肌をなでる風の冷たさ。紅葉し、やがては落葉する木々。季節の移ろいを身近に感じるこの時季、週末には近郊の山へ登るハイカー達の姿も目につく。そこで、山の空気とエネルギーを得るため、いざ市内で最も高い山、八郎岳へ登山。


ズバリ!今回のテーマは
「きつい山ほど、眺めも達成感も大きい!」なのだ




八郎岳の名前の由来は?
平安時代末期の武将、各所に伝説を残す源為朝(みなもとのためとも)に由来する。弓の名手であった彼は、鎮西を名目に九州で暴れ、鎮西八郎と称していた。八郎岳は、彼が山頂から矢を射たという伝説から生まれた山名だという。

(八郎岳590m)
登山シーズン
梅雨の時期を除けば特にないがやはり新緑の頃と紅葉の頃、つまり春と秋がおすすめ。春は照葉樹林の新緑が美しく、秋は山頂の草原のススキが美しい。空気が澄んだ秋は、山頂からの360度のパノラマ絶景が見渡せる。

参考コースタイム
JR長崎駅南口バス停→(長崎バス40分)→平山バス停→(徒歩5分)→八郎岳登山口→(徒歩120分)→八郎岳山頂→(徒歩90分)→八郎岳登山口→(徒歩5分)→平山バス停

 

長崎一の眺めを手中におさめるために
八郎岳ハイキングスタート!

透き通った青空が眩い秋晴れの某日。登山部隊一行は平山バス停近くの駐車場に集合した。ナガジン!ではこれまでにも、「信仰の山・彦山ハイキング」「長崎近郊の山・七高山巡り」と2度程山登りを決行しているが、今回も、その過去2回とも指南を受けている野瀬さんを先頭に男女8名での登山。中頃にも七高山巡りでお世話になった高井さん。最後尾は、頻繁に九州内外の1000m級の山に登っておられる白山さん、と、心強い3名の男性陣+5名の女性陣が連なる。ザックをご覧の通り、男性陣はできるだけ重いものを背負い込んでの訓練的登山である。それをいいことに、重いものは、素早くお願いして入れてもらう(ラッキー!)。
まずは国道499号に沿ってしばらく歩き平山バス停を目指す。まさに今から登らんとする「八郎岳」を横目に「結構高かよねー」「鹿のおるらしかよ」「猪もばい」など、ワクワク感は早くも最高潮。


平山バス停から農道に入り、緩やかな上り坂を進むと右手にお堂があった。中にはカラフルな仏像が2体。何のご利益があるかは不明だが、とりあえず無事な登山達成を祈願して道に戻る。



柑橘系の大きな果実がたわわにぶら下がった木を発見。国道から少し入っただけでのどかな風景がパッと広がりホッとした。


「八郎岳登山口」は墓地が目印。
この墓地を回り込み進むと、舗装されてはいるが、一列でしか歩けない山道だ。しばらく進むといよいよ常用樹の森に出た。まずは竹林のお出迎え。さぁ、ここからが本格的なハイキングコース。一行は一列に並び登りはじめた。


頭上からはとぎれとぎれに陽射しが差し込み、足元は暗くなったり照らされたり。足元に注意を払いながら顔を上げて周囲を見渡すと、木々の陰影が美しいまるで一幅の絵画のような風景が目に飛び込んできた。

   

適度に小休憩を取りながら
長崎最高峰・八郎岳を体感!

うっそうと茂る木々に覆われた山道が続く。前日は一日中雨だったため、滑りやすくなっていることも予測していたが、意外にも乾いている。よっぽど乾燥していて、一気に吸収したのだろうか。ときおり、長い時間をかけ雨水がえぐっていったかのような道があり、水が引いた川底を歩いているような感覚で、ちょっとした探検気分だ。道は基本、ひと独りが通るだけの幅しかない尾根道で、背後からやってきたハイカー達を何度かやり過ごした。その際、「こんにちは!」という爽やかな挨拶が自然と出てくる。同じ山を体感している連帯感が瞬時に生まれ、それが何だかうれしいのだ。登山口から30分程度のところで、ちょっとだけ休憩。汗を拭い、体温調整のため上着を脱いだり取り替えたり。そして水分補給。最後尾の白山さんからはチョコレートが回ってきた。消費したエネルギーを補うには、チョコレートがいちばんだ。それぞれが持参したエネルギー補給源を取り出す中、早くも「だいこんスナック」などというおつまみ系が飛び交い、あわやここで宴会か…という雰囲気になった。「休憩は短めに!」が鉄則。腰を上げ再び歩きはじめた。



緩急を繰り返しながら高度を上げていく。さっきまで赤や木などに色づいた小さい葉がちらほらしていた足元だったが、今度はドングリの葉らしき大きな落葉が敷きつめられている。落葉の様子で山の高低さを実感。ところどころ足が沈むようなふっかり柔らかい感触で、まるで落葉の絨毯だ。

しばらく進むと前方右方向の視界が開け、右前方に小八郎岳のそびえ立つ姿が見え、現地点の山深さを知る。斜面には鹿除けのネットが張り巡らされていた。

足元には、キラキラ光る珍しい石ころが目立つ。八郎岳山系は、長崎火山帯に接していて、その主峰の八郎岳は、なんと結晶片岩からなり、頂上付近は玄武岩が流出しているのだという。

陽の当たる明るい道を進んで行くと、やっと中間地点。すぐ近くには、竿の浦へと降りる分岐点があった。ここでまた一息入れる小休憩。


「やっと半分!」と、長崎最高峰の高さを噛み締めながら、前へ。さらに進むと「草住神社」の鳥居が見えた。この当りは草住町なのだろう。

 

山頂まであと少しの気配!
険しい山道も踏ん張り頂上目指せ!

あと800mの道標が目に入る。



初心者を含めたパーティにつき、無理なくゆっくりと登っているため、すでに1時間を過ぎていた。

ヒノキなどの植林帯に入ると、勾配も険しく足元の落葉もいつの間にか様変わりしている。白山さんのストックを借りてなんとか登りきる。これまで前後の人との会話が途切れなかったが、みんな無言で懸命な歩きへと変わっていた。あと300m地点の道標を目に最後の力を振り絞る。


小休憩を2度程はさみ、周囲がふたたび自然林に変わっていくなか、そろそろ頂上の気配がしてきた。先頭の野瀬さんから伝言ゲームのように「到着!」の一報が下ってきた。
 

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