ハトシ」とは何とも不思議な響きの言葉ですが、卓袱料理の一つとしておなじみの料理です。長崎の家庭では、お正月など人が集まる席には欠かせない料理として昔から親しまれてきました。明治時代に中国から伝えられたのが「蝦多士」で、「蝦吐司」、「蝦和麺包」とも表記されますが、長崎では広東語の発音をまねた「ハトシ」という呼び方で広まりました。

それでは、「ハトシ」というのはどういう料理かというと、中国語「蝦吐司」の文字通り、海老のすり身などを食パンで挟み、油で揚げたものです。(蝦は海老を吐司はトーストという意味) 中に挟むのは、海老以外にも挽肉や魚のすり身など各家庭の好みで違ってきます。パンの厚さも、そのまま食パンを使うところもあれば、サンドイッチ用の薄いパンの方がいいという家庭もあります。パンの耳もそのままなのか、切ってしまうのかとこれもこだわりがあり、簡単なようでなかなか奥の深い料理なのです。


しかし、残念なことに最近では家庭で「ハトシ」を作ることは減ってきました。その代わり、中華料理店のメニューやテイクアウト商品には必ずといっていいほど目にすることができるようになりました。特にテイクアウト商品としては注目されているアイテムです。油で揚げてある料理にしては、揚げる前に蒸すためか、あまりこってりした食感がないのが、今の時代にあっているのかもしれません。小腹が空いたときにはお奨めの一品です。

 「ハトシ」も日々進化し、本来の海老のすり身を使ったもののほか、なんと角煮を挟んだものまで出てきています。卓袱料理のなかの角煮とハトシのコラボレーションですが、長崎ならではの贅沢さだと言えるのではないでしょうか。ハンバーグのように肉だけでなく、将来はいろなんものがハトシの中身になっているかもしれません。目の離せない楽しみな料理です。




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