●福田本町チームに密着!ペーロンの観戦極意を学ぶ

さて、ペーロン発祥の興味深い歴史を知ったとなれば、その伝統競技を現代に受け継ぐ猛者達の勇姿を目にせずにはいられないというもの。そこで今回は、福田港を本拠地とする6地区(大浜・小浦・本町・小江・柿泊・手熊)の中から福田本町チームに密着! 夜の練習風景や、先月行われた第41回長崎市福田連合青年団ペーロン大会の様子から、ペーロン競漕の基礎を踏まえた観戦極意を学んでみよう!

オフシーズンの2月頃は、走り込みや腕力だけでのロープ昇降で体力作りをする。4月から本格的な練習を開始したという福田本町チーム。そして、ゴールデンウィーク後、当面の目標であった福田連合青年団ペーロン大会に向け、仕事を終えた夕刻から連日熱のこもった練習を続けてきた。



夕刻から始まる練習


メンバーは、下は16歳、上は45歳の平均年齢23歳のチーム。本来福田地区では25歳までの選手を青年団として大会を実施してきたが、人不足が深刻なのだとか。毎年20代の漕ぎ手の確保が難しく、今年も高校生やOBの方にも参加してもらっているのだそうだ。


そんな中、去年から団長として本町チームをまとめているのは、キャリア13年のベテラン! 体力、精神力ともにノリに乗った年代の中村敬博(たかひろ)さん(25)だ。

中村さん「毎日きつい練習ですが、楽しい打ち上げを目指して取り組んでいます。年上、年下のいろんな世代の人達と知り合えたのもこのペーロンに参加してこそだし、地域の皆さんのお手伝いや差し入れなどの協力を経て、大会に勝って地区が盛り上がるときなどは、やっていてよかったなーと嬉しくなりますね。」

そんな中村団長の目下の悩みは、毎日18時半から21時までみっちり練習したいにも関わらず、なかなかメンバーが集まらないこと。だけどその悩みは福田本町だけに限らず、社会人で構成されたペーロンチーム全てが抱える問題。しかし、本番の大舞台では、練習不足を吹き飛ばすかのような熱戦を繰り広げてくれるのだから、たまらない!

では、福田本町チームの練習風景を交えながら、ペーロン競漕の観戦極意に迫ってみよう!


◆“ペーロン競漕”はこう楽しむ!
観戦極意その1●船の部位の名称、役割分担を知る!
ペーロン競漕で使用する船は弓形の細長いのが特徴。船の先端の尖った部分は、舳先(へさき)といい、俗にチャセンとも呼ばれる。ここが黒く塗られているのはラインをはっきりさせるためで、赤く塗られている部分は魔よけの鏡の意味があるのだとか。この船に漕ぎ手26名、太鼓、ドラ、舵取り、あか汲み各1名の約30人が乗り込む。各ポジションの役割が分かると、その動きの変化にも敏感になって数倍楽しめるのだ。

役割が大事!

★ナガジン!勝手にチェックポイント!
新船のチームは強い?
福田本町では今年、船を新調。新船の名前は“大門”だ。どの地域でも5〜6年に一度新調されるものなのだとか。やっぱり新しい船だとやる気も俄然出るような気がする。新船の船をマークしてみよう!

新船・大門

◆“ペーロン競漕”はこう楽しむ!
観戦極意その2●誰もが目指す漕ぎ手のホープ!一番櫂
ペーロンの船が弓形になっているのは水の抵抗を抑えるため。そのため、おのずと水面までの距離が違ってくるので、漕ぎ手が持つ櫂は座る場所によって長さが違う。いわゆる“おもて”と呼ばれる前に乗り込む漕ぎ手の櫂は長く、漕ぎ手全体を引っ張ることができ、腕力のある人がこの“おもて”を受け持つ。中でも、ペーロンをする人にとって誰もが憧れ、目指すポジションが船首の漕ぎ手の一番櫂(いちばんがい)。この力強い櫂さばきに、熱い視線を送ろう!


漕ぎ手のホープ・一番櫂


◆“ペーロン競漕”はこう楽しむ!

観戦極意その3●囃子と息を合わせ、一糸乱れぬチームが強い?
太鼓とドラのリズム、それに合わせた「よーいさー」という掛け声に合わせて櫂(かい)で力強く水をかいて前へ進むペーロン競漕。この太鼓とドラのお囃子隊のリズムも重要なポイント! 彼らの打ち方一つで櫂さばきも違ってくるというのだ。囃子のリズムは、スタート、追い込みなどレース展開で変化をみせ、漕ぎ手の掛け声も変わってくる。中には、他チームの囃子に流されて、未リズムを崩してしまうチームもあるとか。お囃子と一体化したチームが強いのは間違いない!




◆“ペーロン競漕”はこう楽しむ!
観戦極意その4●舵取りの技が勝敗を決める!
舵取りは長年の経験と感が必要とされるキーマン! 特に折り返し地点では舵取りの腕次第でその後のレース展開が決まるといっても過言ではないほど重要なポジションなのだ。
福田本町の舵取り・原孝文さん(38)のペーロンデビューは、中学時代。以後25 歳までは漕ぎ手を、その後舵取りに変更して13年のキャリアを持つ。
原さん「その日の天候、海上の状況を読み取り、できるだけ折り返し地点まで最短距離で行くようにすること、また、漕ぎ手が漕ぎやすいように常に船を平行に保つようバランスをとるのが舵取りの役目。やはり海上の潮の流れや波、風の有無、漕ぎ手の左右の重量バランスによって舵さばきを変えるところが、苦労する点ですね。しかし、この舵取りの腕ひとつで勝負が大逆転する可能性もあるので、折り返しの旗をいかに最小範囲で回るか! ターンのタイミングをどこで始めるかが何年経っても難しいと同時に、舵取りの醍醐味です」
勝敗を左右する舵取りの妙技、特に折り返し時の技にも注目しながら観戦してみよう!

さて、福田本町の連日に渡る日没後の練習で、暗闇の中、クルーザー上で厳しい指導を行っていたのが大石司監督(43)。

大石監督「数年前よりコース距離が短縮され、タイムも4分後半〜5分前半の短時間での勝負となってきました。各チームとも力は拮抗しているので、とにかくスタートダッシュで遅れないことと、ベテランと経験の浅い若手の櫂がバラバラにならずいかに揃うかがポイントになってきます。あとは気迫のみ!」
と、勝利のポイントを語ってくれた。

福田本町チームは去る6月17日(日)に行われた第41回長崎市福田連合青年団ペーロン大会では残念ながら6チーム中4位という成績だったため、単独では7月末の「長崎ペーロン選手権大会」には出場することができなくなった。しかし、福田東部・大浜チーム主体のメンバーの中に、本町のメンバーも数名乗り込むことが決定! ぜひ、観戦の際は福田東部チームにも熱い視線を!



田上市長によりスタートフラッグが振られ、熱戦が繰り広げられた
第41回長崎市福田連合青年団ペーロン大会の様子
 
最後に大石監督にペーロンの醍醐味をお聞きした。

大石監督「横一線に並んでスタートフラッグが降られるまでの緊張感と、折り返してゴールを目指し、抜きつ、抜かれつの接戦をした時の充実感は格別です。」

スタートのフラッグ

ペーロン競漕はわずか百分の一秒を争う競技。決して実力だけで勝負が決まるものではなく、天候その他、運なども含めた様々な要因で勝敗が左右される。その難しさが、選手にも、そして見るものにも極度の緊張感を与えてくれるのだろう。緊張感と充実感と奮い立つような感動が味わえる最終決戦が間近に迫っている!


接戦のゴール!


長崎ペーロン選手権大会

伝来から340余年を経た今日でも、長崎の人々に愛され、春のハタ揚げ、盆の精霊流しとともに、伝統行事の柱の一つになっているペーロン。旧暦の端午の節句である6月から7月を中心に、各浦々で勇壮な海のレースが展開されてきたが、その総決算ともいえる恒例の「長崎ペーロン選手権大会」が、今年も長崎港で催される。地域チームはもとより、中学生、女性選抜の白熱した戦いが、みなと長崎の夏を華やかに彩る! ぜひ、今回紹介した観戦極意をふまえた上で間近で声援を送ろう! 白熱するのは、決して選手だけではないことが分かるハズだ!

日程/平成19年7月28日(土)、29日(日)
会場/長崎港内(本部席:松が枝国際観光埠頭)
大会内容(予定) 
●1日目/28日(土)
 ○開会式
 ○中学校対抗レース(予選〜決勝)
 ○女性対抗レース(予選〜決勝)
 ○職域対抗レース(予選〜決勝)
 ○閉会式
●2日目/29日(日)
 ○開会式
 ○各地域対抗レース(予選〜決勝)
 ○閉会式
料金/観覧スタンド入場券500円
体験ペーロン(無料でペーロン体験ができる!レッツ、チャレンジ!)
ペーロン観覧船(ペーロン開催中、2日間とも無料観覧船を無料運航。海からの観戦は迫力満点!)
問い合わせ/TEL095-823-7423(長崎ペーロン選手権大会実行委員会〈長崎国際コンベンション協会〉)

※その他、8月以降に行われる各地区ペーロン大会(伊王島・為石・川原・蚊焼・香焼・脇岬・野母・樺島)の情報
http://ns.at-nagasaki.jp/nitca/association/event/chiku.pdf


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