【山里の涼を求めて編】

高さはやはり八十八尺?
現代の秘境に現れる

八十八尺の滝
(鹿尾町/鳴滝山観音寺内)


八十八尺の滝


観音寺の滝

市内南西部、山地を縫うように悠然と流れる鹿尾川沿いに鳴滝山観音寺があり、その境内に八十八尺の滝という高さ25m程の滝がある。
市街地から行くと新戸町団地へ上る手前、大山町方面へ左折。2つの小さな橋を渡ると右手に流れる鹿尾川に沿って車を走らせると鹿尾ダムへと辿り着く。この周辺の素晴らしい秘境ぶりはまたの機会に紹介するとして、いざ!目的の観音寺へ。ダム堰堤上の橋を渡りSカーブを下ると左手にトレーラーが置かれた広っぱがあり、その間に細い道が左へ延びているので、1、2回ハンドルを切り返し入って行く。ちなみに土井首から三和橋を渡って至るというアクセスもあり。

背後には戸町岳〜熊ヶ岳〜悪所岳の連山。ここは南支沢の滝で、普段はさほど水量があるわけではないが、上部に一つ段がある段瀑のため、飛び散る様は、まるで傍らに祀られた龍神のごとく、岩をも砕くような勢いを感じる。滔々と流れ落ちる様にしばらく目を奪われる。光の加減もあってか水が流れ落ちる場所が反射して、ただの水とは思えない神々しさだ。


神々しい滝

撮影していると、年配の男性と出会った。「ご近所の方ですか?」と尋ねると、「ふとこの辺りはどうなっているだろうと、約50年振りに訪れた」のだという。話を伺うと、当時はこのような開けた地ではなく、細い道を進むと正面にこの滝がこつ然と現れる、そんな幽境だったのだという。
滝の周囲に祀られた数多くの石仏を含め、神秘的な空間を形成している現在の八十八尺の滝。現在のいいところは、何といっても滝下にまで近づけるよう滝見スペースが設けられていること。思いっきり近くでマイナスイオンいっぱいのきれいな空気を吸い込もう!

滝からの風景


滝見スペース


300余年の歴史を持つ
三川川(みかわがわ)上流の霊場

醍醐の滝
(三川町)


醍醐の滝


ほんの数十メートル前まで民家が建ち並ぶというのに、この静寂はどう表現したものだろう。
県営バスの循環が往来する三川町バス終点から右手の観音橋方面へ進み、この橋を渡ると正面に地面に置かれた緑の看板が目に入る。左へ行くと兵底の南山総合グランド。ここを右の細い道へと進み御手水坂と呼ばれる坂を過ぎると、数台の車が置けるポケットパークがある。ここから右側の石垣と材木が置かれた小屋との間を進むと静かな川音が聞こえてくる。三川川だ。左側にはのどかな農村風景が広がる川沿いの通路をガードレールに沿って250m程進むと、正面右に釣鐘堂が見えてくる。横に建つ円柱の碑には、「鎮西最初の道場」、側面に「醍醐の滝」の文字。


緑の看板

石垣

三川川上流にあたるこの地は、300年を越える歴史のある真言宗醍醐派の霊場なのだ。同じように刻まれた文字には創立261年昭和6年3月21日建立とあり、この霊場が長きに渡りこの地に存在したことを今に伝えてくれる。


三川川


釣鐘堂

石柱の門をくぐり中へと進むと流出の大被害を受けた長崎大水害後に再建されたという道場とお堂がある。左には弘法大師像をはじめとした苔むした石仏が並び、霊妙な気が漂っているのを感じずにはいられない雰囲気。涼しげな水音が聞こえるお堂の方へ行くと、静寂の中、目的の醍醐の滝が流れ落ちている。滝巾3m、高さ6m程の小さな滝だが、雨が降った日の翌日などは右側の崖は高さ15m程のしだれ滝となり、時として違う表情を見せてくれるという。


お堂


醍醐の滝

道すがら地元の方にこの滝への道を尋ねると「あぁ、お滝さんならあっちの方向よ」との返事。“お滝さん”という呼称に、地域の方々に長く親しまれてきた様子が思い浮かぶ。取材に訪れた頃は真白な山桜がこの霊地を覆っていた。四季折々の移ろいを見せる山里の風景をこの小さな滝はずっと見守り続けてきたのだろう。


野生の鹿も飲む
清らかな水が流れる

津々谷の滝
(三和町/藤田尾佐敷嶽)

市内最高峰の八郎岳(590m)の隣峰・寺岳の麓上流部にある津々谷の滝。市民の森からのハイキングコースとしても知られるこの周辺は、温暖な気候に恵まれたびわの産地。取材時も、袋をかぶったたくさんのびわの木々が風に揺れていた。


津々谷の滝
市街地から野母方面へと車を走らせ、為石から茂木へと通じる県道34号線を5分程進み、カーブを過ぎ右方向に鉄塔が見える頃に左側に竹林から入る小路があるので、そこを左折。正面に右に行くと「⇒68番札所」という看板があるので、この看板の⇒とは逆方向、つまり左に進む。車一台通るのがやっとの山道なので、大型車だとアウト。しばらく行くと右手に朱色の鳥居が見え、そこが滝への登り口となる。鳥居脇には龍のモニュメント。やはり、滝といえば龍神様なのか? 鳥居をくぐり、苔むした石段を登る。取材時はずっと晴天続きだったためか、流れという流れはなかったが、所々に溜まった水は透きとおりとてもきれいだ。佐敷岳(502m)を水源とし、藤田尾川を通って流れ着くこの水は、地域の人の生活用水として、また、特産品のびわを育てる農業用水としても利用されている大切な水なのだ。


68番札所


朱色の鳥居


龍のモニュメント


苔むした石段
100m程進むと高さ20m程の滝が現れた。この滝は新四国霊場八八ヵ所のひとつで、信仰、修験の場所。滝の傍らには不動尊像のほか、薬師如来像、普賢菩薩像、弘法大師像など十三尊程が建立されている。

ゴツゴツとした上部の岩肌に落ちると、岩に染み入り流れ落ちる水と、その岩によって進路を変えられながらも直下する一条の滝。水源の森として、また4月21日の弘法大師の命日、9月28日の不動明王の日に参詣する習わしがあるなど、信仰の地として、地域の人々に親しまれ続けている。
車道へと戻る際、おそらくイノシシ猟の銃声が鳴り響いた。自然豊かなこの森は、県本土では唯一の野生の鹿の生息地なのだという。運が良ければ水を飲みに下りてくる鹿に出会えるかもしれない。

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