文・宮川密義


★古い歌詞(続き)
今回の歌詞には、いささか気が引ける表現もありますが、前回に続き、よく知られたものから順に(類似したものは一緒に)、その意味を添えながら紹介しています。(ナンバーは便宜上のもので、年代とは関係ありません)


18.「源平」はバクチのこと。「岩屋山」は長崎の西北にあり、今でも市民は「いわやさん」と呼んで、ピクニックなどで親しんでいます。
昔、岩屋山神社は正月の5日から15日ごろまで参詣客でにぎわい、茶店などが出ていました。ここで名物の味噌漬を売っていた男がバクチに手を出し負けてしまい、売れ残りの味噌漬をぶらぶら持ち帰る珍風景を歌っています。




「長崎名勝図絵」に描かれた岩屋山





19.「ゆうれん」は幽霊のこと。片下駄で歩く阿茶(あちゃ)さん(中国人の愛称)は一杯機嫌で下半身すっぽんぽん。のどかな昔の長崎の町の情景です。
死んだ阿茶さんの魂が親しい人に会いにきて、下駄の片方を持っていったという長崎ばなし「幽霊の片下駄」を下敷きにしていますが、「幽霊の片下駄」も「牡丹灯籠」と同じく中国の怪奇小説「剪灯(せんとう)新話」が元になったものです。

20.
「シャンス」は「相思」の唐音で「恋人・情人」。「じんべん」は「珍しく」、「すばん」は「おせっかい」とか「要らぬお世話」の意味。
丸山遊郭で、客の一人が「珍しく彼氏が来たバイね」と冷やかすと、「ほっといて!」と遊女がやり返す情景。

21.あそこの奥さんは別ぴんさんで、一見正直者に見えるが、顔に似合わず横着、生意気だよ…の意味。






22.不倫のお相手が医者で、亭主から削がれた鼻柱を接いでもらった人妻をあざ笑う。

23.シーボルトが乗船する予定のオランダ船ハウトマン号が文政11年(1828)8月9日夜台風で沈没しました。その船を御用時計師・御幡(おばた)儀右衛門がカラクリ仕掛けで見事に引き揚げた快挙を称える歌です。

24.「そんげん」は「そのように」、「あんゃま」は「兄さん」、「すらごと」は「空言」のなまりで「うそ」の意味。




25〜27.替え歌には卑わいなものが多く、庶民に好まれたようですが、昔はこんな歌もおおっぴらに歌われていたのでしょう。

28.シーボルト事件の幕府天文方・高橋作左ヱ門に絡む歌。





丸山町に建てられた
「ぶらぶら節」案内提灯

29.「醒ガ井さん」とは女郎の名のようです。

★新しい歌詞
近年、新しい歌詞が作られ、元歌の旋律をアレンジして歌ったものがレコードや舞台などで発表されています。以下、発表順に紹介していきます。1〜7はレコード、8〜9はCDで発表されました。



4.「旗上げ」は「凧(はた)揚げ」の誤り。
「唐八景(とうはっけい)」はハタ揚げのメッカで、毎春、長崎新聞社主催の「長崎ハタ揚げ大会」が行われています





唐八景のハタ揚げ大会


1〜7.1〜7は昭和32年(1957)、照菊の歌で発表された高橋掬太郎(きくたろう)・作詞の「ぶらぶら節」で、レコードでは5節まで歌われています。曲は民謡の元歌を元にしていますが、ラベルなどには「細川潤一・作曲」と書かれており、当時、作曲者に問い合わせたところ「編曲の間違い」との返事が来ました。しかし、JASRAC(日本音楽著作権協会)には「作曲」で登録されています。





8.平成8年7月26日から3日間催された「ながさきみなとまつり’96」の新企画『ぶらぶらおどりコンテスト』で「ぶらぶら節」も課題曲になり、長崎市内の編曲家・矢田勲さんが編曲、同市内の歌手・里ゆかりさんの歌でCDが作られました。若者向けの編曲に乗せて5節が歌われましたが、最後の5節目にこの新作が登場しました。

 


「ぶらぶら節コンテスト」の
課題曲が納められたCD






9.長崎の歌にこだわり続けた長崎のグループ、ZINM(ジンム)のCDアルバム「長崎熱」(平成13年)の「ぶらぶら節2001」の最後に付けられた新作(松原一成・作詞)です。




ZINMのCDアルバム「長崎熱」




10〜17.
10〜17は作者や発表メディアなど詳細は不明です。ご存じの方はお知らせ下さい。



平成11年から長崎で開かれている
「ぶらぶら節全国大会」の表彰式



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