中国から伝わった「ざぼん」は、春に驚くほど大きな果実(柑橘系)となりますが、
厚い皮を剥くと、直径20cmくらいのものも半分くらいの実になってしまいます。
そのまま食べてもおいしく、柑橘系のくだものとしては水分が少ないのですが、しゃきしゃきとした食感とほんの少しの苦みが後味さわやかです。
以前は収穫のころに、近所の農家からいただいた「ざぼん」が2〜3個ごろごろと転がっているのが、長崎っ子のうちではよく見られる光景でした。

このざぼんの中皮を砂糖漬けにしたものが、ご紹介する「ざぼん漬け」です。
「ざぼん漬け」は、実ではなく「皮」が主役なのです。
確かに皮の方が分量が多いし香りもいいので、剥いた後の皮を見て、「なんだかもったいない」と思った人は多いと思います。
この皮を加工して「ざぼん漬け」を生み出した人は、まさに目の付け所が違うという感じです。
長崎のみやげものとしてカステラと肩を並べるほどでした。

「ざぼん漬け」にはいくつかの種類があります。
まるごとそのままの「ざぼん漬け」は、特殊な方法で中身を摘出してあるそうです。
そう、実はまるごと皮なのです。
一般的なものは、6分の1くらいかそれ以下にカットしてあるものです。
また、限られた真夏の期間にだけ採れる若いざぼんを独特の製法で加工したものが写真にある円形の「ざぼん漬け」です。
普通のものよりも、まろやかでフレッシュな香りが特徴です。

食べ方は、そのまま薄切りにしていただきますが、最近流行の「あまり甘くなくておいしいですね」調の味ではありません。
しっかり甘いので、覚悟していただいてください。
茶道をされている方には、お土産に喜ばれること間違いなしです。
干菓子代わりに薄く切った「ざぼん漬け」は透き通って果肉が見え、目にもきれいですし、いただいた後のお抹茶の味は格別です。

また、この甘さが意外とお酒に合うらしく、氷を入れたグラスに薄切りにした「ざぼん漬け」を数枚入れて、ブランデーまたはウィスキーを注いでいただくと格別の味。
「ニコラシカ」というカクテルがあります。
ブランデーのグラスの上にレモンスライスを乗せ、その上に砂糖を盛って、一気に飲み干すというかなりワイルドな飲み方をするのですが、この「ざぼん漬け」でレモンと砂糖の二役ができそうです。
まさに「長崎ラシカ」カクテルかもしれません。お試しあれ。



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