ポルトガルとの貿易港として繁栄した長崎は、ガラス製品伝来の地でもあります。中世にほぼ断絶していた日本のガラス製造技術は、長崎からあらたな発展をはじめ、京、大坂、江戸へと技術が伝わったといわれています。18世紀初頭には長崎土産にあげられていることからも、長崎においてガラス製品の製造が盛んだったことがわかります。

長崎ガラスとよばれるものの特徴は、宙吹き技法を生かした形態をもち、無文で濃い藍色が多く使われていることです。優美な形をみせる鶴首徳利や冷酒用急須「ちろり」はその代表的なものです。「ちろり」とは本来は銅、スズなどでできた酒の燗をするための筒形の道具で、上部に取っ手と注ぎ口がついています。ガラスの「ちろり」は土瓶型をした、上部に取っ手を持つものをさし、冷酒を入れるために用いたと考えられています。

この「ちろり」の復元は技術的にも大変難しく永い間途絶えていましたが、瑠璃庵長崎工芸館の工房で復元することができました。丸みを帯びた球形の胴と優雅に伸びた注ぎ口が特徴で、厳選した調合原料に酸化化合物を混合して独自に調合し生み出した瑠璃色は、長崎の濃い藍色の海を彷彿とさせます。この「ちろり」は、今では長崎ガラスの象徴的存在といえます。

秋の夜長、おいしいお酒を美しい瑠璃色の「ちろり」でいただくのはまさに至福のときではないでしょうか。



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