今回のナガジンはJR長崎駅から所要時間約50分。新たに長崎市へ加わった外海エリアへ車を走らせてみた。そこは角力灘(すもうなだ)が広がる美しい景観に包まれた隠れキリシタンの歴史ある町。今もその歴史にふれられる史跡や、教会、自然に満ちた憩いの空間が点在。主な見どころをピックアップしてみることにした。


ズバリ!今回のテーマは

「魅力拡大した長崎の夕陽の名所へドライビング!」なのだ


●JR長崎駅からのアクセス
長崎バス/長崎駅前バス停から桜の里ターミナル行きに乗り終点下車。桜の里営業所で瀬戸・板の浦行き、または瀬戸・板の浦直行行きに乗り換え、黒崎教会前バス停まで約80分、出津文化村前バス停まで約85分、役場前バス停まで約90分。
車/長崎駅前から滑石経由、国道202号線、黒崎まで約50分、出津文化村まで約55分、神浦まで約70分。


まずは外海エリアについて予習
押さえておきたい重要ポイント5

1.外海の景観・夕陽
外海エリアの魅力はといえば、日本一の清流となった神浦(こうのうら)川、日本棚田百選の大中尾棚田など海、山、川の美しい自然。なかでも一押しは、西に広がる角力灘(すもうなだ)から五島灘に沈む雄大な夕陽だろう。もちろん、天候に関わることなので毎日見ることは難しいが、運良く晴れた日に爽快ドライブに出掛けた際には、ぜひ日没まで滞在することをおすすめしたい。
外海の夕陽

2.隠れキリシタンの里・外海
外海エリア最大の特徴であり魅力は、隠れキリシタンをはじめとする独自の歴史と文化を持つところ。黒崎、出津(しつ)、大野の3つの教会は、いずれも信徒達の多くの犠牲と汗の奉仕によって建てられた心の拠り所。その他、各所に隠れキリシタン時代を物語る史跡が残されている。海沿いの国道202号線だけではなく、山中にある遺構へもぜひ足を運んでみよう。
サン・ジワン枯松神社

3.聖なる開拓者・ド・ロ神父
明治12年(1879)、外海地方の主任司祭として赴任してきたフランス人宣教師であるド・ロ神父(正式にはマルコ・マリ・ド・ロ神父)は、フランスのノルマンディのバイユ郡ヴォスロールで1840年に貴族の家庭に生まれたのだという。外海へ赴任したド・ロ神父は、深い人類愛をもって、当時困窮を極めた暮らしをしていた外海の人々を魂と肉体の両面から救い、生涯の全てを捧げた偉大な人物だ。何より、建築、製粉、搾油、パン、マカロニなどの製法、農機具、イワシ網工場などなど、あらゆる知識と能力を持ち合わせていたことに驚かされる。出津文化村内施設をゆっくり見学して知識を深めよう。
ド・ロ神父

4.3つの清流と3つのトリコロール橋
黒崎、出津、神浦。この3つのエリアには、それぞれ同名の川が流れている。つまり、外海エリアはこの3つの河畔に集落ができ、栄えていったのだ。その証として、神浦には教会はなく寺院が点在する。また、海あり、山ありの外海町沿線、国道202号線は有名なドライブコース。このドライブコースに彩りを添えているのが、フランス国旗と同色の青、白、赤の3つの橋(青/四谷河内橋 白/荒川橋 赤/新神浦橋)だ。これはフランス・ヴォスロール村との姉妹都市交流にちなんだもの。車で走っていても楽しめるアクセントといえる。

5. 外海名物! ド・ロさまそうめん&パスタ
楽しみは、やっぱり御当地の味! ここ外海エリアではド・ロ神父が故国フランス産の小麦粉を原料に落花生油を引き油とする独特の製法を考案して造り伝えた純粋手づくりのそうめん。コシの強さと落花生油の味わいが魅力だ。パスタは、遠藤周作文学館内のアンシャンテで味わえる。



カーブを曲がると、そこは
大パノラマの海・黒崎エリア

まずは市街地方面からアプローチした場合、外海エリアの入口、黒崎町。このエリアの見どころには、大城(おおじょう)・小城(こじょう)の雄大な景観と赤レンガの黒崎教会などがある。海岸はサーフィンのポイントとしても有名!

この黒崎に2003年4月に開園した新スポットが、エコ・パークそとめ 黒崎永田湿地自然公園。黒崎永田地区の海岸部に開けたこの湿地は、面積約9.8ヘクタール。全国的にみても稀で、特に日本一のトンボの生息地として高い評価を受けているのだそうだ。恵まれた自然の景観を楽しみながらの散策はとても心地よく、安らぎのひとときを与えてくれる。今まで目にもとまらなかった昆虫や野鳥、草花……ウスカワマイマイ、ニホンカガエル、ヒメアカネ、キツネノボタン、ヒツジグサ。この生命力あふれる姿を目にすると、何だかこちらまで力がみなぎってくるかのようだ。ぜひ、四季折々の生物や植物とふれあう散策を親子で、カップルで楽しんでみよう。
■開園時間/9:00〜17:00 
■入園無料
■問い合わせ/外海町行政センター・産業課TEL0959-24-0211

サン・ジワン枯松(かれまつ)神社は、日本人伝道士・バスチャンの師であるサン・ジワン神父を祀るキリシタン神社。周囲はキリシタン墓地になっている。ここは江戸時代、黒崎地方の隠れ(潜伏)キリシタンが密かに集まりオラショ(祈り)を捧げ伝習してきた聖地。祠の手前にある“祈りの岩”と名付けられた大きな岩がある。おそらくこの岩影で唱えていたのだろう。静寂に包まれた神聖な雰囲気漂う場所だ。


サン・ジワン枯松神社

祈りの岩

明治30年(1897)にド・ロ神父の指導で敷地が造成され、同32年(1899)から建設計画が進行、大正9年(1920)に完成した黒崎教会。信徒が奉仕と犠牲の結晶を一つひとつ積み上げたレンガ造りの聖堂だ。煉瓦造、平屋、桟瓦葺(さんかわらぶき)、簡素な構成が煉瓦の美しさを際立たせている。深い奥行を持つ内部はリブ・ヴォールト天井と呼ばれる天井で、ステンドグラスが印象的。付属する鐘楼は隠れキリシタンの帰依を願って設置されたものだ。


黒崎教会

遠藤周作文学館
平成12年5月13日開館。外海町が遠藤周作氏の代表作『沈黙』の舞台になったこと、また、遠藤氏自身がキリシタンの里である外海町の景観を気に入っていたことから、夫人の協力のもと設立された。作家・遠藤周作氏の生涯と足跡、遠藤文学に関わる展示物など、約2万5000点以上の貴重な資料を展示している。展示室には、生前遠藤氏が使用していた書斎を彷佛とさせるデスクと共に、生原稿、筆記用具といった貴重な遺品を展示。また、作家である以前に敬虔なカトリック信者である側面がうかがえる彼の生涯と足跡を辿った展示物は興味深いものばかり。ズシッと心に迫る文章が切り取られている。


遠藤周作文学館外観


内観


窓からの風景
 ■開館時間/9:00〜17:00
 ■入館料/一般350円・小中高生200円
 ■無休
 ■問い合わせ/TEL0959-37-6011
 
 check! 夕陽が沈む時をこの丘で待とう!

雄大な自然のパノラマが楽しめる黒崎地区の景観に欠かせないのが、大城・小城と五島へと続く大海原が織りなす風景。大城の頂上に位置する大城公園展望公園からは、刻々と穏やかな角力灘を美しく染めていく夕陽を目前に見ることができる。また、外海の最大の魅力の一つであるこの夕陽を見るならその名もいこいの広場 夕陽が丘そとめ公園が最も適した場所かもしれない。晴れた日には五島列島をも見渡せるこの公園から眺める海と空を黄金色に染める角力灘の落日は最高に素晴らしい。只今「道の駅」を建設中、平成17年度末にオープン予定だ。


〈1/3頁〉
【次の頁へ】


【もどる】