さて、バードウォッチング中、時間が過ぎていく中で、楽しみ方は人それぞれだというのが分かってきた。すると参加者の皆さんが、愛鳥家になられたきっかけを知りたくなる。野鳥を捉えるには欠かせない、望遠レンズの立派なカメラを携えた浦川恵子さんに話を伺った。


愛鳥家歴5年という浦川さんは、『日本野鳥の会長崎県支部』『長崎県野鳥の会』県内にあるどちらの団体にも所属。野鳥の魅力にハマっておられるお一人だ。もともと、鳥に興味を抱くようになったきっかけはなんだったのだろう。
浦川さん「小さい頃から20年ほど、ジュウシマツを飼っていたんですが、最後の一羽が亡くなった後、心にポッカリ穴が空いてしまったんです。それから1年ぐらいはスズメからはじまって近くにいる鳥に目がいき、いろんな種類がいるのに気づいてそれを眺めていた感じでした」。

それから、インターネットで鳥に関する様々な情報を入手していく中で、日本野鳥の会長崎県支部に出会い、会員さんから長崎県野鳥の会を紹介してもらったという。定期的に行なわれる探鳥会の案内を見て参加するようになられたそうだ。もちろん、個人でも方々へバードウォッチングに出掛けておられる。

浦川さん「皆さんそれぞれ好みがあるんですよね。どういう鳥でも見る!という方もいれば、好みの特定の鳥を追っかけている方もいる。私はきっかけがジュウシマツだったせいか、山野の鳥、特に小さな鳥がタイプなんです。県内だと、諌早市森山の干拓地などがより深く楽しめる地域ですが、長崎市内でも野母崎や川原大池、それから意外に水辺の森公園でも多くの鳥に出会えますよ」。

気がけて見れば、身近な場所でも鳥達は活動しているものなのだ。

浦川さん「身近な鳥を挙げると結構いるんですよ。市街地に多いのはシジュウカラ。あと、ハトにしてもドバト、キジバトなどいろんな種類がいます。たまにアオバトといって、黄緑っぽい色のハトもいますよ。それからよく見るカラスにもハシブトガラス、ハシボソガラスの種類があり、カササギ(カチガラス)やミヤマガラスなど、種類も沢山あるんですよ。とにかく、自分の中では初めて見る鳥を見つけた時は感動します」。

なかでも忘れられない感動エピソードってありますか?

浦川さん「極々初心者の時に、長崎県野鳥の会の方が講師をされた、長崎県自然環境課主催の探鳥会で雲仙の方に行ったんです。普通の鳥を見に行ったつもりだったんですが、そこで、ムラサキサギという珍鳥に出会ってしまって…。その後、そのことを聞きつけた方が見に行かれたそうですが、結局出会えなかった方もいるそうです。バードウォッチングは、天候も含め、常にタイミングなんです。先日もヤツガシラという鳥が来ていると聞いて見に行ったのですが、見ることができませんでした。もう何年も会えないままです」。

そして、渡り鳥、水辺の鳥、山野の鳥、鳥にもいろんな種類があるように、バードウォッチングする側にも様々なタイプの方がいるのだとか。

浦川さん「野鳥の世界では、だいたい〈双眼鏡で見る〉〈写真におさめる〉〈声を楽しむ〉という3種類に分かれるんです。私は写真におさめるタイプですね。日本野鳥の会では、いきものと、その生息環境を共通のテーマにした企画展「いきものつながりアート展」というのを開催していて、昨年の冬は長崎県美術館で企画展が行なわれました。直近では、長崎県野鳥の会の写真展が6月17日から長崎ブリックホールで開催されます」。


ヤツガシラ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 老松 涼一氏

これからの季節、どんな鳥が身近で見られますか?

浦川さん「ヤマガラやホオジロは市街地でも見られますね。あと、今はツバメ類が渡ってきていますし、運がよければキビタキなんかにも会えると思いますよ」。

よく茂った広葉樹林を好み、スィースィー、またはビービーと鼻にかかった声で鳴くヤマガラ。スズメと見間違いがちなホオジロは、茶色のお腹と長めの尾が特徴。林や田畑、河川敷周辺で見かけ、短くチチッ、チチチッ、だったり、細い声で早口にチョッピーチリーチョチーツクなどと鳴く。ツバメの鳴き声は、チュピッや、チュチュビチュチュビジクジクビーと最後が濁る。山地の林を飛来するのは黄色い胸(オス)のキビタキ。 ヒッ、ヒッ、クリリッ、または明るい声でピヨピ、ピッピキピピッピキピなど、短い前奏の跡に早口で繰り返し鳴く。まずは、こんな身近な鳥を見つけて、自分の好みを知るというのもいいかもしれない。


ホオジロ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 伊達木 薫氏


キビタキ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 老松 涼一氏

※ シジュウカラ/白い頬、胸から腹にネクタイ模様(太い方がオス)
※ ドバト/飼われていたハトが野生化。市街地に多く建物に巣を作る。
※ キジバト/翼や背に茶色のうろこ模様、首に縞模様。
※ アオバト/美しい緑色で尺八の音色のような声で鳴く。
※ コクマルガラス/西日本に飛来するハト大のカラス。
※ ハシブトガラス/カーカーと澄んだ声で鳴くことが多い。
※ ハシボソガラス/ガーガーと濁った声で鳴く。
※ カササギ/農耕地で留鳥。カシャカシャという鳴き声が特徴。
※ ミヤマガラス/農耕地に群れ、くちばしの付け根が白っぽい。
※ ムラサキサギ/八重山列島に周年生息。九州では稀な旅鳥。
※ ヤツガシラ/全長28cm。翼と尾が、黒褐色と白色の横島模様が特徴的。
 


最後に。
様々な行事がスタートする4月は、野鳥の会への入会タイミングはベスト。しかし、まずは身近な鳥に目を向け、姿形やその鳴き声を観察してみよう。おそらく、いつも目にしていた景色が違うものに見えてくるに違いない。ただし、相手も生き物。お互いの領域を侵さない程度に節度を持って探鳥しよう。

日本野鳥の会長崎県支部HP
http://www2.ocn.ne.jp/~wbsjn/

長崎県野鳥の会HP
http://www.d7.dion.ne.jp/~babak/birds/indexbirds.htm

長崎県自然環境課
http://www.pref.nagasaki.jp/sizen/index.html

参考文献
『長崎県の鳥』鴨川誠著(長崎県生物学会)
『新 山野の鳥』(財団法人 日本野鳥の会)
『新 水辺の鳥』(財団法人 日本野鳥の会)
日本野鳥の会長崎県支部HP
長崎県野鳥の会HP

 

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