長崎では、初めての桃の節句にお祝いをいただくと、お返しに「桃カステラ」を送ります。これは、桃の形をしたカステラの上に砂糖で平たく形づくった桃がのっているのですが、ちゃんと葉っぱ(これもお菓子です)もついています。こどもの頃は、なぜかこの葉っぱの部分を先にはずして食べていました。先がほんのりピンク色をしていて、桃の節句のお返しにふさわしい、とても愛らしいものです。



以前は、桃の節句のころだけしか作られていませんでしたし、お祝い返し用の注文製作のみで、1個売りはなかったのですが、最近では、季節に関係なく和菓子屋さんに置いてあります。もちろん1個から買うことができるので、「桃カステラ」愛好家にとっては、とてもうれしいことなのです。また、それぞれのお店で味はもちろんのこと、色や造形が微妙に違うので、お気に入りの「桃カステラ」を見つけるのも楽しいことです。

「桃カステラ」
は、優しげな外見に似合わず、とても甘いお菓子で、意外と苦手という人も多いのです。中には、上の砂糖菓子の部分が好きで、ここだけ剥いで食べるという強者もいますが、反対に砂糖菓子を剥いだ後のカステラのみでいいと言う人もいます。できれば、分解などしないで、砂糖菓子とカステラのしっとりしたハーモニーを堪能していただけたらと思います。

中国では、古くから不老長寿の果実として尊ばれている桃と、南蛮貿易により伝えられたカステラを組み合わせたこの「桃カステラ」は、長崎ならではの贅沢なお菓子といえます。お店によっては、サイズも自由に注文することができますので、大きな「桃カステラ」を作って、桃の節句のお返しに限らず、お祝いの品として差し上げるというのも長崎らしくていいかもしれません。





【もどる】