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更新日:2022年6月15日 ページID:038771
原爆被爆対策部 被爆継承課
平成29年度第2回 長崎原爆遺跡調査検討委員会
平成30年2月16日(金曜日) 10時00分~
長崎原爆資料館地下1階平和学習室
・前回会議での意見・指摘等への対応について
・山王神社境内の文化財的価値付けの方向性について
・山王神社の調査について
会長
ただいまから第12回長崎原爆遺跡調査検討委員会を開催します。
本日の議事、まず第一番目の前回会議での意見・指摘等への対応について事務局からの説明をお願いします。
事務局
〔前回に引き続き平成29年度山王神社確認調査について説明〕
調査位置は当初、拝殿に上がる階段の北側の斜面地から始めました。前回委員会後に、階段を挟んで反対側と、階段を上がった拝殿前北側の石造物のあるところを追加で調査しております。
被爆により発生した瓦礫を整理した痕跡を確認することを目標に調査を始めましたが、あたり一帯の地表面下の現況を確認し、石造物を含め記録をとることを目標に加えました。
階段南側の斜面地では表土下で固い異質な土が確認されたり、古い石垣と木の根が絡まっていたり、大きな石があったりするのが確認されました。どのような意味があるのかは不明ですが、進行中の調査で明らかになればと考えています。
階段を上った拝殿前には石造物の集積があり、今後、調査地を平面図で記録し、拝殿下の階段両側の石垣についても立面図・断面図を作成したいと考えています。
前回委員会で御指摘いただいた事項については、次のように対応しています。
○土壌に対する熱の影響について調査できないか。高熱で磁場の変化等が起こる。
→調査方法や金額等を考慮した上で、今後の調査を検討する。
○原爆による熱線の影響は一瞬であり、二次火災等による影響の大きさを考慮すべき。
→山王神社の遺構の解釈に反映させる。
○熱線の瞬時性と火災における長時間の被熱・変質に関して熱伝導解析ができないか。
→調査を検討する。
○山王神社について、今回の委員の任期である2年で範囲拡大の方向性を示せないか。
→今回の議題に反映させる。
○原位置をとどめているものと、復旧等の際に動かした場所を区分けする必要がある。
→現在実施中の調査でも石垣の図面を作成し検討する。
○古い礎石等も調査しておくこと。
→今後平面図等を作成し検討する。
○被爆前から存在していたと見られる樹木も調査すること。
→来年度以降に専門家の協力を得て調査を進めたい。
会長
鳥居が片方残ったからそれで原爆を表せるかというとそうではなくて、鳥居は健全な形であって、それがこのような状態になったんだと見せるためには、指定領域を広げるというふうに、今までここで皆さん方と議論してきました。
それが今の説明の山王神社の調査に入っているわけですけれども、この点につきまして御意見等ございましたらお願いします。
委員
山王神社の調査が進んでいるわけなんですけれども、非常に細かい部分まで目が届いているような感じがします。これは次の史跡の指定の拡大につなげていくことを考えてあるわけですね。
細かい調査を行われていますから、調査のやり方については別にこれ以上の方法はないと思います。
会長
では、今までの結果についてはよろしゅうございますか。それでは事務局、次の議題の説明をお願いします。
事務局
山王神社境内の文化財的価値付けの方向性について御説明します。
史跡指定後、平成28年度から補完調査を行う中で、山王神社境内では次のような課題が明らかとなり、文化財的な価値付けに向けて整理が必要となっています。
1点目、埋蔵文化財の調査により被爆時の地表面と考えられる層が確認されましたが、その上に被爆後の瓦礫等を整理した層も確認されました。茶色の5層が被爆当時の地表面と考えられます。その上に堆積している赤っぽい土、4層と、炭化物を多く含む黒い土、3層は、被爆後の瓦礫などの整理層と見られます。被爆後の人為的な改変を示すこの整理層をどのように評価するかが課題となっています。
課題の2点目、被爆時からあるものの被爆による痕跡を明確にとどめているとは言えない石垣等をどのように評価するか。
3点目、どこまでが史跡の範囲となりうるのか。
このように、被爆当時から残存していると見られる石垣等の構築物や遺構・遺物の存在を確認してきた中で、文化財的価値付けの方向性をどのように定めていくか、御意見をいただきたいと思います。
引き続き、山王神社の調査について御説明します。
大正期の参道を含む山王神社二の鳥居は史跡に指定されましたが、被爆当時の山王神社を構成していた一部であり、面的な広がりを追究するために調査を行っています。
平成25年度から長崎市が長崎原爆遺跡の調査を行っていて、現時点では写真資料や地上にある遺構・遺物、樹木が確認でき、ヒアリング調査等により被爆前の境内地の土地利用が判明しています。ここまでは平成27年度に『長崎原爆遺跡調査報告書(Ⅰ)』で報告したところです。
その後、平成28年度には、地下にどのような遺構・遺物が存在するのか明らかにし、昭和20年の原爆被爆との関係の有無を検討するために発掘調査を実施しました。被爆の痕跡を残す土層堆積やクスノキの根等の自然遺物を確認しましたが、被爆したと明瞭に分かる遺物は限定的な範囲でしか確認されなかったため、瓦礫がどのように処理されたのか、不明な点が残っています。この点をさらに詳細に解明するため、平成29年度も調査を実施しています。
今後、平成30年度からは境内に分布する未調査の石造物の配置図・拓本等の記録を作成したいと考えています。
今後ほかにどのような調査が必要かなど、御意見をいただければと思います。
委員
〔主な意見〕
被爆の痕跡を明確にとどめているとは言えない山王神社の石垣等は、被爆の影響がなかったのか風化して痕跡が見当たらないようになったのか調査できるとよい。
瓦礫を整理した痕跡を示す地層が存在するということは、生活空間に核爆弾が落とされたということを示す。瓦礫が後から持ち込まれたことそのものが被爆を物語るものであるという価値付けができる。
被爆前から存在してその後改変や移動をしていないものは、そこに残ってきたということに価値があるのではないか。
被爆の痕跡が現在は明確に見えていないとしても、将来見えてくる可能性があるものとして重要視すべきである。
廃棄という行動についても、原爆からの復興のために必要な人間行動である。破壊や廃棄の痕跡についても積極的に意義付けを行っていかなければならない。
長崎原爆遺跡は生活空間の中にある遺跡であるので、顕著なポイントを押さえて遺跡として扱っていくのがよいのではないか。
山王神社に関しては、石造物が本来どこにあったかを同定する調査が必要。
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