遂に念願の頂上到達!
気分爽快なパノラマが広がる



八郎岳の頂上は、木々がなく展望は360度の気持ちのよい草原の広場になっている。その周りには自生のサザンカが白い花をつけていた。1等三角点。天測用の八角形のコンクリ柱もある。



東に橘湾、南に天草灘、西には五島灘と長崎半島を取り囲む海が一望できる。そして眼下に広がる長崎港。正面には、三菱造船所香焼工場の100万トンドックの象徴的な紅白の巨大クレーンが、その存在感を放っていた。


その手前には、こんもりと木々に覆われた「城山」の姿が見える。ここには山城の跡が残るそうだ。北側には市街地、その先には大村湾も遠望できた。まさに、長崎最高峰から見下ろす絶景だ。山頂には、先程道を譲った方達や、別ルートで来た登山客が、この絶景に感嘆の声を上げていた。さぁ、ここでお楽しみのランチタイムだ。

   

険しい道のりのご褒美!
澄んだ空気と美味しいランチ
 

彦山、七高山巡りに続く登山第三弾も、とびきりのランチタイムが待っていた。ビールをシュパッ!と開け、「おつかれさーん!」。本日のメニューは、それぞれに持参したお弁当に加え、ガスコンロを使った本格調理が行なわれる。ここは長崎の最高峰の頂上。何とも圧巻なランチである。

素早く下ごしらえをした野菜、ソーセージなどを鍋にかけ待つこと10分。完成したのは野瀬さんのポトフだ。それで、“持ってくるもの”の一覧に“お椀”があった訳だ!もちろん、水も下界から背負ってきたもの。汗を流したあとでも体の芯は冷えていて、温かくて優しい味のポトフは体中染み入った。ワイン好きの方はここで赤ワインをくゆらせる。フルボトルのワインも持って来てたのだ!白山さんは、はさみ込む具材を出してナイフでカット。チーズのとろけ具合とフレッシュな厚切りトマトの酸味がきいたとびきり美味しいホットサンドが出来上がった。直火焼きのせいか周りの焦げ目がたまらなく美味しい!

「これもどう?」「あれも美味しいよ!」の声が飛び交い宴は続く。そんななか、女性メンバー山下さんが、開いたガスコンロを使ってぜんざい作りに取りかかった。と、さっきまで赤ワインをくゆらせていた高井さんが、水の量に異議申し立て! 実は甘党辛党両党の“ぜんざい奉行”だったのだ。ちょっと入りすぎたと思われた水にタッパいっぱいにつめられた持参のあんこを投入。しばらく煮込み、高井さんが味見する。イケる! 紙コップに入ったぜんざいがみんなに配られると、今度は誰かが、女性メンバー荒木さんが極小タッパ入りの塩昆布を差し出す。どんなものまで持ってきてるんだ〜!と驚くほど、様々な食べ物を口にした。満腹。
 

行きよりも増して慎重に
ルートを見極めいざ下山!

お腹も満たされたところで、再び眼下に広がる景色を眺める。いつものごとく、「登って良かった〜」「最高だね〜」と口々にいい、約1時間半のランチ休憩を終え、下山の準備に取りかかった。

と、足元に異変が! なんか変なものでも踏んだのかと足を上げてみると、靴底がパッカリはずれて取れそうである。「ぎゃー」っと大声を出し慌てていると、周囲にどんなものでも出してくる(持参している)と定評のある白山さんが、サッとテープを取り出し応急処置を施してくれた。ひとまず安心。登山靴は、履いても履かなくても5年が寿命なのだそうだ。そうか、七高山巡りからほぼ6年。もはや寿命を越えていたのだ。


いざ下山! 東尾根へと降り小八郎岳へ、烏帽子岩へと続く縦走コース、またその先唐八景へ、途中小ヶ倉水源地へと、様々な林道ルートが張り巡らされているので、計画してチャレンジしてみるのもいいだろう。今回、私たちは帰りも同じルートで下山する。行きと違って滑る危険性が高い下山は、言葉数少なに、みんな慎重に足を運ぶ。その緊張で力が入ったためか、無性に肩が凝ってきた。下りでは汗をかくこともないかと、着込んで下っていたら、しだいに汗ばんできた。上りで消費したカロリーはランチで完全に補給。その補給したエネルギーをバンバン燃やしている感じを体中に感じた。行きに通った「あと300m」「あと800m」「やっと中間点」の道標は、意外にも遠く、急な傾斜の気を抜けない山道が続いた。鬱蒼(うっそう)と茂る山中に身をおいていると、野生の感的なものが働いてきて、歩いてきた距離感や視覚、聴覚に頼らずとも、下界が間近に迫っているのを感じる不思議な感覚を味わった。そして、視界がパーッと広がり墓地横へ。あとは再び国道を通りスタート地点の駐車場へとゴールした。所要時間約5時間。(行き2時間、帰り1時間半、ランチがちょっと長めの1時間半!)

好天の休日、自然と触れ合い清々しい気分を味わった久々のハイキングが終了した。駐車場から眺める八郎岳。「あの山に登ったとよねー」「私たち凄かね!」などと興奮は覚めやらない。
明日の筋肉痛の訪れが、心配ない訳ではないが、体を動かし、動かして減った分の手作り出来立ての美味しい食事を戴き、帰途に着き、大きな充足感を味わった登山だった。

 

最後に。
普段眺めている山から自分達の町を見下ろす感動は大きい。それに加え、ともに険しい道を励まし助け合いながら上り下りして、頂上で和気あいあいと食事を取る。そんな自然と一体感が増す登山仲間との交流は、何よりも得難い登山ならではの感動かもしれない。もちろん、安全管理や事前の準備は忘れずに。皆さんもぜひ、日頃の運動不足解消、また素晴らしい見晴らしと美味しい空気を味わいに、近郊の山へと登ってみてはいかがだろうか。

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