県内で観察記録がある鳥は350種余り。長崎の上空を通過する旅鳥、夏や冬を長崎で過ごす夏鳥と冬鳥、一年中同じ地域に生息する留鳥など、長崎ゆかりの野鳥は数多い。長崎で観察できる鳥や、一度知ると、ハマってしまうバードウォッチングの魅力をご紹介。


ズバリ!今回のテーマは
「花鳥風月、そろそろ鳥を鑑賞してみる!」なのだ




自然の中にある美しい景色の全てを、象徴的に表現した言葉に「花鳥風月」というものがある。よく、年を重ねるごとに人間が美しいと思う対象が花鳥風月の順番に変わっていくと言われるが、最近、花から鳥へ興味が広がっている年代の方も多いのではないだろうか。春の訪れを真っ先に感じるのは、やっぱり自然界の生物達。黄緑色の新芽が芽吹き、どこからともなく鳥のさえずりが聞こえてくる。これからしばらくは、行楽を楽しむにもってこいの春日和が続く。木々の上、家の前の電線、公園の上空、様々な鳥の存在に出くわし、春を実感する瞬間も出てくるかもしれない。実は長崎市内にも多くの鳥が存在する。また、時期は過ぎたが、渡り鳥も多く飛来している。いちばんの驚きは、鹿児島県出水平野で越冬したツルの北帰行のルートに長崎半島上空が入っていること。ツルは2月下旬から3月初旬の晴天の日に天草・長崎の上空を通り朝鮮半島で休憩して中国東北部やシベリアに帰って行くという。見た人の話によれば、時に声を発しながら飛んでいく姿は、まさに圧巻なんだとか。狙いを定めて、ぜひ来年はチャレンジしてみたいものだ。

そんな噂を聞いたからか、花から鳥に興味が移る年頃からか、鳥に慣れ親しむ人達の活動を知りたく、ナガジン!取材班は、昨年秋、日本野鳥の会長崎県支部の探鳥会に参加させて頂いた。この日の場所は『神の島』。「へぇ、神の島にもいるんだ〜」というのが到着するまでの感想。到着してからは、当たり前ながら、鳥のすばしっこいペースに戸惑うことなくバードウォッチングされている参加者の皆さんのペースに合わせるのさえ難しい、というのが感想だ。この日のリーダーの山口雅生さんが折々で解説してくださったが、「あそこ!」といわれて見つけ出すまでが容易じゃない。水辺と山野の鳥を解説したハンドブックを片手に必死で皆さんに着いて行った。





山口さんのお話によると、本日の主なターゲットはアリスイという鳥なのだとか。しかし、最初に皆さんが見つけたのはモズ。背丈の高い枯れ草の上を移動していた。


アリスイ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 岩下 正幸氏


モズ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 老松 涼一氏
   

大陸の西側である天草〜神の島〜長崎半島(野母)には、長くは滞在しないが本州東海岸では見られない鳥が多くいるという。また、前述の出水のツルは、北帰行もだが南寄行(秋の渡り)も長崎県上空(諫早市森山辺り)を夜に通過するそうだ。昨年の第一便は、取材後まもなくのことだった。さらに、アカハラダカやハチクマなど、佐世保市内で観察できるタカの渡りも有名だ。長崎市内にも探鳥地は各地に点在している。野母崎権現山、樺島、川原大池、長崎市民の森、唐八景……意外にも身近な場所に野鳥を観察することができるのだ。


アカハラダカ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 岩下 正幸氏
 

そして、今回の探鳥会で一昨年からヤマガラの餌付けに成功しておられる中村さんご夫婦に出会った。写真を見せていただいたが、ヤマガラはお腹のところのきれいなオレンジ色がとっても愛らしい鳥。よく茂った広葉樹林を好むそうだが、中村さんのご自宅は市内の西山。自邸のエゴという木にヒマワリの種で餌付けし、手に乗るまでに慣れたのだという。もともと救護のお仕事をなさっている奥様は傷ついた鳥の手当てをした経験があり、それからしだいに野鳥に興味を持つようになられたのだという。

手に乗って餌をパクリ!

ヤマガラ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 老松 涼一氏

皆さん、何かしらのきっかけがあって愛鳥家の道へ進んでおられることを実感。

さて、結局この日のターゲットに挙がっていたアリスイには出会うことができなかったが、解散の号令後に美しいノビタキを発見したのを数えると約20種の野鳥に出会えた。ひとまず満足。でももう少しそれぞれの鳥についての知識があったなら、もっと楽しめたに違いない。

※ アリスイ/薄い灰褐色に細かい模様が特徴。
※ モズ/黒い過眼線(メスは褐色)、秋にはキーィキーィと甲高く鳴く。
※ アカハラダカ/ハト大で主に九州や南西諸島を秋に南下する。
※ ハチクマ/カラスより大きく、飛ぶと太く膨らみのある翼が特徴。
※ ヤマガラ/スィー、スィーとシジュウカラより低い、ゆっくりした声で鳴く。

この日観察した主な鳥〈モズ、ヒヨドリ、アオサギ、コサギ、ダイサギ、カルガモ、ハヤブサ、トビ、キジ、ハクセキレイ、ジョウビタキ、ノビタキ、ウミネコ、オシドリ、メジロ、シジュウカラ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス〉


ジョウビタキ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 伊達木 薫氏


ノビタキ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 老松 涼一氏


シジュウカラ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 老松 涼一氏



ノビタキ
写真提供:長崎県野鳥の会会員 老松 涼一氏
 

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