崇福寺と言えば、国宝、重文(重要文化財)いっぱい!の赤い唐寺として知られる、長崎を代表する観光スポット。
実際、九州に5件ある国宝建造物の内、長崎県には3件(すべて長崎市)、その内2件が崇福寺にある(第一峰門と大雄宝殿 ※ちなみにあとの1件は大浦天主堂)。
国宝2件、国指定重要文化財5件を含む、計21件もの文化財がある崇福寺。
一つのお寺でこれだけの文化財をかかえているのは京都や奈良を除けば西日本随一なのだとか。

しかし、一口に国宝や重文がいっぱいでスゴイ!と言われても、どんな所がスゴイのかわからな〜い!という方も多いハズ。

そこで今回のナガジンでは、『国宝』や『重文』などにこだわらず、目に着いた興味あるものにズドンとスポットを当て、その対象物に関する疑問を一つ一つ解明していきながら崇福寺をじっくりひと回りしてみようという試みを提案!

パッと見てコレ何?と思うものにも、なるほど!と納得できる言い伝えられる話があったり、見れば見るほど不思議?が広がる意匠にも意味があったりと、崇福寺はビジュアル的にも楽しめ、かつ実に福々しい場所なのだ。

さてさて、はたして解剖からどんな事実が浮かび上がってくるのやら?

ズバリ!今回のテーマは
「見どころは 至るところに 崇福寺 頭上足元 気を抜くなかれ!」


今回は長崎市教育委員会・長崎国際文化協会主催の「文化財めぐり・清水寺〜崇福寺」で講師を務められた長崎市教育委員会文化財課事務吏員の立石明さんをナビゲーターに迎え、Let's go to崇福寺。
まずは立石さんからの「崇福寺へ行くなら双眼鏡かオペラグラス持参」の教えを受け、片手にデジカメ、片手に双眼鏡のいでたちで三門前からスタ〜トッ!


長崎市教育委員会文化財課事務吏員・立石明さん


1.三門(さんもん)〜第一峰門(だいいっぽうもん)
●魔除けと縁起ものが満載●


竜宮門とも呼ばれる立派な入り口。
楼門(二階建ての門)の赤い三門前に立つ。
(三門とは、ひとつの建物で三個の門扉を有する楼門をいう)

最初に目に着くのはやっぱり両脇に鎮座まします狛犬さま。
やっぱり日本の神社の狛犬とは違う感じ。
動きがあってしなやかなフォルム!

立石さん
「日本で狛犬とは一対の狛犬が並んだ場合、向って左が狛犬でオス、阿吽の吽といわれ、向って右が獅子でメス、こちらは阿吽(あうん)の阿なのですが、これは唐寺ですから中国製かと思われます。
日本の狛犬の感覚ではここの狛犬は左右ともメスの獅子で阿なのです。
しかし中国では口を開け閉めは関係無く、向かって左の毬を抱えているのがオスで、右の子獅子と戯れているのがメスだそうです。
向かって左がオスで、右がメスというのは日本も中国も同じです。
ちなみにオスが戯れている毬を繍球(しゅうきゅう)ともいい、この中から獅子が生まれると考えられているので、中国ではめでたいとされているそうです」

なるほど。でもこの獅子、どこかで目にしたことがあるような。
そうだ!新地中華街の中華料理店などの店先にもあるある!
皆さんも是非新地中華街へ出向いて見比べてみて。


ではでは屋根の両端にちょこんと乗ったあれってシャチほこ?

立石さん
「これは鯱(シャチ)または魔伽羅(まから)と呼ばれる想像上の動物です。
サンスクリット語でワニを意味し、体は水でできているとされています。
三門が2度も火災で焼失したため、火災から守ろうとする意味がこめられているようです」



それでは、いよいよ三門をくぐるとしよう。
と、門扉にはめ込まれた恐い顔をした獣の装飾が目に飛び込んでくる。

立石さん
「これは獣環(じゅうかん)と言われるもので、中国ではありふれている装飾品ですが、日本ではここが唯一のものです。
以前、盗難に遭い、幸い戻ってきましたが現在では大2面小4面ともにはずされ寺で保存。
残念ながら現在のコレらは模造品なのだそうです」

模造品とは残念。


三門をくぐり、国宝・第一峰門へ向かう坂段を上る。

階段脇に置かれた袖石には、三千年に一度実をつけ、食べると寿命を伸ばす生命の果実、または悪鬼を追い払う魔除けの意があるとして中国で縁起がいいとされる桃、裏には鯉の滝登りが彫られている。
中国で鯉は龍門という急流を登りやがて龍になるとされ、これを「登竜門」という鯉は出世魚として尊重されたこれまた縁起物だ。



坂段を登り切るといよいよ国宝である第一峰門前へ到着。
ここで双眼鏡を取り出してみる。
『第一峰』と書かれた扁額(へんがく・門戸や室内に掲げる長い額のこと)から視線をスライドしてみると驚き!
極彩色で描かれた様々な意匠が目に飛び込んで来る!!


さらにズーム!
何だか中国チックでカワイイなぁと前から眺めてはいたが、明らかに何だか分かるのは雲の形。
ほかの不思議な文様は何だろうかと思ってたんだけど……。


立石さん
「軒下などに描かれた色とりどりの文様は吉祥文様や宝尽くしと言われるものなんです。
瑞雲(ずいうん)、丁字(ちょうじ)、方勝(ほうしょう)と呼ばれる方形の首飾り、そして、現在でも漢方で珍重されている霊芝(れいし)、即ちさるのこしかけです」


裏へまわってみる。
赤い門扉に描かれているのは愛らしい青いコウモリと牡丹の花。





立石さん
「コウモリは中国で「蝙蝠(びぇんふー)」と発音し、「蝠」が「福」と同じ音であることから中国人の最も好むものの一つとされています。
吉祥を意味し、福寿を祝うものには必ずコウモリが用いられるそうです」



 

日本でコウモリというと不吉なイメージだけど、それは映画や小説の影響でごく最近のこと。かつては日本でも中国文化の影響で、また蚊など害虫を食べる益獣として縁起のいい動物とされていたのだとか。

立石さん
「第一峰門の屋根を眺めてみてください。
緑のラインでコウモリがかたどられているのが見えるでしょう?
(第一峰門をくぐり土産物店と護法堂との間に入るとよく見える)」


青い線で囲まれた枠内です。


Check!●魔除けのための伽藍配置

立石さん
「伽藍(から)配置とは、仏寺の中の建物の配置です。宗派により違いがありますが、黄檗宗(おうばくしゅう)では門が大雄宝殿などの本堂の主心線への見通しをさけ、必ずずらされて置かれています。これは魔除けのための配置とされています。
崇福寺、興福寺、福済寺、聖福寺、確かに全部そうなってますよね。」


〈1/3頁〉
【[2] 2.護法堂(ごほうどう)〜大釜(おおがま)〜
3.大雄宝殿(だいゆうほうでん)】
【[3] 4.媽祖門(まそもん)〜媽祖堂(まそどう)】


||[周辺地区地図]||


【もどる】