古賀人形に長崎ビードロ、現川焼。これらは古くから長崎に伝わる長崎が誇る文化遺産的品々。
いち早く異国文化が根付いていた長崎には、伝統に育まれた異国情緒豊かな工芸品も多いのだ。
手頃なものから高価なものまで様々だが、長年受け継がれてきた職人達の技、かつての技術に近づくべく研究を重ね再現、復元した工芸品。いずれも長崎を訪れたら土産にしてほしい逸品揃いだ。



しかし、せっかく購入しても芸術品ゆえに大事にしまったままで出番がないのも淋しいもの。
そこで今回は、長崎在住のテーブルコーディネーター・一瀬厚子先生にご相談。長崎土産を家庭で素敵に“普段使い”できる方法を伝授して頂くことにした。一瀬先生は、まさに“普段の暮らしを少しだけ素敵に”をテーマにしておられる方なのだ。
一瀬先生「私は“暮らし”とか“生活”という言葉が大好きなんです。飾って見るだけでもいいのですが、季節の草花やお料理をより楽しむために、気に入って購入したものは普段使わないともったいないですよね」
もちろん! これはあくまでも参考資料。アレンジは長崎土産を手にしたあなたしだいデス。


ズバリ!今回のテーマは
「もし、長崎土産でピン!とくるものに出会ったら、
日々の生活に取り入れてみましょう!」
なのだ


物にも思い出・・・観光で訪れた方なら長崎の旅の思い出に、長崎在住の方でも長崎の伝統工芸品を暮らしの中に取り入れて、日々の暮らしに素敵なスパイスを与えてみよう。


●一瀬 厚子先生 プロフィール
『SWEET TEA TABLE・HOME』主宰。
テーブルコーディネーター、日本紅茶協会認定ティーインストラクター。
〈賞歴〉家庭画報大賞テーブルコーディネート部門 優秀賞・ウェッジウッド賞、東京ドームテーブルコーディネートコンテスト入賞他。
★1998年より自宅にてテーブルコーディネート・紅茶・お菓子の教室『SWEET TEA TABLE』をスタート。その後、より家庭や家族を大切にした様々な暮らしの提案をという想いから“普段の暮らしを少しだけ素敵に”をコンセプトに2002年9月より『SWEET TEA TABLE・HOME』と改め再スタート。ご自宅にて月に一度教室を開いておられる。
●問合せ/『SWEET TEA TABLE・HOME』   TEL095-879-2785


長崎の歴史が垣間見れる
素朴さが魅力の古賀人形


古賀人形の代表格・西洋婦人はインテリアにピッタリ!
(コーディネート:一瀬厚子)


西洋婦人に阿茶さん、オランダさん・・・。京都の伏見人形、仙台の堤人形と並び日本三大土人形と称される長崎の古賀人形は、原色を取り入れた色使いが特徴的な土人形で、長崎の歴史や長崎で起こった様々なエピソードをベースに生まれたものが数多くみられる。
例えばシャモを抱く“阿茶さん”。中国貿易当時、とある貿易船役人が長崎の唐人屋敷に閉じこもり、シャモを飼って楽しんでいたのだという。屋敷に出入りしていた丸山遊女は、貿易船役人の相手がしたい、あのシャモになりたいと願い、遊女達はこの古賀人形の“阿茶さん”を多く求めたというのだ。
また“西洋婦人”は、当時商館長以下全員が単身赴任が掟だった出島和蘭商館に、前代未聞! 家族同伴で来日して大評判となった商館長・ブロンホフの夫人がモデルとなったものだ。


今から約400年前の文禄元年(1592)、京都の諸公卿(しょくぎょう)の御用達土器師、常陸之介(ひたちのすけ)という人物が日本漫遊で来崎し、旧長崎街道沿いにある小川家を訪れた。三代目小川小三郎のときだ。1年余り滞在した中で小三郎に土器製造の秘法を伝授した。その後小三郎は農業の傍ら副業として神仏、儀式用の土器を制作。
晩年に小型の人形を製造するようになったのがこの古賀人形の発祥なのだそうだ。
小川家の自宅前には5月に美しい花をつける老木の藤棚がある。かつてここには諸大名の休憩所となっていた茶屋があった。明治の頃には親族三家が古賀人形の制作にあたっていたが、現在では一軒だけ。「古賀の藤棚」は現在では唯一となった長崎土産、古賀人形職人である小川家の通称でもある。

藤棚の裏手にある工場を訪ねてみた。


小川さん
「昔から型は同じ物を使用してますし、赤色は途中原料が変わりましたが色も同じです。代替わりして変わったものといえば目の入れ方でしょうね。古いものと見比べると多少違いがあると思います。やはり目と口、難しいのは顔まわりで、描き手によってそれぞれ違ってくるんです。また、小さかったり単純なもの程、ひと筆描き。色によっては二度塗りすることもできませんし、神経使うのは色ムラですね。それと人物だと、鼻が欠けてしまうことも結構あります。不良品(写真右)が出たときは色を確認するために使います。また再生できるので無駄は全くないんですよ。




■鶏 ■仕上げの黒 ■出来上がり

鶏一つに色を入れる作業は乾かしながら約10分程度。
しかし、各工程ごとに作業を進めていくため1日に出来る数は限られているのだ。


19代目の憲一さんは作業をはじめて20年余り。現役18代である亨さんから徐々に代替わりを果たしているところだ。今も昔も一から手作りのため量産は不可能。全国から注文が殺到し、大型の物になると受注後約1年から2年は待たなければ手にできないのだという。しかし、工場に立ち寄ってみると愛らしい小物などは運がよければ製作中の物を購入することもできる。料金も取扱い店より割安。古賀人形を求めるならぜひ、今も往時の風情が残る旧長崎街道沿いの工場まで足を伸ばし購入したいものだ。

●問合せ

TEL095-838-3869 中里町1533
9:00〜18:00
土曜、日曜、祝日定休(見学は要連絡)
●アクセス
県営バス:JR長崎駅前東口から東厚生町行き(つつじが丘経由以外)に乗車し、藤棚バス停で下車。徒歩3分。(所要時間約40分)
車:JR長崎駅前から約40分
(JR市布駅から車で5分、徒歩20分)

19代古賀人形職人 小川憲一さん
 
●一瀬先生のアドバイス!


「素朴で暖かみがある古賀人形は、主人が大好きで長崎にいらした方によくお土産に渡すんですよ。30年以上の時を経て程よく色が剥げると風格が増してこの西洋婦人は素敵ですよね。季節の草花を添えてリビングに飾りたいです。また、今年は猿年ですが、古賀人形の中には“猿ヅッキャンキャン※”や、“鶏猿”“鶏”“大名馬”“猿乗り馬”など十二支に含まれる動物もありますから、お正月飾りにすると長崎らしさが出ていいんじゃないでしょうか。」
※ヅッキャンキャンとは、長崎弁で肩車という意。


今年は猿年、猿ヅッキャンキャンで正月飾り
(コーディネート:一瀬厚子)
協力/中の家ハタ店(たわら飾り提供) TEL095-822-0059




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