悪かばってん、マチまで買いもんに行ってくれんね。
居間の電気んタマの切れとっと。
ふっとかとじゃのうして、にしょくんほう。
あと、午後に花子おばさんのうちに来っけん
お菓子ば買うてきて。よりよりがよか。
花子おばさん、よりよりの大好きかけん。
はい、こいがお金。
お駄賃代わりに、喫茶店で休んできたっちゃよかばい。
ミルクセーキっちゃ、トルコライスっちゃ
好きなもんば食べてきてよかけんね。
車で行くとやったら、気ーつけんへね。
特に、下ん坂んにきは離合のむずかしかけん
ぶつからんごと行ってこんね。
そいじゃ、たのむけん。
《訳》
悪いけど、繁華街まで買い物に行ってくれないかしら。
居間の電球が切れてるのよね。
大きいのじゃなくて、小さい電球のほう。
あと、午後に花子おばさんがうちに来るから
お菓子を買ってきて。よりよりがいいわ。
花子おばさん、よりよりが大好きだから。
はい、これがお金。
お駄賃代わりに、喫茶店で休んできてもいいわよ。
ミルクセーキでも、トルコライスでも
好きなものを食べてきていいからね。
車で行くんだったら、気をつけなさいね。
特に、下の坂あたりは離合がむずかしいから
ぶつからないように行ってらっしゃい。
それじゃ、たのむわね。
<ワンポイント>
【にしょく(にしょっこう)】
蛍光灯についている、小さいオレンジ色の照明が点く電球。
燭というのは、むかし使われていた光度の単位で
2カンデラという意味らしい。
2カンデラの電球なので「二燭光」。それが略されて「二燭」。
現在では、ほとんどこの言葉は使われなくなったが
このように地方では、方言でそのまま残っていたりする。
【よりより】
中華菓子の一種で、小麦粉と砂糖を練り、油で揚げたもの。
その形状がねじられた麻糸のようだったことから、麻花(マーファ)
と呼ばれる北京地方に古くから伝わるお菓子。
市民には商品名よりも「よりより」の名で広く知られている。
【ミルクセーキ】
いわゆるファストフード店にある「シェイク」が
本来のミルクセーキ。れっきとした飲み物なのである。
しかし長崎では、ミルクセーキは卵とミルクを使った
かき氷の一種、スプーンを使って食べる物として扱われている。
上に必ずさくらんぼが乗っているのが多い。
【トルコライス】
大皿に、ピラフとスパゲティとトンカツを盛り合わせた洋風料理。
長崎の洋食店では、必ずといってよいほどメニューにあるが
じつはこれも、長崎だけのローカルメニュー。
【離合】
道路で車がすれ違うこと。
もともとは鉄道用語で、上り下りの列車がすれ違うことだったのだが
いつのまにか、九州地方を中心とした西日本で
車がすれ違う際に、使用されるようになったとみられる。
東日本では、ほとんど使われていない。
|