ド・ロ神父の偉業によって栄えた
開拓地・出津エリア


出津エリアは、ド・ロ神父が建てた出津教会の周囲に様々な施設が集中する外海の文化・観光のシンボルゾーン。


ド・ロ神父は、長崎における教会建築に大きな役割を果たしている。大浦天主堂に隣接する国指定重要文化財の旧羅典(らてん)神学校もド・ロ神父によって設計・施工された建物だが、その後明治15年(1882)、神父は出津教会(県指定有形文化財)を建設した。
その後、明治24年(1891)に一部改造、同42年には玄関部を増築し、現在の教会の形が整えられた。この玄関部に、祭壇の屋根にある既存の装飾等のほかに鐘塔を設けるという珍しい外観。外壁は煉瓦造り、玄関は石作り、内部は木造で、三廊式の漆喰塗り平天井となっている。屋根は瓦葺。しかもとても低い。フランス人宣教師のド・ロ神父としては、大浦天主堂のようなゴシック様式などの建物を希望したのだろうが、これは、海岸に面した風の強い立地条件を配慮しての建築なのだそうだ。


出津教会


出津文化村には、ド・ロ神父が力を尽くしこの町を支えた証である建物と、その歴史を今に伝えるいくつかの文化施設が点在している。


まず、入り口からすぐの場所にあるのが、外海を舞台に描かれた小説『沈黙』で知られ、外海・黒崎町に文学館を構える作家・遠藤周作の沈黙の碑
『人間がこんなに哀しいのに主よ海があまりに碧いのです』
と、沈黙の中の一節が刻まれている。この碑の背後には、ちょうど遠藤周作文学館を望むことができる。



沈黙の碑

外海町の長い歴史と共に、先人達の足跡、苦悩を知ることができるのは、外海歴史民俗資料館。隠れキリシタンに関する資料が豊富に揃っているので注目したい。



外海歴史民俗資料館

■開館時間/8:30〜17:00
■入館料/一般300円・小中高生100円
■休館/12月29日〜1月3日
■問い合わせ/TEL0959-25-1188


外海子ども博物館
は、身近な科学の面白さや不思議さ、また“池島海底炭鉱”や“自然観察ゾーン”など、外海の自然と人との関わりを体感できるミュージアムとなっている。
開館時間/9:0017:00 
入館料/一般150円・小中高生100円
休館/12月29日1月3日
問い合わせ/TEL0959-25-0428

深い人類愛とフロンティア精神で外海地方の産業、社会福祉、土木、建築、医療、教育などに奉仕したフランス人宣教師ド・ロ神父の遺品を展示するのは、ド・ロ神父記念館(県指定文化財)。なかでもド・ロ神父がキリスト教の教義を信者にわかりやすく説明するために作成した「ド・ロ版画」は興味深い。また、100年以上の時を経て今でも美しい音色を奏でる「ド・ロ神父のオルガン」も展示されている。また、建物はド・ロ神父が設計・施工したもので、現在、旧出津救助院の一部として国の重要文化財に指定されている。


ド・ロ神父のオルガン


ド・ロ神父記念館
■開館時間/8:30〜17:00
■入館料/一般300円・小中高生100円
■休館/12月29日〜1月3日 
■問い合わせ/TEL0959-25-1081
また、ド・ロ神父が困窮を極める村人達を救うため、私財を投じて設立した授産場(後の旧出津救助院国指定重要文化財)や、ド・ロ神父独自の工法で築かれたド・ロ塀が延びるマカロニ工場は、共に建物もさながら、ド・ロ神父が多方面に渡って、外海の人々を支えてきた証として貴重なものだ


マカロニ工場・ド・ロ塀

出津文化村から車ですぐの野道キリシタン墓地には、このド・ロ神父が、愛した多くの信徒達と共に眠っている。かつてのド・ロ神父の墓碑は中段右手に今も存在するが、現在は多くの人々が訪れ、祭典などが行なわれることもあり、入り口に新たな墓碑が建てられている。


野道キリシタン墓地


   ド・ロ神父の墓

この墓地から10分程車を走らせた牧野地区の山中にあるのがバスチャン屋敷。ここは、キリシタン迫害時代に宣教師に代わって外海地方で熱心に布教したといわれている日本人伝道士バスチャンの隠れ家があったと伝えられている場所だ。現在の建物は復元ではなく、発見後新たに建てられたものだが、水が湧き出、山深い場所でありながらも太陽の火が差し込むまさに神聖な場所という印象だ。


バスチャン屋敷跡
 
 check! 今も形跡が残るド・ロ神父の偉業

ド・ロ神父は赴任してくると布教はもちろんのこと、同時に地域住民の福祉と生活向上のため、様々な計画を立て、農漁両面に力を注がれた。バスチャン屋敷跡近くの大平(おおだいら)と呼ばれる地区は、明治17年(1884)から開墾を行ない、小麦、さつまいも、お茶など様々な農作物を栽培していたという。この開拓農地には、当時ド・ロ神父が自費で掘った深さ9mの井戸や、明治34年(1901)頃に建てられた農作業小屋が今もその形跡を留めている。道なりの赤いレンガ塀、また背後から見渡すこの小屋は、まるで発掘された遺跡のようで驚かされる。


ド・ロ神父農作業小屋


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