◇古賀植木ものがたり

【現代の古賀植木を支えるスポット&人々】

次代を担う若き植木職人にインタビュー



写真右から●久保田健一さん(樹木医)●久保田彰さん(さるくガイド )
●若杉文久さん(さるくガイド)

ナガジン! 皆さん子どもの頃はどんな遊びをしていたんですか? 小さい時から植木職人になろうと決めていました?

久保田(彰)さん(以下敬称略)
「小さい時から見てきたから自然とね。」

若杉さん(以下敬称略)
「子どもの頃から環境が違いますからね。花をむしらない。植物を大切にする。そんなのが当たり前だったし。」

久保田(健)さん(以下敬称略
)「川、山、みんなで椎の実やら、山の実を採りにいって“これは食べられる、これは食べられない”みたいな(笑)。」

若杉
「とりもちを作るのに庭木の皮を剥いだらダメっていわれたり。それで木ば枯らして怒られてきた先輩達(笑)。地元に“緑の少年団”あって小学3年生になったら入ることができます。」

久保田(健)
「そこで少しずつ緑との関わりが深まっていくんですね。身の周りに木とか草とか鳥や虫がいるのがあたりまえという自然の中で育ってきた感じやろうね。」

ナガジン! 子どものころから手伝いはしていたんですか? 

久保田(彰)
「小学校から夏休みになるとやっていましたね。草むしり、サツキの剪定。」

ナガジン! それは“苦”なく?

久保田(彰)
「いやぁ、苦ですよ(笑)。」

久保田(健)
「水害の時は、中学生で泥運びをしたのがきつかった。」

若杉
「昔は植木をかつぐのに今のように機械はなかったから、人手が足らん時は、学校で勉強していても「ちょっと来い!」って呼び出されていましたよ。」

久保田(彰)
「今も農業高校なんかそれが当たり前ですよ。そっちが実践でためになるけんね。」

ナガジン! 皆さんのお宅の庭はどんな感じなんですか?植木職人という仕事は趣味の延長であったりします?

久保田(彰)
「健一くんのところの庭はすごいよ。」

久保田(健)
「うちは生産している植木の畑やけんね。うちの親父は寝ても覚めても植木のことだけ。趣味の域やったけど、自分はそこまではいかんけど、やっぱり本を読むなら植木の本とかになってしまうね。」

久保田(彰)
「自分はずっと作りかけですね。植木が好きというより、作るのが好きだから。佐賀に九年庵ってあるけど、うちはもう13年庵って感じ(笑)。」

ナガジン! 昔のように手入れの行き届いた個人の庭というのは少ないでしょうが、何かアドバイスをいただけますか?

若杉
「花木は1、2年は楽しくていいけど、その後管理できるかが問題ですよね。」

久保田(彰)
「世代交代して息子の考えが違うという理由で剪定を断られたり、親御さんが倒れられた場合、娘さんは意志を継いで、庭木を大切にするとけど、これが息子さんだと駐車場にしたり。というのが今の傾向ですね。また、剪定の時に、植木の価値がわかないためか、単に夫婦の好みの違いで意見を求められることはありますね。」

久保田(健)
「昔の人と今の人とのライフスタイルも違うからね。植木は売る時は植木としての商品価値だけど、庭に植えて何年か経つと動かせない庭木となるから、庭全体として全体の価値になるんですよ。だから、値段だけではなくて、庭木がその庭に合ってさえいれば、後は脇をしめる植木が必要ですよね。」

久保田(彰)
「それから、専門的に言えば、造園と植木職人は違って、庭師による造園工事や剪定というのは建設業なんですね。でも、古賀の植木職人の場合は、植木に合わせて門を作ったり、門に合わせて植木を置いたり。植木生産者も育てながら剪定、造園、庭掃除まで全てをする。」

ナガジン! では、家を建てる時は最初から植木屋さんに入って頂く方が合理的ですね。それにしても、植木って金額が大きいですよね。古賀の町に何気なく立っている木で何百万もするものもあるって聞いてびっくりしました。

若杉
「しかし、宝石店なんて小さなケースの中に入っていくらでしょ?」

久保田(健)
「宝石はカラット単位やけど、植木はトン単位やけんね(笑)。」

若杉
「だから私は家内に言うんですよ。“30万、50万する指輪ばはめるなら30万、50万する大きか庭石のあるぞ、そいばはめてまわれ!”ってね(笑)。しかし稀少価値としては、庭石一個しかなかですもんね。ダイヤモンドはいっぱいあるでしょうけんね。」

久保田(彰)
「そういえば、植木好きの社長さんが植木は買って植えておけば、それを見て誰もが楽しめるけど奥さんの指輪は一人でしか楽しめん!って言っていましたよ。」

ナガジン! では最後に、今後、皆さんの力で古賀植木をどのように発展させていきますか?

久保田(彰)
「これ以上になるという展望はないですけど、それなりに残っていかんばですよね。」

若杉
「昭和30年頃に古賀に挿し木の技術が入ってくるまでは分け木が主で、時間をかけて作るから稀少価値が高くてサツキだけ作っても高い値段で売れたけど、今は造園などの様々な知識も技術も要求されますよね。」

久保田(彰)
「でも古賀の土地はやせていて、植木の成長が早くないぶん締まった植木になるといういい面もある。」

久保田(健)
「他の地域では街路樹系を手掛けていて、生産して販売できれば、何年かに全部売りきってまた作りなおすとけど、古賀の植木は特に作り込んでいるものが多い。10、20、30年、100年かけて作っているからそれを変えたら、お客さんが欲しいという時に作りはじめんばけん、それだけの年数がかかるんです。でも。その丁寧な植木づくりが古賀植木の特徴だし、これを続けていかんばでしょうね。」

ナガジン! 同業者が多いのに皆さん意外にライバル心がなく、仲がいいのも古賀の植木職人さん達の特徴。今後も質の高い、古賀ならではのこだわりをもった植木を提供してもらいたいし、できれば長崎じゅうの数多くの個人庭園が息づくようなお手伝いをして欲しいものだ。
ふれあいまつり(古賀植木まつり)で、植木を購入したという学校帰りの古賀小学生の生徒を発見!植木職人のたまごが着々と育っている!
兒玉俊樹くん
若杉さんと久保田彰さんは、今年はさるくガイドとしても活躍中。“通さるく”に参加するのが、古賀を知る一番の早道だ!

さるくガイド若杉さん


植木の里・古賀の窓口、長崎市植木センター

植木に関する情報提供や相談はもちろん、古賀の町に関する質問にも応じてくれる場所だ。出迎えてくれるのは、植木職人さん達からも“先生!”と呼ばれる松尾さん。実はこの松尾さん、元諫早農業高等学校の先生だった方。頼もしいアドバイザーなのだ。ここは、自由にインターネットを楽しめる“パソコン体験コーナー”や1時間180円から利用できる研修室も完備。定期的に植木に関する講座も開かれていて、様々なニーズに応えてくれるスポットだ。

       
玄関左横にある「水琴窟(すいきんくつ)」も必見! 杓子で水を落とすと、一瞬にして心を潤すかのような美しい音色が響く。一度お試しあれ。

●JR長崎駅からのアクセス

JR/JR長崎駅から市布経由の普通列車に乗車し、肥前古賀駅下車。徒歩7分。
県営バス/長崎駅東口バス停から諫早方面行きに乗車し、鶴の尾バス停下車。徒歩2分。
車/JR長崎駅から約25分。

TEL.095-837-8182 
〒851-0131 長崎市松原町2624-1
開館/9:00〜17:00 休館/毎週月曜日、年末年始
駐車場/あり(無料)
http://www.city.nagasaki.lg.jp/nogyo/ueki/index.html


長崎市植木センターのイベント情報
夏の講座
【クロマツノ手入れ=芽切り法】
期日/平成18年6月18日(日) 
時間/9:00〜15:30
対象者/定員30名(脚立に登るため体力に自信のある方)
受講料/無料
講師/古賀植木園芸組合員
申し込み方法/6月1日(木)〜13日(火)の期間中に、直接(はがき一枚持参)、または往復はがきに住所・氏名・年齢・電話番号を記入の上、下記の住所まで。

7月以降の予定
【朝顔まつり】
期日/平成18年7月23日(日) 
【子ども講座】
前期/平成18年7月23日
後期/平成18年8月20日
※植物採集など、自由研究のお手伝い



★ 自慢のお庭拝見! 茂樹園(せいじゅえん)
植木職人の庭は見事な植木畑!
広大な敷地はまるで迷路のよう。ここは、樹木医でもある久保田健一さんの庭園だ。久保田さん曰く、植木畑というように、イヌマキの大型仕立物植木や手入れの行き届いたクロマツがきれいに配列している。盆栽も整列! さすが植木職人さんの庭だ。個人のお客さんより、業者が今度家を建てるお客さんを連れて来ることが多いのだとか。宝物を探すかのように散策すれば木々が発する“気”で元気がみなぎってくる。

〈3/3頁〉
【最初の頁へ】
【前の頁へ】