4.媽祖門(まそもん)〜媽祖堂(まそどう)
●一石三鳥の役割を持つ媽祖門●

大雄宝殿横、媽祖堂へ向かう際の門としてその正面に位置する媽祖門
単なる門としては随分りっぱな構え。
この門は建造物として素晴らしいだけでなく、多くの役割を持った門として、また予想だにしない事実が隠された門として注目度が高いポイントなのだとか。



立石さん
「この門は媽祖堂の門であり、さらに前面と背面との間に地覆石(じふくいし)を入れ前後の高さを変えることによって大雄宝殿正面と方丈を結ぶ渡り廊下の役割も兼ねているんです。
また媽祖行列などの祭りの際は媽祖堂と媽祖門との間で媽祖様を神輿に乗せたり下ろしたりするため、この媽祖門がギャラリー席の役割も果たします。

さらにこの門の中心を支点として媽祖堂側が山、鐘鼓楼側は埋立地だということが、平成元年(1989)の保存修理工事の際判明しました。
造りも天井を見てもらうと違いが分かりやすいが、媽祖堂側は和式の舟底天井、鐘鼓楼側は中国式の黄檗天井となっているんですよ」

双眼鏡を出すまでもなく、鐘鼓楼側の天井は丸みを帯びているのがわかる。
現在媽祖門を伴う媽祖堂があるのは全国で唯一崇福寺だけなのだとか。
国宝には指定されていないけれど、とても珍しく価値ある門だということがわかった。


さて、この媽祖門の奥が航海の守護神・媽祖様を祀った媽祖堂。

媽祖様の位置から見える風景は……と後ろを振り返ると、りっぱな媽祖門、そして鐘鼓楼。
この鐘鼓楼の両端に2本の柱がそびえ立つのが見えるが……これはいったい何だろう。

立石さん
「これは刹竿(せっかん)と呼ばれる旗を上げるための支柱です。
昔、この鐘鼓楼はこの位置にはなく、媽姐門からは海がスッポリ望めたそうです。
長い船旅を終え長崎港へ入港してきた人々が、この刹竿に立てられた旗を目印に船上から媽祖様を拝んだと言われています」

現在、刹竿が建っている場所は埋立地な訳だから、昔は確かに海が見渡せたというわけだ。
信仰心の厚い中国の人々は船上からこの崇福寺の方向へ手を合わせていたのかぁ。
そう言えば媽祖様は航海の神様とされているけど、単に船旅だけでなく、旅の守護神としても御利益があると聞いたことがある。

立石さん
「この媽祖様に関して面白い話があるんですよ。
数年に一度、媽祖さまの衣裳を着替えさせるらしいのですが、この媽祖様の体が何ともリアルに造られているそうで、着替えは必ず女性の檀家さんが行なうと決められているそうなんです」

えぇっ!興味あるお話。
しかしまさか媽祖様の裸を拝むことはできません!
観光客の方は媽祖堂前から純粋に旅の安全のみを祈願しましょう。

解剖結果!●「福」いっぱい!の寺


見た目赤くてカワイイから、どこに立っても絵になって写真撮影もラクラク。
さらに建物の配置、意匠などなど……どれをとっても意味がある。
中国人の宗教的観点、縁起ものが随所に散りばめられた、崇福寺はなんておめでたいお寺なんでしょう。
「福」を求めて、あなたも崇福寺へ訪れてみませんか?


長崎に根付く中国文化
中国盂蘭盆会 / うらぼんえ(旧暦7月26日〜28日)

死者の霊を慰めるため、在留する中国人が行なう盆祭りが毎年崇福寺で行なわれている。
毎年中国の旧暦で行なわれるため日程は定まらないが、今年は9月3日〜5日の3日間。
第1日は僧侶によりお経をあげ、釈迦、その他尊者の霊を慰め、第2日は同じくお経をあげ亡者や霊を呼ぶ。
第3日は全世界の霊に対し供物をあげ、迷い出た人に悪戯をしないよう金銀貨や着物等を意味する金山、銀山、衣山などを燃やして米饅頭を天に向けて投げ霊を送る。

いくつもの赤いランタンが灯され、唐人鉄砲や太鼓が鳴り響く日本とはひと味違う中国のお盆。
3日間のうち、最後の午後4時までは精進料理が、5時からは豚の頭の丸焼き、魚、貝類などの生くさが供えられる。


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【1.[1] 1.三門(さんもん)〜第一峰門(だいいっぽうもん)】
【[2] 2.護法堂(ごほうどう)〜大釜(おおがま)〜
3.大雄宝殿(だいゆうほうでん)】


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