段の上から
市街地を望む

映画『解夏』には、ほかにもオランダ坂、大浦天主堂横の坂道、活水学院、諏訪神社、若宮稲荷神社、興福寺、編笠橋(中島川石橋群)などなど、本当にたくさんの長崎風景が続々登場し、その美しいアングルに心ときめかされます。
「長崎の人は坂をきついなんて言わない。坂があるのが当たり前だから……。その証拠にお母さん、いつも楽しそうに上っている」。確か、そのような陽子のセリフがありました。
確かに長崎の人にとって、坂はいつもそこにある当たり前のもの。険しく厳しいと感じる時もあれば、この坂道を上りつめたら……美しいいつもの景色に巡りあえる。
長崎の人は、そんな優しく包んでくれるような温かさをも、坂道に感じているのかもしれません。
スクリーンに映しだされた美しい長崎風景が、こんなこと、あんなこと……いろんなことを感じさせてくれます。


【もどる】