◆復元空間へもずずずいーっと!

長崎奉行所立山役所へいざ潜入!

さて、展示物や3Dガイダンスシアターによって当時の長崎奉行所を楽しく理解したところで、いよいよ復元された長崎奉行所立山役所へ足を踏み入れよう。ここでの注意は、ここからは土足厳禁だということ。用意されている袋に下足を入れ、持参して見学するため、女性はブーツなどを履いているとかなり邪魔になるので注意しよう。


まずは右手に注目! お客を送迎して礼をする式台と呼ばれる1段低い板敷きがある。いわばここが玄関口。復元された石段を上りあがるとこの正面に出るのだ。新築だけに、材木のいい薫りが鼻をくすぐる。式台の周囲は長崎県産材である対馬産のヒノキやスギを、その他の材木は和歌山吉野のスギやヒノキを使用している。そして正面、分厚く重い門扉の柱には、樹齢500年ともいわれる巨大なラオスヒノキが使われているのだという。左側には床の間を設けた玄関。かつてはお客を招き入れるこの畳の間のことを玄関といっていたのだという。床の間には、様々な武具が飾ってあったそうだ。



◆ココでのポイント!
復元された奉行所内に足を踏み入れての第一感想……「天井が高い!」。格式高い寺院などの天井が高いのと同様に、奉行所も格式が高い建造物のため、天井が高く造られている。天井が高い利点は、この空間を風が通り抜け、ひんやり涼しいこと! 長崎奉行所はどうも“夏仕様”になっているようだ。

それでは、この玄関に入ってみよう。襖や障子、欄間など、シンプルながら落ち着いた配色で品のいい造り。まるで往時の情景が浮かんでくるかのようなものになっている。実は通常復元とはいっても、城など、正確な資料を手にできない復元の場合、わからない箇所は無地など、無難なものにするのだという。この長崎奉行所立山役所の場合は、当然昔のことでわからないことも多いが、そこは割り切って復元整備。襖の柄は絵図に描かれたもの、障子の格子模様なども、当時記された資料などを参考に復元された。そのため、襖は7枚貼り合わせた“七重貼り”になっているので、相当に頑丈なものらしい。



◆ココでのポイント!
玄関、玄関から続く使者之間ほか、奉行所内部屋の柱と梁を組んだ部分には、“釘隠し”と呼ばれる飾りが施されている。これはその名の通り、釘を隠すためのもの。襖の取っ手にしてもこの釘隠しにしても、柄などの詳しい資料が残されているわけではないが、このようなものが施されていたという事実から復元されたのだった。


それにしても昼間だというのに奉行所内は薄暗い。天気によって廊下などは特に暗いと感じる。来館者のために天井近くに小さな照明が付けられているが、本来は行灯の灯りだけだったため、もっと暗かったと推測! さて、この廊下を左に曲がると、いよいよ右手にTVの時代劇などでたびたび目にする“お白洲(しらす)”が見えてくる。


◆ココでのポイント!
このお白洲も絵図面をもとに復元。罪人が座る場所に敷き詰められた砂利も、敷地内から多少出土し、現在の砂利に混ぜられているのだとか。それにしても時代劇では、その名の通り白い砂が敷き詰められているが、小石が敷いてあったからいうだけで、訴訟を裁判し罪人を取り調べる場所を奉行所においてお白洲といったようだ。廊下との境には戸袋があるが、絵図面などの資料には、縁部分には戸があった記述がなく、目の前が岩で雨風を避けられたためか、吹きっさらしだったと思われる。このお白洲では、密貿易などの取り調べ風景を地元の役者さん達が再現する寸劇を週末などに展開する予定だとか。まるでロケ風景を間近で見られる感覚!楽しみだ!



お白洲前の部屋は、対面所、次之間、使者之間と呼ばれる面会や控え室として使用されていた部屋。また、そのほかに長崎奉行の職務の一つだった密貿易の取り締まりも行なっていた。現在、緋毛氈の上に、生糸や反物、象牙に美術品など当時オランダ船や唐船が運んできた積荷と同様の品を展示。その当時も外国からの貿易品の荷改めがこのように行なわれていたという。また、その場で幕府への献上品も納められ、奉行も気に入ったものを納めていたというから、長崎奉行の任期を終える頃には皆私腹を肥やしていたらしい。


さて、対面所の奥は、長崎奉行の応接間、居間というべき書院。ここは外国使節や福岡・佐賀藩主の応接など、特に重要な職務の際に使われていたという。


◆ココでのポイント!
書院は、重要な部屋だっただけに、これまでの部屋よりもシンプルながらも少しだけ格式が上がっていることに注目しよう。先程玄関で目にした“釘隠し”も当然ながら施されている。がしかし、なんと金縁! さらに、建具もさらに細やかな技術が! 今回、施工を担当したのは、神社や寺院などの建築を専門とする久留米の宮大工さんと地元長崎の大工さん方。障子には、“地獄組み”という組子が上下左右隣り合うすべての桟(さん)が、織物のようになった工法を、また、当時は幅広のサイズがなかったことから工夫され、小さな障子を石垣のように見えるように交互に貼り合わせた“石垣貼り”が施されている。これらは奉行所内の他の部屋にも取り入れられているものもあるが、その細やかな技術が集結しているのは書院。細部にも目を向けてみよう。
地獄組み


釘隠し


石垣貼り


厠♀


厠♂

長崎奉行所立山役所の一部を復元した長崎奉行所ゾーン。展示室でしっかり予備知識を頭に入れ、復元部分に足を踏み入れると感慨もひとしお。往時の様々な情景が思い浮かぶことだろう。

■予告!■
オープン後の取材を加え、近々『長崎歴史文化博物館・第二章「長崎海外交流史を旅する」(仮題)』を掲載予定。御期待あれ!!


◆ずずずいーっと!歴博ダイジェスト

平成17年11月3日(祝)、いよいよオープン!
“歴博(れきはく)”こと、長崎歴史文化博物館


48000点もの展示物が一堂に集結した迫力の博物館
長崎県と長崎市が、建築と運営を一体となって行なう全国初の取り組みで誕生した全国有数の「海外交流史」をテーマにしたミュージアム。展示は大きく歴史文化、長崎奉行所、企画展示の3つのゾーンで構成。常設の歴史文化ゾーンでは、ポルトガルやオランダ、スペイン、中国、朝鮮との近世海外交流史をテーマとした貴重な資料の展示や、海外貿易により磨かれた長崎の伝統工芸を一堂に集めた圧倒的な質と量の収蔵展示に体験的要素が加えられている。また長崎奉行所ゾーンでは長崎奉行所立山役所の一部を復元。お白州などでの寸劇などを通じて当時の情景を楽しく再現する演出もある。長崎奉行所の犯科帳やキリシタン関係の踏み絵などの重要文化財資料も必見だ。

〈2/2頁〉
【前の頁へ】