(グラウンド。おそろいのジャージ姿の生徒たちを前に、先生が声をはり上げている)
よかやー! 団体で車道ば歩くときは、道ん右側。
きれかごと列ば作って、よんごひんごならんごと!
列からひっと出よったら、車にしかるっかもしれんけんな。
くれぐれも、気ーばつくっごと!
《訳》
いいかー! 団体で車道を歩くときは、道の右側。
きれいに列を作って、ぐにゃぐにゃゆがまないように!
列からはみ出ていたら、車にはねられるかもしれないからな。
くれぐれも、気をつけるように!
ほらそこ! だまって話ば聞かんか!
道ばたには、たんごのあっとやっけん。
そがんしてあまいよったら、落っちゃくっかもしれんとぞ。
そいでもよかや? よーなかやろ?
《訳》
ほらそこ! だまって話を聞かないか!
道ばたには、肥だめがあるんだからな。
そんなふうにふざけて暴れていて、落ちるかもしれないぞ。
それでもいいのか? よくないだろう?
頂上んにきについたら、そこで自由行動だ。
自由行動ていうたっちゃ、勝手にメシば食うたりすんなよ。
昼食は、12時になってからばい。そんあとは3時に現地解散。
めんめんで帰宅すっごと。
そしたらなんか質問はなかやー?
人数はちゃんとおるやー? にンがしンがろンがはンがじゅー…
よし、おるな。そしたらしゅっぱーつ!
《訳》
頂上のあたりについたら、そこで自由行動だ。
自由行動といっても、勝手にメシを食ったりするなよ。
昼食は、12時になってからだ。そのあとは3時に現地解散。
それぞれで帰宅すること。
それではなにか質問はないかー?
人数はちゃんといるかー? にーしーろーやーとー…
よし、いるな。それではしゅっぱーつ!
<ワンポイント>
【遠足】
都会の遠足は、遊園地や動物園などにバスに乗って行く
…などと聞くと、長崎の人間はつい
「そいは遠足じゃなか。『社会科見学』たい!」と言ってしまう。
長崎では、遠足はかならず山。もちろん徒歩で登る。
注・山について
稲佐山、岩屋山、風頭山、金比羅山、田手原、唐八景、鍋冠山、八郎岳
などなど…。校区によって目的地がかわる。
また、山の上まで家が立ち並ぶという、長崎独得の住宅事情のため
目的地のすぐ近くが自宅…という生徒もけっこういる。
【よんごひんご】
ぐにゃぐにゃ曲がっているようす。
【(車に)しかれる】
「轢かれる」も「はねられる」も、どちらも「しかれる」である。
例/キキーッ「うわあっ! しかるってした!」
(キキーッ「うわあっ! 轢かれるとこだった!」)
【たんご】
肥だめの意味。
むかしはかならず遠足の途中に、肥だめがいくつかあって
必死で息をとめて歩いたものであるが、いまはめったに見ない。
ちなみに筆者は、子どものころ黒猫が落っこちたのを目撃したことがある。
「黒猫のたんご」なんちゃって…す、すみません。
次回へつづく… |