坂の町・長崎を縦横(高低?)無尽に走る路線バス。長崎の人々が暮らすエリアを巡る路線バスは、人々の生活の足であり、バスの車内では長崎弁が溢れ、まさに“これぞ長崎!”といった風景に出会える長崎体験格好の場。観光地周辺を通過する路線バスや、他県じゃありえないまさかのスリル満点のルートを紹介。


ズバリ!今回のテーマは

「観光の皆様に感動とスリルをプレゼント!」 なのだ



4月になって再び“長崎さるく”がスタート! 歩いてこそわかる町の歴史、良さに触れられるこの機会、ぜひボランティアガイドの皆さんが案内する“通さるく”に参加してみてほしい! しかし、歩いてわかる良さもあるが、長崎の路線バス観光も意外に楽しめる。普段、利用している“生活バス”を終点まで乗ってみるもよし、違う行き先のバスに乗ってみるもよし、お弁当持参のピクニック気分もよし。なかでも今回は、観光客の方にオススメしたい3ルートをピックアップ。知らない景色との出会いと、小さな発見に心躍る路線バス観光! いざ、出発進行デ〜ス!

■時刻など詳しい情報は公式HPで!
長崎県営バス http://www.keneibus.jp/
長崎バス    http://www.nagasaki-bus.co.jp/

1.眼下に広がる長崎港口の景色は圧巻!立山・浜平コース
(県営バス・東高下経由)ルート間160円、所要時間約28分
ルート長崎駅前東口→桜町→桜町公園前→市役所前→興善町→県庁前→中央橋→公会堂前→諏訪神社前→西山郵便局前→経済学部前→水源地跡→西山2丁目→西山東部→西山1丁目→長崎中学校前→立山公園口→東高下→金比羅山入口→立山→五社神社下→浜平南→浜平(終点)


立山・浜平行きバス

まずは長崎駅前の高架広場を正面の駅前商店街方面へ渡り、右方向へ10m程進んだ所が長崎駅前東口バス停。赤い県営バスの立山・浜平行きに乗車したら、ぜひ左側シートをキープしよう!

バスが走り出すとすぐ、桜町バス停へ到着する前に被爆遺構である“中町教会”の小塔が見える。澄み渡る青空に浮かび上がる白亜の教会はとても美しい。この教会はドラマや映画などのロケ地としてもよく登場する。ドラマ『愛し君へ』で藤木直人演じる俊介が、目が見えなくなることを、母親(八千草薫)に話したのは神ノ島教会という設定だが、内部の撮影はこの中町教会で撮影された。内部の見学もできるので立ち寄るのもいいだろう。


中町教会の小塔


中町教会

この辺りを桜町というようになったのは長崎開港後まもなく。当初この辺りは最初に造られた6町の町はずれで、キリシタンの墓地が立ち並び、勝山町の丘にかけて桜が植えられていたことに由来するのだという。現在は桜町公園前バス停正面の桜町公園にある数本の桜が、毎年その名にふさわしい春景色を見せてくれる。

この道は一方通行。公園に隣接する市営駐車場横の信号を右折すると国道34号線に出る。この通りは通称“市役所通り”。通りの先には長崎県庁もあり、現在、官公庁をはじめとしたビジネス街となっている。しかし、その昔も長崎奉行所ほか様々な主要機関が設置された長崎の要とも呼べるエリアだ。この市役所通りに連なるのが市役所前バス停興善町バス停県庁前バス停。当然ながら平日は大いに賑わうが、休日ともなると閑散として人通りも少ない。



市役所通り
県庁の正面に来たら左折。中央橋バス停は、夏の盆祭り“精霊流し”のメインストリート“県庁坂”にある。中央橋は各路線バスが交差する要のバス停。通勤通学時間はたくさんの人がバス停に溢れかえる。


県庁前付近


県庁坂中央橋バス停

坂を下り左折。もうひとつの中央橋バス停を通過すると路面電車の線路とも合流する。数年前までは市内で一番大きかった“長崎市公会堂(現在は茂里町の長崎ブリックホールが長崎一ビッグ!)”の公会堂前バス停を直進、しばらく走ると前方右手に、山頂に英彦山神社が祀られた霊峰“彦山”がそびえる。
すり鉢状に広がる長崎の町を取り囲んでいるのが、この彦山をはじめとする山々。長崎の町を散策する際に、まず山の形と名前を記憶しておくと、だいたいの方角を間違わずにすむという利点がある。東に彦山、西に稲佐山、南に唐八景、北に金比羅山と覚えておこう。ちなみにこれらの山のうち彦山以外は、長崎の年中行事である“ハタ揚げ”スポット。4月から5月にかけ、毎年各々の山で“喧嘩バタ”に自信のある大勢の人々がその腕前を競い合う。彦山から昇る朝日や月もまた素晴らしい。長崎市民の慣れ親しんだ風景だと言えるだろう。
諏訪神社から彦山

四差路にさしかかったところで、バスは西山バイパス方面へと進み、諏訪神社前バス停で停車。バス停のすぐ奥には伊藤博文がその名を付けた“料亭・富貴楼(ふうきろう)”がある。趣ある建物に老舗の貫禄がにじみ出ているが、通りに面した石垣もまた築城などに用いられた「はね出し(別名/忍者返し)」と呼ばれるもので、元禄初期の立派なもの。建物の奥には、樹齢1000年ともいわれる“松森神社”の7本の大クスが見える。


富貴楼と大クス
西山郵便局前バス停経済学部前バス停水源地跡バス停を通過する際は、金比羅山の麓にあたる西山エリアの斜面地に立ち並ぶ家々の長崎らしい風景を楽しもう!


斜面に立つ家々

そして、西片橋の信号から左折。バスは斜面地をひたすら上っていく。西山2丁目バス停西山東部バス停西山1丁目バス停までは、彦山方面の景色と共に、さっきは下から眺めた斜面地の家々を眼下に望むことができる
周囲を見渡していて気づくのは、この坂の上にうまいこと駐車スペースが確保されていることだろう。車は坂の町・長崎の生活必需品。狭小スペースを駆使した駐車場にも注目だ。

坂の上の駐車場

長崎中学校前バス停からは、桜の名所“立山公園”に向かって坂を上り右折。ここから立山公園口バス停までの道は、桜の季節、美しい桜のトンネルと化す、とっておきの道筋。金比羅山に祀られる“金比羅神社”の鳥居の上部が見える東高下バス停でUターンして立山公園入口から右折する。
するとさっきまで見えていた景色に変化が……。


長崎港

金比羅山入口バス停から立山バス停の間に彦山が消え、今度は長崎港の港口から大きな入り江へと入り込む美しい景色が眼下に広がるのだ。
思わずその昔、たくさんの南蛮船が繋留されていた様子を思い浮かべてしまう。

当然、立山バス停前の“ホテル長崎”からの景色も絶景だ!
そして、その景色は五社神社下バス停まで行くとまた違った表情を見せる。今度は稲佐山と共に長崎駅よりも北部の景色が目に飛び込んでくるのだ。

稲佐山と北部

浜平南バス停を通過すると浜平(終点)がこのコースの終点。ちなみにこの道はトーマス・B・グラバーをはじめとした多くの外国人達が眠る坂本国際墓地方面へと通じているので、中央橋方面へのバスに乗り継いでそれらを散策するのもいいだろう。さらに“一本柱鳥居”、“原爆資料館”など被爆遺構へ足を延ばすこともできる。


坂本国際墓地

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