●長崎かんぼこの特徴を探るべく蒲鉾製造工場へいざ潜入!

魚肉をすりつぶして食塩、砂糖、調味料、卵白などを混ぜ合わせ、蒸したり、あぶり焼きにしたり、油で揚げたりした長崎かんぼこ。
海に囲まれた長崎県では昔から水産業が盛んだったため、かんぼこも早くから製造されてきたようだ。
現在、長崎県は年間生産額全国第一位を誇るかまぼこの町。
全国的にスケソウダラの冷凍すり身を原料としたかまぼこが多い中で、エソ、タチ、イワシなど以西底引き魚を多く使用してるのが最大の特徴らしい。


長崎新地中華街に工場、店舗を構える石橋蒲鉾店の蒲鉾職人・石橋道康さんに、現在の製造事情についてお話を聞いてみた。

石橋さん
「製法は、今は機械の力を借りています。
以前は魚をすり潰したり、包丁ですり身を蒲鉾の形にすることまで全部手作業でしたから。
もちろん、今でもすり身を触った時の感触など五感を使わなければわからない部分が多く、最終的には人の手にかかっています。
魚のブレンドの仕方、調味料の使い方、分量 、温度や湿度によって食感や味が変わってくるので、いまだに「あーそうか!これだ!」という発見がありますね。
味は、原料事情や調味料の変化に伴って自然と変化していますし、また、現代の人の嗜好に合わせて変えています。
私たちは地の魚、エソ、グチ(イシモチ)、ハモを使った長崎らしいものを作っていきたいと思っているのですが、漁業会社が減ってきていて、それらの魚が手に入りにくくなっています。
多くのかまぼこはスケソウダラなどの冷凍すり身を使ったものが主流ですが、私たちはできるだけ冷凍ものは使わないようにしています。
といってもエソ、グチ、ハモだけで作るとなると1本3000円前後と価格が高くなってしまい、それでは誰にも食べて貰えないので、それらに冷凍すり身をブレンドして作っています。」

なるほど……
それでは、かまぼこ作りの製造過程を覗いてみよう。

●石橋蒲鉾店の場合●

蒲鉾作りは朝5:00から始まる。
1年で1番忙しい時期である12月は、注文が通常の4〜5倍になり、1日14〜15時間、18名のスタッフがフルに活動。
14〜15名のアルバイトも加わり大忙しだ。


上の機械で、すり身に塩、でんぷん、
調味料を加えてよく練り上げる

[ちくわの製造工程]

機械ですり身を串に巻き付け、電気の熱(約800度)で焼き上げる。
10年前までは炭で焼いていたが上で回しているうちわで灰が飛び散るため、波長の近い電気に切り替えた。


焼く前

微妙な調節ができるよう、1本1本が手焼き。
多くのところでは機械化されている作業だ。
膨らみ、色などを見ながら1本約5、6分かけて焼いていく。
普段は1日100本から200本、多い時で1000本を焼く。




リズミカルに回転させていく


焼き上がり

この黄金色が長崎のちくわの特徴。
歯ごたえがしっかりしていて、ほとんど塩のみの味付けは、自然の旨味が生きている。


★取材協力 / 石橋蒲鉾店 TEL095-824-4561(新地中華街)

大正13年創業の石橋蒲鉾店は、板付き蒲鉾、ちくわ、揚げ蒲鉾など30種以上の蒲鉾類を作り続けている。
75年以上の歴史の中で『全国蒲鉾品評会』で農林大臣賞を受賞するなど、数々の賞も受賞。
品質にこだわった長崎らしい蒲鉾が特徴だ。


〈平成3年、全国蒲鉾品評会で
農林大臣賞を受賞 ちぎり天〉


Check!●蒲鉾屋さんの朝は早い!


早朝から製造作業を行なう蒲鉾屋さん。
当然出来た順に販売店舗へ配送されて店頭に並ぶことになる。
揚げかんぼこはやはり揚げ立てが美味しい。
揚げ立てのかんぼこを買い、ファーストフード感覚で近くの公園などで頬張るというのも一興ですよ。


●種類豊富で安くて旨い市場へ寄って買ってって!

かんぼこを求めて早朝、長崎市の中心街・浜町近くにある江戸町市場を訪れてみることをオススメしたい。

長崎は市場文化が根強く残る町で町中には多くの市場が点在している。
この辺り半径1キロの範囲内だけでも築町市場、金光(こんこう)市場、大黒市場など、たくさんの市場が存在する。

なかでも、早朝の江戸町市場の風景はひと味違う。
物色しながら歩いていると、歩道いっぱいに野菜や花を並べた露天商のおばちゃん達が次々に「こうてぇ、こうてぇ(買って!)」とせがんでくるのだ!
なんだかその光景を目の当たりにしただけで微笑ましくもあり、その豪快な量に比べあまりの安さにニンマリしてしまうのだ。
そんな朝4時ぐらいから開店する江戸町市場の中にはかんぼこ専門の店が数件並んでいる。


直接の卸しで同じ商品でも大型店舗などに比べると安いため、11月末から12月にかけては贈り物をするお客で大いに賑わうという。
県外のあの人に……長崎を離れて暮らしている娘に息子に……。
そしてお土産にいかがですかァ?
常連さんはこんな風にセルフサービス!



お店の人に何のかんぼこか訊ねながら買うことをオススメしたい。
会話を楽しむのが市場での買い物の醍醐味。




●揚げ立てを頬張りたい!人気の式見かまぼこ

長崎県内を見渡してもそれぞれの地域によって獲れた魚を使用して作る『○○かまぼこ』という名産品が多く見られる。
島原の豆腐かまぼこ、平戸の川内かまぼこ、五島のいかかまぼこなどなど……。
それだけ豊富に魚が獲れ、また需要があるのだ。
そんな中、長崎市内で名の通ったかまぼこと言うと、筆頭に上がるのが式見の特産、『式見かまぼこ』
現在2店舗の式見かまぼこを製造する店がある。
「揚げ立てがうまかとやもんねぇ」と言いながら車を走らせて買いに来る人、知り合いに差し入れに持って行くという人、そしてもちろん、工場から直接家へ持ち帰るいつもの常連さんも多い。
朝は8時前から夕方まで、工場が店舗になっているので随時揚げ立てのかんぼこを手にすることができるのがウレシイ!
式見かまぼこの特徴は、何と言っても歯ごたえ!
そして弾力ある歯ごたえゆえに、噛めば噛む程ほんのり甘くて濃厚な旨味が溢れ出てくるのだ。
使用する魚は企業秘密のシークレット!
しかし、良質の魚を原料としていることは、その味を堪能すれば一目瞭然なのだ。
JR長崎駅から車で20分。
ぜひ足を伸ばしてアツアツを頬張りに行ってみよう!

あまりのスピードに驚かされた、
すり身を形付ける作業


「揚げる時間はどのくらいですか?」
「決まってないんです、長年の感覚で……」


ホッカホカの揚げ立て。
湯気が見えますかぁ?

国道204号線に面したお店

★取材協力 / 船本かまぼこ TEL095-841-1635(式見)

Check!●冷えた揚げかんぼこを食べる時には……


揚げたてのアツアツを食べるのが一番いいに決まっているが、なかなかそうもいかない。
電子レンジでチンすると水っぽくなるし、再び揚げると油っぽくなる。
そこで持ち帰ったかんぼこを美味しく食べるコツを伝授!
オーブンで軽く焼くのだ!
カラッと温まり、出来たての美味しさに近くなるので試してみて。
(これは某蒲鉾店の店員さんから教わりました)


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